コシノギのスイカネットワーク
「コシノギのスイカネットワーク」
※コシノギの性別は男として書いていますが、女でも大丈夫です。女子に演じてもらう場合、それ用に口調は変えます。
※カシラ、ハマチ、クリガタ以外はほとんどずっとスマホを持っています。
※ある程度指示は出しますが、音響、照明は担当さんにお任せします。
0 世界、それは――
1 コシノギと妹、その1
2 スイカ戦争の始まり始まり
3 戦場決定の狼煙
4 コシノギと妹、その2
5 ミコゲタタオルの会話劇
6 コシノギと妹、その3
7 前夜、ミネウチとリョウコ
8 あなただけを追うよ
9 コシノギと妹、その4
10 世界、それは依存に満ちている
役者は17名(+先生)。
裏方は3名。音響、照明、ナレーション。
『主役』
コシノギ…何気ないことをネットで質問したら二大勢力の大戦争が勃発してしまう。本名は小笠凌。
『その他の役』
ハバキ…女。コシノギの妹。何だかんだコシノギと仲良し。
キッサキ…コシノギの友人1。元気。
キリステ…コシノギの友人2。サバサバ。
カシラ…オフ会会場の店員、司会。
ハマチ…オフ会会場の店員、飲み物係。
クリガタ…6ch管理人。抗争の激化により鎮圧に掛かる。
コシノギ母…電話で声のみ。先生用です。
先生…惑星ループを歌うことが大好き。
『ミネウチ高速迎撃隊』略してミコゲタ。
ミネウチ…男。リーダー。ネット信者。俺。
ツカダ…威厳がある。副リーダー。私。
エガラ…しっかり者。僕。
ツバヤ…関西住み。ウチ。
イアイ…途中参戦。子供。私。
【イメージカラーは緑】
『The Army Of RYOKO』略してタオル。
リョウコ…女。リーダー。頭おかしい。アタシ。
サヤ…お気楽。副リーダー。自分。
セッパ…発音がおかしい。アタシ。
ハドリ…狂人。私。
ナカゴ…途中参戦。洗脳されてる。私。
【イメージカラーは赤】
0 世界、それは――
最初は暗転している。BGMと共にナレーション。
ナレ「世界! それは争いに満ちている! そして争いとは2つの勢力の衝突、或いは離別、或いは戦争である! 我々は二分された二種類の人間を幾度も目にしてきた! どちらが勝つかは戦いが終わってみるまで分からない――しかし、結局は力で自分の主張を貫き通したいだけである! それの何と愚かな事か! 争いを消すことは、全くもって、不可能なのだから!!」
1 コシノギと妹、その1
急に照明が付き、BGMストップ。コシノギの部屋。
下手よりにコシノギが座ってスマホを操作している。
それを冷ややかな目で見ているコシノギの妹、ハバキ。
コシノギ「『スイカは野菜ですか?果物ですか?』……っと。はは、やっぱ6chは便利だな。だって何でも聞けるし! この前なんかさー、『ネイルとマニキュア、どっちで呼ぶ派ですか?』なんて6chで質問したらさ、俺男だからわかんねーって返事が山ほど来てさー、ほんと、ねぇ! 笑っちゃったよね! あはははは!」
妹「……それ、誰に向かって言ってんの?」
コシノギ「え、もちろんお前に」
妹「私に言ってどーすんの!? スイカが果物か野菜かとかマジでどーでもいいし、ネイルとマニキュアどっち派みたいなのを私に聞かせれば「私はこうかなーはぁと」的な返事が返ってくるとでも思った!?」
コシノギ「わかったわかったごめんって。今度から俺の可愛いハバキって言ってから話しかけるな!」
妹「マジでふざけんな」
妹の台詞を鼻で笑ってスマホを操作するコシノギ。
それを見て妹ため息。
妹「……お兄ちゃんさ、6chするのはいいけど、視力も大切にした方がいいと思うよ?」
コシノギ「そういうお前だってTwitterやりすぎだろ。お互い様さ」
妹「ネット掲示板と健全なるSNSは違うの」
コシノギ「Twitterが健全なるSNSなのかどうかは置いといて、ハバキも時期にわかる。6chはすげーよ? 何でも聞けるし、ネイルかマニキュアどっちで呼ぶ派かもわかる」
妹「それ結局聞けてなかったんじゃ」
コシノギ「とりあえず! とりあえずだ! 視力が悪くなったら眼鏡でもコンタクトでもしてやるから! ほら、出てった出てった!」
妹「あ、ちょ! 止めろ! 止めろって、言ってんで、しょーが……!!」
妹はコシノギに神の方へ押されて部屋から追い出される。ドアをコシノギが開け、妹を放り投げ、ドアを閉じる。コシノギは部屋の中で椅子を中央に移動させる。妹はため息をして上手へはける。
2 スイカ戦争の始まり始まり
コシノギは自分の部屋の中央でスマホを操作している。
照明は暗めにする。
コシノギ「お、早速返信! えー、ID3514、ユーザーネーム……ミネウチ」
転がる椅子に座ったミネウチが下手から滑ってくる。ミネウチはスマホをめっちゃ早くポチポチしながら台詞を言う。
