表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Cosmos=NOISE  作者: 下野 枯葉
6/6

四話 夏の祭りと迷子のJKと

 夏休みも少し過ぎ、八月に入ったある日の昼過ぎ。日差しの強さは相変わらずで、大春は宿題を一時間もしないで切り上げ、居間でアイスを食べていた。

 一方のピストルは、縁側で日差しを浴びながら悩み、考えていた。

 アルタイルと交戦したあの日、確かに大春は超能力を使っていたのだ。

 なぜ人間が星の力を?

 あの超能力は星の使者しか使えないはずなのに。

「調べてみる……しかないよね」

 ピストルはそう一言呟くと、背後の障子を開け床に寝転がる大春に、

「大春君。私の攻撃を一回受けてくれないかな?」

 と言った。

「……はい?」

 食べ終わったアイスの棒を口から落とし、大春は惚けた面を見せた。

「だから。私のフルパワーの斬撃を一回――」

「――死ぬわ!」

 転がり、身構え、叫ぶ。

 命の危機!

「じゃあ。大春君の能力を見せてよ!」

「んなこと言われてもなぁ。無潜在者だしなぁ」

 無潜在者と言葉を紡ぐ。

 反射的にLSに触れ、本来の機能を使えていないことをLSに謝罪したくなってくる。

「えー……それじゃあ一緒に調べよう!」

 最善策を見つけ、ピストルは手を差し伸べる。

「おう! と言いたいところだが、今日はカゲとセリに出かけようって言われててな。すまんが今日は無理だ」

 堂々とした宣言。その表情に一切の曇りも認めず、協力を断った。

 結局、斬撃を受ける羽目になりそうだし、芹奈達の誘いを断るわけにもいかない。

 その結論から、断ることにしたのだ。

「じゃあ私はどうやって調べればいいのさ!」

「えっと……後で?」

「大春君のバカ! 一緒に調べてくれるって言ったのに!」

 ポカポカと大春を殴る。

「ごめんって」

 笑いながら謝る。

「大春君のアホー!」

 ピストルはそう叫ぶと、縁側から空へと飛んで行った。

「ピストル! ……あーどうすっかなぁ。とりあえずセリ達の約束もあるし……」

 大春は出かける用意をして家を出た。不用心ではあるが玄関の鍵はピストルのために開けたままにしておいた。

 今日は毎年恒例、西宮の夏の祭り『西宮夏祭り』である。そのままだ。

 八月の第一土、日曜日に開催され、大通りを車両通行止めにして行う大きな祭りだ。

 大春は自宅を出て数分歩き、芹奈の家に向かった。

「セリー、カゲー。迎えに来たぞー」

 慣れた手つきで芹奈の家の玄関を開け、大春は二人を呼んだ。

「あら早いわね、今行くわー」

 奥の部屋から芹奈の声が聞こえ、大春はその場で待つ。

 玄関には下駄が二足ある。きっと浴衣で来るのだろう、楽しみだな……。などと大春が考えていると……。

「お待たせー」

「ごめんねハル君。待たせちゃったかな?」

 芹奈と君影が浴衣姿で現れた。

 芹奈の浴衣は、白地に薄い黄色や朱色の花の模様が描かれている。

 君影は、水縹の生地に白の矢絣柄の浴衣を着ている。

「お……おぉ」

 普段の制服とは違う姿を見て大春は驚いていた。

「なにー? その反応は、女の子が頑張って浴衣を着たのに『おぉ』だけ?」

 芹奈は悪戯に笑いながら

「いや……なんかいつもと印象変わるなーって」

「ハル君……どう? 似合ってるかな?」

 君影は恥ずかしそうに、芹奈の後ろからひょこっと顔を出してそう言った。

「うん、似合ってる……と思う」

「ほっ、ほんと? よかったぁ」

 表情は安堵に変わり、自信を取り戻した。

「カゲ。騙されないほうがいいわよ? ハルは何も分かってなんかいないんだから。『思う』なんて言ってる以上、適当に言ってるに違いないわ」

「え?」

「んな事言われてもなー。いい言葉を知らないんだよ。二人とも可愛いなって思うんだけど、美しいですね。なんて言うとなんか違うしさ」

「そういう時は素直に『可愛い』でいいのよ」

 呆れ混じりの笑いでそう答える芹奈。

「そうなのか? じゃあ……可愛いぞ、二人とも」

「ふふっ。ならよかったわ」

「うぅぅ……」

 照れていたのは大春と君影だった。芹奈はあしらうように平然としていた。

「よし。じゃあ行くか」

「そうね」

「うんっ!」

 三人は家を出て屋台が多くある西宮山神社前の広場へ向かう。

 焼きそばとから揚げ、お好み焼きをすぐに買った芹奈は大春と君影に向かって、

「あれ? 二人とも何も買わないの?」

 と言った。

「セリ……いつの間に」

