第4話 風のごとく走破せよ!!
その4です。
国名であり王都の名であるオウエドから港町マヅまでは、徒歩では最速でも三日は必要である。
しかし、ソウハの背中に乗っていれば、ものの数時間に短縮できる。
全行程はおおよそ百二十キロメートル。
もちろん、道中にはそれなりに険しい山道が長々と続いていたりするのだが、ソウハにすれば大した問題ではない。
石畳で舗装された街道から少し脇に外れ、時速五十キロほどで巡行する。
対向車なんて走ってないし、信号も交差点もオービスもネズミ取りもないので、乗ってる分には素晴らしく快適だ。居眠りしたとしても問題ないのが何より嬉しい。
予定どおり太陽が真上に昇る前にマヅへ到着したタカウジは、そのままこの街の冒険者ギルドへ向かい、荷物を降ろす。
普通の配達ならば、ここで終了だ。
冒険者や行商人などが荷物などを預かった場合は、このように街の冒険者ギルドへ納めて終了である。受取人は、気が向いたときにギルドへ訪れ、自分宛てのモノがないかを尋ねるという寸法である。
説明するまでもなく、こんなやり方が非効率的なのは誰の目にも明らかだ。
けれど、冒険者や行商人は本来の目的のついでに荷物を預かっただけなので、わざわざ一軒一軒配達するなんて手間をかける道理も暇もない。
とはいえ、冒険者ギルドとしても悩みのタネである。
他に預けられる施設が無いからと押し付けられた仕事である上に、受取人が来なければ荷物が溜まる一方。しかし、捨てたら捨てたでトラブルの元となってしまう。
そこでタカウジが提示したのは「有料配達サービス」である。
要するに、料金を少々上乗せすることで受取人のもとへ配達する、という話だ。
無論、最初は「金を払ってまで配達して欲しいなんて奴がいるかよ」などと冷淡な意見が圧倒的だった。
サービス開始から半年ほどが経過した現在、利用者は増加傾向にある。タカウジとしてはニヤニヤが止まらない。
「こういう隙間に入り込む商売ってのは、最初に始めた人間が勝ち易いからなぁ。……まあ、ソウハがいなかったら思い付いてもやらなかっただろうけど」
そういうことである。
GPS付ドローンのごとく高性能なソウハの存在があればこそ、個別宅配サービスなんて面倒な仕事が成り立つのだ。
今日も三件の配達があったのだが、街の端から端まで巡ったところで二時間も要さない。
「最後は……ああ、あの孤児院か」
孤児院といえば、現実でもファンタジーでも窮乏しているイメージが強いのだけど、ここマヅの東地区外れにある孤児院は、比較的余裕がある(でなければ宅配サービスに加入できるはずがない)。
というのも、マヅは大きな港町だけに仕事口が多い。加えて、成人し巣立っていった出身者からの寄付もそこそこの様子である。
贅沢ができるほどではないが、子供たちが自然に笑って過ごせる環境が整えられている、という理想的な施設――というのがタカウジの印象である。
「こんにちはー。荷物の配達です」
ちょうど花壇の世話をしていた職員に声をかける。
すると、わらわらと子供たちが集まってきた。
(最初のうちはソウハを怖がっていたんだがなぁ)
明らかに異質な外見のソウハだが、今ではすっかり懐かれてしまっている。一般的な犬や猫のような「機嫌の波」がないのも大きいかもしれない。
「おお、タカさん。待っていたんですよ」
この孤児院の院長である老年の男性――冒険者としてなかなかの財産を築いたと噂されている――が、わざわざ歩み寄ってきた。
「待ってたって、大きな荷物か何かの依頼ですか?」
「依頼は依頼だが……ちょっと中に入ってもらえないかな」
なんとなくイヤな予感が胸に去来したが、にべもなく断るのも気が引ける。
タカウジは子供たちの相手になっているソウハとアイコンタクトをしてから院長の後に続いた。
本日はもう一話分更新します。