ミネウチ「スイカが野菜か、果物かだって? 愚問だな。そんなもの野菜に決まってるだろ。大体お前、6chでスレ立てする前にちゃんとウィキペディアを見たのか? スイカは確かに甘い。だが分類上はきちんと野菜に分類される。そう、スイカは要するに甘いだけの野菜だ! はい解決ゥ!」
ミネウチは「解決ゥ!」で決定キーを叩く。そしてその姿勢を保ったままストップモーション。
コシノギとミネウチ、両者とも台詞を言う時はスマホを操作する仕草。
コシノギ「あーそうなのね。なるほど、ウィキペディアは見てなかったなー。siriには聞いたんだけどな」
ミネウチ「お前はバカか! 順番が違うってかそもそも方法としてバカだろお前! 何だこれ、このスレッドネタ枠なの? ねぇ?」
コシノギ「いやいやネタ枠じゃないけど……まぁ、軽い気持ちでスレ立てしたのは確かだね」
ミネウチ「あ……そっすか。うん、じゃあ今後はsiriさんじゃなくてウィキペディアさんを活用してくれ。じゃな」
コシノギ「おけおけー、ありがとな」
リョウコ「(食い気味で上手袖から)ちょっと待てぇぇぇぇぇ!!」
コシノギとミネウチ、何だ何だと言いながら画面を見つめる。
リョウコが回転する椅子に座ってぐるぐる回りながら上手から出てくる。手にはスマートフォン。コシノギは不思議そうな表情、ミネウチは煙たそうに反応する。
三人とも画面越しに会話しているイメージ。全員正面向きでスマホを操作している。
リョウコ「……ちょっと待て」
コシノギ「いや待ってるよ、何ですかあなた」
ミネウチ「何だ、俺の発言に問題でも?」
リョウコ「問題アリアリのアリアリ介よ! スイカが野菜!? 冗談じゃないわ! スイカはアタシの大好物なの! だからスイカは果物! わかった!?」
コシノギ「うわーなんかめんどくさい人キター」
ミネウチ「……は? テメー、舐めてんのか。ちゃんとウィキペディアさんを活用なさりました?? きっちりと野菜だって書いてるんですよ、インターネットに。ねぇ? ユーザーネームリョウコさん??」
リョウコ「アンタこそ舐めてるじゃない! あんなに甘い物をどうして野菜だと呼ばないといけないの!? ユーザーネームミネウチ! あなたは全世界の甘い物好きを敵に回したわ! ほんっとバカみたい!!」
ミネウチ「……ユーザーネームリョウコ。そろそろいい加減にしとけよ。いくらこのスレがネタ枠だからって、やっていい暴れ方とやっちゃダメな暴れ方がある。お前ただの荒らしだぞ、今んとこ」
コシノギ「あのすいませんネタ枠じゃあ」
リョウコ「荒らしじゃない! 私は正しい知識をみんなに教えてるだけなの!!」
ミネウチ「正しいのは知識を知らせてんのは俺だ!! お前じゃなくてな! 一個人の意見で無駄に騒いでんじゃねぇ!!」
コシノギ「あ、あの……ごめん、そろそろこのスレはお開きに……」
ミネウチとリョウコ「お開きにすんな!! 黙ってろ!!」
コシノギ「は、はいっっ!!」
ミネウチ「テンメェ……ふざけんじゃねぇぞ!! スイカは野菜だ!! インターネットを活用しろ!!」
リョウコ「違う! スイカは甘いから果物だって、何回言ったら分かってくれるの!? このネット信者!」
ミネウチ「何回言ったら分かるかだと? こっちの台詞だユーザーネームリョウコ!! このバカ野郎!!」
リョウコ「ユーザーネームミネウチ!! アタシ怒ったからね! 怒ったからね!!」
ミネウチ「あぁいいさ、いくらでもかかってこいよ! 俺だってここまで来れば容赦しねぇ! テメェのTwitterアカウントをサブ垢裏垢病み垢含めてこのスレに晒してやんよ!」
リョウコ「特定するつもり!? バカじゃないの!?」
ミネウチ「それが嫌だったら今すぐ俺とスレ主のユーザーネームコシノギに謝罪しろ! 今、すぐにだっ!!」
リョウコ「だーれがしますか! アタシこそアンタの住所特定してLINEでばら蒔いてやるんだから!!」
ミネウチ「んだとぉ!?」
二人はついに立ち上がり、おろおろするコシノギを挟むような立ち位置で睨み合う。
ミネウチとリョウコ「アァン!?!?」
コシノギ「ぎゃああああああ!!」
コシノギは叫ぶ。すると照明が落ち、もう一度照明が付くとミネウチとリョウコはいなくなっている。
コシノギは息を荒くして、置かれたスマホを見ている。
コシノギ「……ナーニコレェ…………」
暗転。
3 戦場決定の狼煙
明るくなると、下手側にミネウチ、上手側にリョウコが立ち、睨みあっている。
ミネウチ「――わかった! あーもうわかった! こんなインターネット上でグダグダグダグダ言い争っても何も解決しない! こうなったらもう面と向かって文句を言ってやる!!」
リョウコ「はぁ!? どういうこと!?」