「わぁ……セリちゃんそんなに食べるの?」

「せっかくのお祭りなんだから、沢山食べないとね!」

 と、言いながらイカ焼きを頬張る芹奈の手には次に食べるチョコバナナがスタンバイされていた。

「そ、そうだよね。じゃあ私も」

 若干引き気味に反応した君影は、ピョンピョンと跳ねながら周りの屋台を見始めた。

「カゲ、何を探してるんだ?」

「あのね。りんご飴が食べたいんだけど……あるかなー?」

 その言葉を聞いた大春は、君影を持ち上げた。

「ずっとジャンプは辛いだろ? ほら、カゲ見つかったか?」

「はわっ! ははは……ハル君っ?! ななな、なにをっ?!」

 探すはずが目を回し、それどころではなくなる。

「これでカゲでも見えるだろ?」

「そそそ、そうだけどっ! こっ、これは恥ずかしいよぉ」

「こらー! ハル! なにカゲを虐めてるのさ!」

 牛串を食べながら大春に詰め寄る。一体芹奈はいつまで食っているのだろう。

「えっ?! 虐めてなんかいないけど?」

「自覚なし……か。早くカゲを降ろしてあげなさい」

「お、おう」

 大春は芹奈の言うことを聞き君影を降ろした。

「はにゃぁ……なんだか疲れたかも」

 君影はふにゃふにゃとその場で膝を付いた。

「カゲ、大丈夫か? りんご飴探す前にちょっと休む?」

「ううん! りんご飴食べたいから頑張る!」

 りんご飴への愛は途切れることは無かった。

「それじゃあアクイラ通りでも行く? あそこなら歩きながら屋台見れるし」

「うんっ! いこっ!」


 ……数分後。

「ねぇセリ、カゲはどこに行ったの?」

 シャッター通りと化したアクイラ通も祭りとなれば話は変わる。

 人でごった返し、西宮市にはこんなにも人がいたのかと不思議でたまらない。

「んー、はぐれたわね」

 そう言い芹奈はスマホを取り出し、LSで電話を掛ける。

「まじかー。小さいからどこにいるかわからないな……」

 しばらくしても応答がないことを確認し、芹奈は大春に向かい一言。

「あ。まずいかもしれない」

「どうしたの?」

「もしかしたらカゲは、スマホを私の家に置いて来たかもしれない」

「マジ?」

 LSとの連携をするスマホを忘れた以上、どうしようもない。

「……マジ」

 見つめ合う二人。ドキドキが止まらない。


「あれ? これって……? ドキドキする」

「私も……ドキドキして」

 目と目が合う。

「「……恋?」」


 なんてことはなく、このドキドキは高校生になって迷子になった友人を思うが故である。

「カゲー! どこだー! 返事しろー!」

「バッ! そんなんで見つかるワケないでしょうが! 恥ずかしいから止めて!」

 大勢の人がいる中で、突然叫んだのならば止めるのは道理である。

「じゃあカゲが行きそうなところ……ってわかんないよ!」

「そんなに焦ってもしょうがないわ。……ゆっくり探しましょう」

 二人は歩き始める。迷子JKを捜しに……。


「ねぇ……ハル」

 キョロキョロと、辺りを見渡しながら並列して歩く。

「なんだ?」

 不意の問いかけに、一瞬だけ芹奈へ視線を動かす。

「その、ピストルちゃんとはどうなの?」

 久しぶりに芹奈の顔をしっかりと見た気がした大春は、芹奈も大人になったなと思った。

「どうなの? って何が?」

「えっと……一緒に暮らしててさ、どうなのかなって」

「どうなの……と聞かれてもなぁ。普通に飯食ったら俺のパソコン使ったり、図書館行ったりして調べものしてるから、特にこれと言った事は無いかな」

 アルタイルとの出来事は言わないことにした。

 そして原因の分からない自分の超能力も隠した。

「ふーん。ピストルちゃんパソコン使えるんだ」

「ちょっと教えたらすぐに使えるようになってさ」

「へぇー、ところで何か……進展はあったの?」

 チラッと大春の顔を伺い、胸に手を当てる。

「あー……いや、特に何も無くてさ。ちょっとピストルは焦ってるんだよ」

「ふーん……それで今日は来なかったんだ?」

 望んでいた答えとは方向性の違うものが返ってきて、気を落としつつも、話を続ける。

「まぁそんな所なんだけど……一つ相談いいか?」

「うん? いいわよ」

「あのさ、女の子って何があると喜ぶなかな?」

「なに? いきなりそんな事聞いて」

 若干引き気味に質問の意図を聞いた。

「えっと。ちょっと喧嘩したといいますか。何と言いますか……ね?」

「『ね?』なんて言われてもわからないわ」

「とりあえずですねぇ……仲直りがしたいんですよ? えぇ。」

「喧嘩ねぇ? 仲直りなんて簡単よ?」

「おぉ! じゃあ何かものすごい解決策が?!」

