案内記12
「マイルズさんに飲み物は持ってもらってますから! それ飲んでください!」
私の言葉に、濃い顔イケメンが驚いた顔をしてリュックを下した。
私はリュックを開けると、ペットボトルを取り出した。
おおー! と4人が歓声を上げた。
「なんじゃこれは?!」
「この中には水が入っていますから、これを飲んでください」
一応、500のペットボトルの水を備蓄してたから、そこから持ってきた。
手出し、ゼロ。
「なぜ、川の水は飲んではいけないのです?」
不思議そうな濃い顔イケメンに、うむ、となる。
「えーっと……浄化されてないからです。そのまま飲むと……おなか壊したりだとか、するので」
多分それであってると思うけど。
「浄化なら、私の力で可能ですのに」
首を傾げる旧たおやかさんの言葉に、しばし止まる。
「……とりあえず、川から水を飲むと……目立つので止めた方がいいかと」
コスプレイヤー4人が川の水を飲んでいる画。
あー。シュール。とっても、シュール。
ネットにさらされること間違いなし!
「そうか? 水を飲むだけじゃぞ?」
暴走系美女ね。その恰好、その恰好が目立ってるから!
ほら、今も、チラチラ見られてるから!
ここ、まだ人通りがすくないからいいけど……、もっと進んだら、もっと人多くなるんだろうなぁ。
初めてのペットボトルのキャップ開けに四苦八苦する4人をほほえましく見ていたら、濃い顔イケメンがペットボトルを握りつぶしそうな勢いになって、慌ててペットボトルを受け取ると、ふたを開けてあげた。
……濃い顔イケメン、力ありすぎるよ。
私のやり方を見て、3人とも何とかふたを開けた。
そして、美味しそうにゴクリと水を飲む。
だけど、ほんのちょっとだけ飲むと、すぐに4人は飲むのをやめた。
「……喉、乾いてるんですよね?」
私の疑問に、4人は困った顔だ。
「この先、飲む水に困ることがあったら困るじゃろう?」
答えた暴走系美女の顔は真面目だ。
……そうか。異世界は、どこでも水が手に入るところじゃないんだ。
水なら、公園でも手に入るし、2Lでも、スーパーで買えば100円未満で手に入るから!
「大丈夫です、すぐに手に入るので、飲みたいだけ飲んでください!」
「……本当か?」
「データスさん、本当ですから!」
「……この世界は、水が豊富なのね?」
旧たおやかさんの言葉に、私はあいまいに頷く。
日本は、そうかな。他の国は……どうだろうなぁ。
私は自分のバッグからマイ水筒を取り出すと、麦茶でコクコクとのどを潤した。
他の4人も、満足するだけ水を飲んでいる。
日本って、恵まれてる国だよね。水道水そのまま飲めるしね。
私は水筒のふたを閉めてバッグに戻すと、4人がペットボトルのふたを閉めるのを待つ。
「では、行きますか」
「よろしく頼む」
あれ? 暴走系美女に初めて頼まれた気がするよ。
……水問題を簡単に解決したから、信頼されたのかな?
ちょっと、嬉しいかも。
「そういえば、魔王退治って、どれくらいの日数旅してたんですか?」
私の質問に、4人が顔を見合わせる。
……なぜに?
えーっと……魔王退治に行った、勇者一行(勇者抜き)だったよね?
え? もしかして、それがそもそも違ったの!?
「あれは、どう数えればいいんでしょうか」
濃い顔イケメンの言葉が、理解できないんですけどー。
「1日? それとも、30日?」
根暗美男子も首を傾げている。
「1日と30日じゃ、かなり差があると思うんですけど……。異世界って、時間まで魔法か精霊の力でどうにかできるんですか?」
「いや、それは流石にできぬが……我らが集まった初日、大賢者に魔王城に送り込まれたんじゃ。だから、行ったときは1日……になるんじゃろうな。それで、倒すのに1日、王城に戻るまでに29日かかったから、30日じゃろう?」
……集まった初日に、送り込まれた?!
流石にそれは、暴挙では!? だって、下手したらみんな、初めまして! だよね?
チームワークとかないも同然じゃない?!
「突然ね、目の前に魔王城が聳え立っていたのよ」
ふふふ、って旧たおやかさん、笑ってますけどね?
「それって、笑えなくないですか?! だって、初めて会いました、さあ魔王城へ行け! って言われたわけですよね? 扱いひどいですよ!」
私が声を上げると、4人が驚いた表情で私を見る。
……何で、その表情?
「私、変なこと言いましたか?」
ふふ、と暴走系美女が笑うと、他の3人も表情を緩める。
「初めて言われた」
根暗美男子がぼそりと呟く。
「初めて? いや、かなりひどいでしょ!」
「多分、誰も思ってないだろう」
濃い顔イケメン、どういうこと?
「まあ、それはいいのじゃ。もう終わったことだからな。それで、何でそんなことを知りたいのじゃ?」
「え、いや……ちょっとした素朴な疑問、というか」
特に聞いて何かあるわけじゃないんだけど……。なんで、聞いたんだろ。
「つまり、私とカーシー様の愛の軌跡について聞きたいんですのね?」
いや、旧たおやかさん! どこもつまってない!