ミネウチ「スイカが如何に野菜か! 正々堂々、文字でではなく口で語らせてもらう!!」
リョウコ「つまりそれって……オフ会!?」
ミネウチ「そーうだオフ会だ!!」
リョウコ「アタシ次の土曜も日曜も彼氏とのデートが入ってるんですけど! 無理なんですけど!!」
ミネウチ「どっちかぐらい空けろ! はいじゃー次の土曜!! オフ会開催決定――!!」
裏にいる人が両側から「イエエエエイ!」とか「おおおおお!」とか言う。
リョウコ「ちょ、ちょっと……! あーもういいわ! わかった、その場で決着を付けましょう、スイカが野菜か果物か!!」
ミネウチ「本当は議論するまでもなく野菜に決まりきってるんだがな、たまたま暇だった俺がお前のために時間を割いてやるって言ってんだ! 感謝くらいしやがれ」
リョウコ「だーれがしますか! いいわ、次の土曜、アンタがスイカを果物だと認めて咽び泣く姿を楽しみにしてる!」
ミネウチ「いいか! 次の土曜の午後一時、()のカラオケボックス『』に集合だ!」
リョウコ「……え、遠いんですけど。やっぱ彼氏とデートしてきて」
ミネウチ「お前は来い何が何でも! 何だ決着を付けるのが怖いのか!?」
リョウコ「は、はぁ!? 怖くないし! わかった、遠くても行くし! 行くし!」
ミネウチ「よし、その時間と場所に合い、尚且つ自分の思想と一致する仲間を出来る限り集めてこい!」
リョウコ「おっけーおっけー。ま、アンタはどうせ一人か二人集まれば良い程度でしょうね?」
ミネウチ「んだとぉ!?」
二人は目線で火花を散らす。
コシノギと妹、舞台に入ってミネウチとリョウコを眺める。
ミネウチとリョウコ「アァン!?!?」
ミネウチとリョウコははける。
4 コシノギと妹、その2
コシノギの部屋。部屋にはコシノギと妹。
コシノギ「ってわけなんだよ」
妹「つまり、お兄ちゃんが軽い気持ちでスイカが野菜か果物か聞いたら二大勢力の大戦争が勃発しちゃったってこと?」
コシノギ「そういうことだな」
妹「呆れた。ホントバカらしい……」
コシノギ「だからさ、俺の可愛いハバキ」
妹「(コシノギの首に手を回し、ポケットから取り出したカッターナイフをカチカチする)」
コシノギ「俺の妹」
妹「何よ(カッターしまう)」
コシノギ「だからな、俺は傍観者になることにした」
妹「何言ってるのか私わかんない」
コシノギ「この……あー、何だ、自分で起こした事件に名前を付けるのもアレだけど」
妹「事件……?」
コシノギ「そうだな、この事件はスイカ戦争と名付けよう。このスイカ戦争……なかなか面白そうじゃねぇか」
妹「え、どしたのお兄ちゃん? キャラ変えるの? キャラ変するの?」
コシノギ「こんなさー、途方もないさー、無駄でさー、どうしようもなさそうなー……。うん、スイカは野菜か? 果物か? こんな問題……正直俺はどうでもいいんだよ。それに、正確な答えなんて出てきっこないだろ?」
妹「そりゃそうかもしれないけど」
コシノギ「だから、俺は傍観者になる。この戦いが一体どういう形で終わるのか見届けたいのさ。もしここがテレビの中かドラマのワンシーンだとしたら、視聴率鰻登りだぜ?」
妹「あっ鰻食べたい」
コシノギ「お、じゃあハバキ、このスイカ戦争が終わるのを一緒に見届けてくれたら二人でスイカと鰻買ってきて食べよう!」
妹「合わない! 絶望的に合わない!」
コシノギ「別々に食べりゃいいだろ。で、俺の可愛い妹は」
妹「(カッターナイフカチカチ)」
コシノギ「ハバキはスイカにマヨネーズ派? それとも豚カツソース派?」
妹「スイカが野菜か果物かよりも途方もない質問だよそれ……」
暗転。
5 ミコゲタタオルの会話劇
軽やかなBGM。暗転したまま、6chのユーザーたち六人が舞台をバラバラに歩いている。全員スマホを持ち歩いていて、カラフルな画面を表示している。
自分の台詞になったら立ち止まり、台詞。台詞が終わったら止まったまま。
ツカダ「私はユーザーネームツカダ! ユーザーネームミネウチに賛同しよう!」
サヤ「自分はユーザーネームサヤ! ユーザーネームリョウコに賛成しまーす!」
エガラ「僕はユーザーネームエガラ! ユーザーネームミネウチに助太刀しましょう!」
セッパ「アタシはユーザーネームセッパ! ユーザーネームリョウコを支持するヨ!」
ツバヤ「ウチはユーザーネームツバヤ! ユーザーネームミネウチに加勢したる!」
ハドリ「私はユーザーネームハドリ! ユーザーネームリョウコ万歳万歳バンザーイ!」
ミネウチ派は下手側、リョウコ派は上手側に固まる。
明るくなる。
ミネウチ派「スイカは野菜である!!(上手を向く)」
リョウコ派「スイカは果物だ!!(下手を向く)」
サヤ「はいはーい、まずはミネウチ派とリョウコ派のチーム名考えませんかー?」