「えぇ、勿論よ」

「流石! セリ様! 流石です!」

「そんなこと言っても何も出ないわよ?」

「ですよねー」

「解決策なんて一つよ。ピストルちゃんは女の子なんだから、何か買ってあげればいいのよ」

「ほへ? ……それだけ?」

 解決方法が簡単過ぎて呆気にとられる。

「それだけよ? そうね、ピストルちゃんにはお洒落でもさせてあげたら?」

「そっか、そういや洋服いつもワンピースだったな。寝る時は俺のTシャツ着てるけど」

「じゃあそれで決定ね」

「あぁ。そうだな」

 その時放送が流れた。

『えー……本宮市から来た吉鹿君影ちゃんが迷子となっています。お連れの方は至急本部のある中央広場まで来てください』

 二人はその放送を聞いて見つめ合った。

「……セリ迎えに行こうか」

「そうね。迷子……ねぇ」

 芹奈は『迷子』と聞いて笑った。

 それにつられて大春も笑った。

((やっぱり高校生になって迷子かー……))

 二人はそんな悲しい事実を噛みしめながら、目的地を決めた。


「カゲー。迎えに来たぞー」

「ハル君! セリちゃん! やっと来た!」

 迎えに来た大春と芹奈を見て、君影は涙を拭きながら二人のもとに駆けた。

「ハル君! セリちゃん聞いてよ! おじさん達がね『お嬢ちゃん、どこの小学校だい?』って言うから『私、高校生だから大丈夫です!』って言ったのに、放送したんだよ! ひどいよっ!」

「まぁいいじゃんか。結局こうやって会えたわけだし」

「そうだけどぉ……」

「よし。じゃあ、りんご飴買いに行こうか」

「……うんっ!」

 そう言うと大春は君影の手を握った。

「ふえぇえ?! ハル君っ?!」

「はぐれないようにこうした方がいいだろ? また迷子になっても困るし」

「う……うん」

 それを見た芹奈は複雑な気持ちになった。

(いいな……手、繋ぎたいな。でも恥ずかしいし)

 そんなことを考える芹奈に大春は

「セリも手、繋ごうか?」

「えっ?!」

(手を繋げるの?)

 と思った芹奈は笑顔を隠しながら手を前に出した。

 そして手をつないだのは君影だった。

 大春、君影、芹奈、の順になった。

(そう……だよね。うん、分かってたよ。残念。でもこの順番で並ぶと親子みたい。私とハルが親で、カゲが子供で……なんてね)

 芹奈はそんなことを考えクスッと笑った。

「ん? セリ、どうしたの?」

「なんでもないわよ? さぁ、りんご飴探しましょ?」

「おう、そうだな」

「うんっ! 行こっ!」

 三人は手を繋ぎ歩き始めた、手を離さないよう、誰もはぐれないように。


 その時、星が祭りの灯りに負けずに輝いた。



翌日。

「まさか、私のお母さんのがピッタリとは……」

 君影は声を震わせそう呟いた。

「カゲのお母さんも背が低いんだね」

 大春も君影と同じように声を震わせていた。

 二人の視線の先には、浴衣姿のピストルが袖を揺らしながら立っていた。

「へ、へぇー。これスゴイね」

「ピストル、似合ってるぞ。どうだ? 気に入ったか?」

「ぜっ……全然嬉しくないもんっ!」

「そっか、ゴメン。ほら、約束守れなかったからさ、何かできないかなって。俺なりに頑張ってみたんだけど、ダメだったか」

「別に。怒ってないもん……」

 ピストルはそう言うとぷいっとそっぽを向いた

「ゴメンゴメン」

 大春はピストルの頭を撫でた。

「怒ってないもん」

 なでなで。

「うぅ……怒ってない……もん」

 なでなで。

「じゃあっ! 明日から一緒に……探してくれる?」

「あぁ」

 ピストルは大春に抱き付いた。

 その時、ピストルの星の力が大春に流れた……そして互いの記憶が脳に焼き付いた。

「えっ? なんで」

 ピストルは驚きで動けなくなっていた。


こんにちは、

下野枯葉です。


最近、リアルの仕事が鬼のように忙しいです。

マジで、分身使いたい。


さて、今回は迷子が題です。

中学生の時は毎年行っていた地元の夏祭りですが、高校生になってから行った覚えがありません。

ボッチだもの当たり前よなぁ?

でも、高校三年の時だけ、そう。一時間だけ行きました。

野暮用で。


その時、すごく美人に出会ったんです。

うん、見かけただけですけど。

印象に残っていて、忘れられなくて、少し書いてみました。




あ、用事を思い出しました。




では、

今回はこの辺で。





最後に、

金髪幼女は最強です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