エガラ「はぁ? チーム名なんか考えて何になるんです?」
サヤ「えー? まぁ、でもなんか楽しそうじゃないですか!」
セッパ「アタシは良いと思うヨ。ミネウチ派リョウコ派って何だかお堅いしネー」
ハドリ「ならならぁ! ユーザーネームミネウチとリョウコ様がたまたま同時に夕食を食べられてる今の内に決めてしまいましょう!?」
ツバヤ「待ち待ちぃ、本人らがおらん間に勝手にそんなもん決めてもーてええんか? あと様付け止めーや」
ハドリ「え、だってユーザーネームリョウコって長くてとっても言いにくいじゃないのぉ!」
ツカダ「だったらそもそもユーザーネームを頭に付けるのを止めてしまえば良いだろう! 確かに呼びにくいからな! これからは両陣営共にリーダーはさん付け一択だ! いいね!」
ミネウチ派「ミネウチさん!!」
リョウコ派「リョウコさん!!」
ツカダ除く全員が各々納得する。
ツカダ「ではもうチーム名を決めてしまう! ミネウチ派リョウコ派、それぞれ副リーダーを選出しろ! 副リーダー主導で派閥の名称を決定するのだ!」
各陣営円陣を組んで話し合い。ミネウチ派はツカダ、リョウコ派はサヤに副リーダーが決定する。話し合い終了。
ミネウチ派はハイタッチしてチーム名決定を祝う。リョウコ派は拍手が起こる。
サヤ「そんじゃー、両チーム名発表ー! せーのっ!」
両チーム、チーム名が書かれたボードを掲げる。
ミネウチ派「『ミネウチ高速迎撃隊』!」
リョウコ派「『The Army Of RYOKO』!」
沈黙。
全員「だっっさ!!」
エガラ「……は? いやいや、何ですかジ、アーミーオブリョウコって! 直訳しますよ!? はい、Google翻訳にかけた結果出ました! 『涼子の軍隊』! ははははは! だっさ、だっさ!」
サヤ「はぁぁぁ!? ださくないですよー! 意訳したら『リョウコ軍』ですよぉーだ! Google翻訳が何ですか! 知ったこっちゃありません! そっちこそ何ですかミネウチ高速迎撃隊って! 高速って部分いります!? 普通にミネウチ隊だけでいいんじゃ」
ツバヤ「あーもううっさいうっさい、決まったもんはしゃーないやろ! ウチらも納得しとんねんから水差すなや! ここにおる三人だけやなくて、ミネウチ派全員のコメントから安価で決定したんやで!」
セッパ「安価って安直ネー」
ハドリ「私たちはちゃーんとリョウコ派総勢三十五名の提案の中から最も良い案を選んだのよぉー!」
エガラ「いやいや嘘つかないでくださいよ、そんないないでしょ、リョウコ派」
ハドリ「リョウコ派じゃなくて『The Army Of RYOKO』って呼びなさいっ!」
ツカダ「エガラ、各リーダー不在の今は、我々三人ずつが代表として話し合っているだけだ。だから本当にそれくらいはいるのかもしれんぞ」
エガラ「ホントにそうなんですか?」
サヤ「いえーい! 『The Army Of RYOKO』バンザーイ!」
ツバヤ「……うん、やっぱ長いわ」
セッパ「エー?」
ツバヤ「長いねん、チーム名。もっと呼びやすくできんのかそっち」
ツカダ「ふむ、なら良いものを思い付いたぞ! 『The Army Of RYOKO』を形成するそれぞれの単語の頭文字を取ってみろ!」
サヤ「え、えーと……」
リョウコ派はボードを見ながら確認する。
リョウコ派「T、A、O、R……」
タオル「た、タオル!?」
ミネウチ派「wwwwwwwww(爆笑)」
エガラ「よし、リョウコ派の略称はタオルに決定しましょう」
サヤ「な、納得いきません! こんなのあり得ませんよ!」
セッパ「サヤちゃん、落ち着きまショー。だったらこっちもミネウチ派に相応しい略称を付けてあげたらいいじゃナイ」
ハドリ「うふふ、ふふふふふ! いいのがあるわぁ! 『ミネウチ高速迎撃隊』の『高速迎』の部分を取ってみなさい!」
ミネウチ派、ボードを見ながら確認。
ミネウチ「ミネウチ……ゲキタイ!? ミネウチ撃退!?」
リョウコ派「wwwwwwwww(爆笑)」
ツカダ「ふざけるんじゃない! 『ミネウチ高速迎撃隊』は略して……(ボードを指しながら)ミ、コ、ゲ、タである!」
ミコゲタ「(そっちの方が良い的な反応)」
サヤ「ミコゲタってそのまんまじゃないですかー!」
ミコゲタ「ミネウチ撃退よりかは遥かにマシ!!」
セッパ「はいはいー、それじゃチーム名と略称も無事に決まったことだシー、オフ会で何するか決めてコーヨー。というか、ここにいる六人は勿論」
全員「参加します!」
セッパ「だよネー。じゃ、どすル?」
エガラ「はい(手を挙げる)、やはりカラオケが会場なので歌というのはどうでしょう」
ツバヤ「そのまんまやないか! そもそも何をするかちゃうくて、どうやってミコゲタとタオルの勝ち負けを付けるかっちゅうところに焦点当てーや!」
サヤ「タオルって呼ばないでください! ……うんと、それじゃあ早食い対決とかはどうですか!? ミネウチとリョウコさんの二人でルームサービスのメニューを食べ尽くすんです! 自分たちはそれを精一杯応援! とかは!?」
ハドリ「それってスイカと何の関係があるのよぉ!」
サヤ「いや、それはまぁ、ルームサービスでスイカアイスとか頼んで頂いて? とか?」
エガラ「やっつけ過ぎでしょ! 別の案を考えましょう!」
ツカダ「なら、各リーダーにスイカが如何に野菜か果物か語り尽くして頂くというのはどうだろう?」
ツバヤ「確かに妙案かも……あーやけど、それ、語りの歯止め効く?」
ツカダ「あっ」
ツバヤ「この案も却下!!」
セッパ「もー、どうすんのヨー!」
サヤ「あーもうわかりました! じゃあ勝負内容も安価で決定しましょう! はい、今から私たち以外にこのスレッドにいる民衆に呼び掛けます! じゃあコメント番号652番の人! その人の案にしましょう!」
ツカダ「む、急にコメントが伸び始めたな」
エガラ「そりゃあサヤの奴があんな事言うから……」
ハドリ「まぁいいわぁ! 楽しみね、どんな内容になるか!」
セッパ「お、キタ! コメント番号652番!」
全員スマホを確認する。しばらく沈黙。
全員「はぁぁぁぁ!?」
ミネウチが下手から、リョウコが上手から出てくる。
ミネウチ「すまん、遅れた……」
リョウコ「ごめん、遅れちゃって……」
ミネウチとリョウコ以外「……あ」
六人は不自然に笑ったり誤魔化したりしようと試みる。
ミネウチとリョウコはその反応を見てスマホを急いで確認する。
二人は顔を見合わせ、体を震わせる。
ミネウチ「『ミネウチ高速迎撃隊』!?」
リョウコ「『The Army Of RYOKO』!?」
ミネウチ「ミコゲタ!?」
リョウコ「タオル!?」
ミネウチとリョウコ「勝負内容は……はぁぁぁぁ!?(えぇぇぇぇ!?)」
ミネウチとリョウコ以外「申し訳ございませんでした!!」
暗転。
6 コシノギと妹、その3
明るくなり、コシノギの部屋。部屋にはコシノギ、妹。コシノギと妹は近くに座り、二人ともスマホを見ている。
妹「オフ会かぁ……とうとうここまで来ちゃったね。勝負内容的には……あー、映像で見たいけど、会場遠いしなぁ」
コシノギ「ミネウチとリョウコは土曜のオフ会で全てに片を付ける気だろうな。仲間も着々と集まってる。……今のところ両陣営共に、10人ずつくらいか?」
妹「字面だけでここまで濃いメンツだとミネウチさんとリョウコさん大変だよね……」
コシノギ「だろうな。ここはリーダーの力量が試されるところ……ん、何か俺たち、サッカーとかで良くある実況と解説みたいだな」
妹「え、お兄ちゃんの解説なんか聞きたくないんだけど」
コシノギ「お前が実況やるのは確定してんのかよ」
コシノギのスマホに着信。
コシノギ「……はい? どしたの母さん」
母「どしたのじゃない! シノギ、位置情報でわかったけどあんた今家にいるでしょ!」
コシノギ「いるけど何さ?」
母「部活はどうしたの! ていうか、今日学校に行ってないらしいじゃない、先生から電話があったのよ! 理由は?」
コシノギ「……スイカ戦争の傍観者になってた」
母「意味わかんないこと言ってないで、部活くらい行きなさい! 青春がもったいな」
コシノギは電話を切る。コシノギはスマホで時間を確認。
コシノギ「……16時半。そりゃ母さんが電話してくるわけだ。ごめんなハバキ、付き合わせちまって」
妹「鰻食べさせてくれるんでしょ?」
コシノギ「はは、そうだったそうだった……」
友1「こんちゃぁぁぁっす!! ちょっとお邪魔しまぁす!」
友2「やーやーシノギ、来てあげたよ。おっ、妹さんのハバキちゃんだ。どもー、お邪魔してまーす」
突然ドアが開き、友人二人が入ってくる。友1がキッサキ、友2がキリステ。コシノギと妹は死ぬほどビビる。
友人二人はおもむろに荷物を置き、座り、スマホを取り出して操作し始める。
コシノギ「……あの、キッサキ、キリステ。お前ら何しに俺の部屋まで来たの?」
友2「YouTube見に来た!」
友1「モンストしに来た!」
コシノギ「何でここでなんだよ!! お前ら自由かよ!」
友1「いやー冗談冗談、心配で見に来たのさ! 学校休んだろ? ついでにプリントとか持ってきてやったから! ほら!」
コシノギ「……あぁ、そういうこと」
妹「えっと、インターホン鳴らしました?」
友2「もちろん」
妹「ん、じゃあ私たちが気付かなかっただけみたい」
コシノギ「スマホに精一杯注目してたからな」
友1「なぁコッシー、学校休むって一体どうしたのさ! 先生も心配してたよ!」
コシノギ「コッシーって呼ぶな! シノギって呼べ!」
妹「ユーザーネームコシノギは?」
コシノギ「それはネットの名前!」
友1「あぁ、じゃユーザーネームコシノギ!」
コシノギ「おいハバキが変な事言うから波及しちまったじゃねぇか!」
妹「へーんだ知らないもーん」
コシノギ「勘弁してくれ……」
友2「あっ!」
友人2は突然立ち上がって、スマホをコシノギに見せる。
友2「見てよこのスレッド!『スイカは野菜ですか?果物ですか?』だって! 面白そうじゃない? ねぇ、シノギとハバキちゃんはどっちだと思う?」
妹はため息をついて、やれやれポーズ。
コシノギは頭をかいて「あー……」みたいな顔。
コシノギ「……わかった。お前らも、スイカ戦争の傍観者になれ」
友人二人「……え?」
暗転。
7 前夜、ミネウチとリョウコ
(この第7場面は尺的にカットした方がいいかと思います)
明るくなる。インターネット上でミネウチとリョウコが争っている。
リョウコ「とうとう、明日が土曜日ね!」
ミネウチ「あぁ、明日が土曜日だな」
リョウコ「あの日から始まったこの日月火水木金! 物凄く長かったわ! あなたをねじ伏せるのが楽しみで楽しみでね!」
ミネウチ「そうか、そりゃ奇遇だな。俺も、全く同じ事を思ってた。こういうところだけウマが合うんだよなぁ!」
リョウコ「アンタとウマが合うなんてゴメンだわ!」
ミネウチ「こっちの台詞だバカ野郎!」
リョウコ「……そう言えば、スレ主のユーザーネームコシノギを見ないわね」
ミネウチ「あぁ、俺らが騒がしすぎて逃げたんだろ? スレッドをほったらかしてな」
リョウコ「ユーザーネームコシノギとしては、オフ会に異議ナシって事で良いのね」
ミネウチ「そういう事だろ。まぁ俺はお前の意見に異議がありすぎて、それこそ困ってるくらいだがな!」
リョウコ「はぁ!? そんなこと言ったらアタシもアンタの存在そのものに異議ありまくりよ!!」
ミネウチ「存在までを否定されるとはな! はは、テメエ……ふざけんじゃねぇぞ!!」
リョウコ「馬鹿! カス! 間抜け!」
ミネウチ「ごらぁぁぁぁ!!」
暗転。
8 あなただけを追うよ
舞台は変わり、カラオケボックスの一室。真ん中にテーブルが置かれ、それを挟んで下手側にミコゲタ、上手側にタオル。ミコゲタが緑色の小物、タオルが全員赤色タオルを身に付けている。
両陣営睨み合っている。テーブルの奥(舞台真ん中の奥)にはカラオケ店員のカシラ。
カシラ「――全員お揃いですね! ワタクシはカラオケ店員のカシラと申します! さて、それでは只今より『第1回ミコゲタVSタオル!スイカは野菜か果物か!?』を開催させて頂きます! 皆様盛大な拍手を!」
両陣営睨み合いを続けている。拍手は起こらず。
カシラ「……拍手しやがれテメェらぁ!! ほらほらぁ!(手拍子の動作を大袈裟に)」
ミネウチ「……おいリョウコ!(カシラ崩れ落ちる)想像してた通り間抜けな面だな! 何だ、お前のチームの略称がタオルだからって、全員で示し合わせてタオル身に付けてくるこたぁねぇだろうよ!!」
リョウコ「うっさいわね! たまたまよたまたま! ねっ、セッパ!」
セッパ「……リョウコさんがこうしよッテ」
リョウコ「あああああ!! 言っちゃダメって言ったのに! こういうのは偶然性が必要なのよ!」
エガラ「いや指示してる時点で偶然性も何もないでしょ……」
ハドリ「まぁそれはいいわぁ! チームカラーも木曜日辺り? に決めたから分かりやすいったらないわね!」
ツカダ「緑と赤……スイカだな」
リョウコ「えぇ、スイカよ! アタシの案! いいでしょ?」
ミネウチ「はん、どうでもいい。それじゃあ早速……昨日決めた通り……ここにスマホを入れろ。俺とリョウコはもう入れてある」
全員スマホをミネウチが持ってきたボックスに入れる。
ミネウチ「念のためもう一度言うが、これは直接話し合いをするっていう事を表してる。画面越しに話したら、このオフ会の意味が消える」
リョウコ「ちゃんとロックはかけるのよみんな」
ミネウチ「常識的に全員かけてるだろ」
リョウコ「そんなのわかんないじゃない。一応よ一応」
全員スマホを入れ終わる。
ミネウチ「……さて、確認だ。ツカダ! エガラ! ツバヤ! スイカは野菜か! 果物か! どっちだ!!」
三人「野菜!!」
ミネウチ「おっし!!」
ミコゲタはハイタッチ。
リョウコ「アタシたちもやるわよ! サヤ! セッパ! ハドリ ! スイカは野菜!? それとも果物!?」
三人「果物!!」
リョウコ「そうよっ!!」
タオルは深く頷き合う。
ミネウチ「――俺はユーザーネームミネウチ! スイカを野菜だと確信する!」
リョウコ「――アタシはユーザーネームリョウコ! スイカを果物だと信じる!」
両陣営戦闘体制。緊張が頂点に高まるが、急にドアが開く音。
ハマチ「あっすみませーんお飲み物でーす。……あれ? 全員で、えっと、8人? あの、すみません、カシラさん」
カシラ「何でしょうハマチさん」
ハマチ「予約って何人でしたっけ」
カシラ「23人」
ツカダ「スト――ップ!」
ミネウチとリョウコ、バツの悪そうな顔。
ツカダ「……予定では23人だった。しかしまぁ、予定よりキャンセルが多く、我々だけになってしまった……」
ハマチ「あっ、そうなんですねー。あの、カシラさん? 何か元気ないですね。持ち場に戻りましょ」
カシラ「……ごめん、仕事があるの」
ハマチ「あっ、そうなんですねー。それじゃ」
ハマチははける。ミネウチは急に手を叩く。
ミネウチ「切り替えて行こう! 実はこんな時にために、さっき店の外で捕まえた俺たちの味方がいる! 入ってこい、イアイ!」
イアイ下手から登場。
イアイ「私、イアイなの! 音楽好きなの!」
ミネウチ「どうだ! 勝負内容が勝負内容だからな! もってこいの人選だろう!」
リョウコ「ふん、そう粋がっていられるのも今の内ね! なんと、なんとよ! アタシたちも追加人員を用意してたのよ!」
ツバヤ「な、なんやと!?」
リョウコ「入ってきて頂戴、ナカゴ!」
ナカゴ上手から登場、登場しながら台詞。
ナカゴ「スイカは果物スイカは果物スイカは果物……」
エガラ「いやどう考えても洗脳されてるよね!?」
リョウコ「ナカゴの調達と調教はハドリにお願いしたわ!」
ハドリ「私たちの可愛い奴隷に仕立てたのよぉ!」
ナカゴ「ハッ!? 私はなぜここに!? スイカは果物! 私は誰!? スイカは果物! スイカは果物!」
リョウコ「調教は上手くいっているみたいね」
セッパ「怖すぎワロター」
イアイ、ナカゴはそれぞれの陣営に属する。イアイは緑色の小物を持っている。ナカゴはサヤに首に赤いタオルをかけられる。それと同時に、二人はスマホをボックスに入れる。
ミネウチ「勝負は……きっちり練習してきたんだよなぁ!?」
イアイ「してきたかー!」
リョウコ「あったり前じゃない! 絶対にアタシたちが勝つわ!」
ナカゴ「よ、よくわかんないけど、勝ちますっ……!」
サヤ「よっし、それじゃ……いきますか! 勝ち負け判定員は! カラオケ店員のカシラさん!」
カシラ「いえーい(棒)」
ツカダ「よしエガラ、ツバヤ、デンモクスタンバイ!」
エガラとツバヤ「ラジャー!」
サヤ「セッパ、ハドリ! 音量とエコー調節!」
セッパとハドリ「ラジャー!」
全員用意万端。
ミネウチ「いくぞ! うおおおおおお!」
リョウコ「はあああああああ!」
突然、電気が消える。全員、それが原因でパニックになる。
電気がつくと、スマホを回収したボックスを持ったクリガタ。
クリガタ「はっはっはー! とうとう……とうとう押さえたぞー! これがスイカ事件首謀者たちのスマートフォンだぁぁぁ!!」
全員、極度のパニック。
ミネウチ「な、何だよお前! 俺たちのスマホをどうするつもりだよ!」
リョウコ「そうよそうよ!」
クリガタ「私は6ch管理人のクリガタ! 私は! 最近頭を悩ませていた何にかって!? もちろん『スイカは野菜ですか?果物ですか?』というスレッドにだぁ!!」
リョウコ「は、はぁ!?」
クリガタ「掲示板管理人の私は考えに考えた……! どうにかしてこの勢いが付きすぎて危険な状態にあるスレッドを畳めないかと……!」
ミネウチ「ま、まさか……!」
クリガタ「そーう! 手っ取り早くお前らを潰すには! スマホを没収してしまえば良い!!」
セッパ「没収って何となくしょぼイ!!」
クリガタ「じゃあ一つ一つこの部屋の壁に叩きつけて画面を割る!!」
ミネウチとリョウコ「止めろおおおおお!!!!」
ミコゲタとタオル、同じように極端に慌てて言う。
クリガタ「無理だなぁ無理だなぁ!! 決めた、お前らのスマホを割ってやる! そうすれば6ch掲示板の平和が保たれるぅ!!」
ハドリ「ああああああ! ツカダ! エガラ!」
エガラ「な、何なのこの状況で!」
ハドリ「ミュージック、スタートッ!」
ハドリがツカダエガラの元に走っていき、デンモクを押す。ポチっと音。
クリガタ「おいお前! 今何した!?」
ハドリ「ふふ、ふふふふふ! 私たちの団結力……舐めるんじゃないわっ!」
惑星ループが流れ始める。音楽の初めからミコゲタとタオルは踊り始める。塚本先生が現れマイクを握り、ノリノリで歌を口パクで歌う。
ミネウチ「うわっ、練習しまくってたから、体が勝手に!」
リョウコ「あーもう! こうなったらやってやるわ! いくわよ、ミネウチ! アタシたちのスマホを取り返すのよ!」
ミネウチ「お、おう!」
最初はミコゲタとタオルだけで踊っているが、タイミングを見てカシラとハマチもどさくさに紛れてダンスに参加する。
クリガタ「な、何だよお前ら! うわ、うわああああ!」
一番終わりの間奏で、ミネウチ、リョウコを除く8人でクリガタからスマホが入ったボックスを奪取。それぞれのスマホを手に取る。リョウコがクリガタの顔面にグーパン(SE付き)。ミネウチがクリガタを真ん中辺りまで引きずってくる。
ミネウチ「お前も踊れ!」
クリガタ「えっ!? えっ!?」
ミネウチ「踊れ!!」
クリガタ「は、はいっっ!!」
二番に入り、クリガタもダンスに参加。
二番のサビ前。両側からコシノギ、妹、友人二人が登場して、サビから一緒に踊り始める。
全員で踊り終わる。コシノギ、妹、友人二人は目立たないようにうずくまる。塚本先生は退場。
クリガタ「ひ、ひぇぇぇぇぇえぇぇ!!」
クリガタは部屋から逃走。
沈黙の後、全員で喜び、拍手。
リョウコ「あー、もうこれ(スマホ)さえあれば……勝負の惑星ループも踊っちゃったし、なんか勝ち負けとかどうでもよくなっちゃった!」
ミネウチ「……あぁ、俺も同じ事を考えてた。よくよく思えば、スイカが野菜か果物かなんて、どっちだっていいよな」
リョウコ「こういうところはウマが合って良かったでしょ?」
ミネウチ「……かもな」
ミネウチとリョウコは握手。それを喜びながらスマホで撮影しまくる周囲。
カシラ「というわけで! 『第1回ミコゲタVSタオル!スイカは野菜か果物か!?』は引き分け! 引き分けです! これにて終了! お疲れ様でした!」
全員「お疲れ様でした!」
ミコゲタ、タオル、店員二人は両側にはける。
コシノギ、妹、友人二人は立ち上がり、スマホを見る。
9 コシノギと妹、その4
コシノギ、スマホで惑星ループを流している。
コシノギ「……つまり、このコメントが正しければ、こういう感じでオフ会は終わったと」
妹「みたいだね。お兄ちゃん、何か講評は?」
コシノギ「ん、じゃあ言うぞ。……みんなスマホ大好きかよ!!」
妹「わかる!!」
友1「いやーだってしょうがないんじゃない? スマホって何でもできるんだよ? 例えばネイルって呼ぶ派かマニキュアって呼ぶ派かとか分かる」
妹「あなたってお兄ちゃんと同じ思考回路してんの?」
友2「何はともあれ、これでシノギが言うところのスイカ戦争は引き分けに終わったわけだね」
コシノギ「あぁ、終わった。まさかこんな終幕になるなんて思ってなかったけど。……中身の赤と外側の緑、結局ミキサーで磨り潰しちまえばスイカジュースが出来上がるのは必然だったってことだ」
妹「うわ、何かお兄ちゃんがカッコつけてる」
友2「結局みんなの意見は纏まってなかったけどね……まぁ、スイカの野菜果物論争は、人それぞれでいいと思うよ。インターネットを信じるも良し、自分の感性を尊重するも良しだ」
コシノギ「でもまぁ、惑星ループって良い歌だよな。一応ラブソングなのか?」
友1「多分ねー!」
妹「想いが軌道を描いている、あなただけを追うよ」
コシノギ「……恋と依存って、似てるよな」
妹「え、急に何? 何のこと?」
コシノギ「曲で歌われてる対象をスマホにしてみろ。心があなたで鳴っている、あなただけを追うよ……それ無しじゃ生きていけない、まるで電子機器に恋しちまった現代人みたいだ」
友2「えーと……? そうかな?」
コシノギ「んー、ま、そう思えるかどうかってのは、それこそ人それぞれってやつさ。恋なのか執着なのか、愛なのか依存なのか……それも同じ。……さて! スイカ戦争も終わったし! 母さんのスマホで鰻とスイカ買おうぜ!」
妹「いや、だから合う合わないみたいな相性ってものがあるでしょう!?」
コシノギ「そこに大体相性あるだけー、なんてな」
妹「しょーもな! 馬鹿みたい!」
友1「ははは! おもしれー!」
コシノギ「お、何ならお前らも食べるか!?」
四人でわちゃわちゃしながら上手にはける。
10 世界、それは依存に満ちている
BGM「惑星ループ(歌なし)」。
ミネウチとリョウコ以外の登場人物全員が歩きスマホをして、はけていた側の袖から反対側の舞台に、適当に歩き回ってから移動する。
ナレ「世界! それは愛に満ちている! そして愛とは2つの勢力を結ぶ絆、或いは信頼、或いは恋である! 我々は二分された二種類の人間を、たった今目にした! 愛に、勝ち負けなどない! ただ相手を想う! それだけ! ――愛は世界を救う! それの何と素晴らしき事か!」
両側からミネウチとリョウコが歩きスマホをしながら歩いてくる。中央ですれ違い、お互いに振り返る。二人はスマホを見続けている。
ナレ「愛が生まれることは、何よりも喜ばしいことなのだから!!」
二人はスマホから目を離し、お互いを見る。
二人は明るい笑顔で、照れ臭そうに、ふざけて、
ミネウチとリョウコ「アァン?」
暗転。惑星ループ流れたまま。
もう一度明かりが付くと全員集合、ありがとうございました!
END