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第15話 それぞれの一歩

第15話です。

 ううむ、と変な呻き声が部屋にこだまする。


 時刻は昼――の少し前。

 依頼受注に殺到する冒険者たちの波が引き、ちょっとした小休止的な雰囲気になったギルド職員たち。いつもならば休憩室ではなく、それぞれの持ち場でまったりとお茶を飲んだりしているのだが、今日はちょっと勝手が違った。


 事の発端は、ある若手の女性職員が上司に「すみません」と相談に行ったことだ。


 それが今や、狭い休憩室からはみ出た十人ほどが微妙な表情で唸る事態になっている。

 彼らを悩ませる議題とは「郵便配達人のスローニンが、ある新人冒険者にそれとなく気を配ってくれ、と頼まれた」件である。

 本来――もしくは建前上は、ギルド職員が特定の冒険者を贔屓にするのは許されない。考えるまでもなく当たり前の話だ。

 加えて、頼んできたのがギルドの委託業者とあっては、優先順位はどうしても下がってしまう。


 だが、頼んできたのがスローニン、しかもギルド以外の場所でも貢献度が高い人物となれば話は違ってくる。


 もし彼――タカウジの機嫌を損ねて仕事をボイコットする事態になれば、一般市民どころか貴族連中からも突き上げを食らいかねない。

 彼の早くて確実な配送は、今やオウエドという国家の生活に深く根付きつつあるのだ。

 だからといって、先にも書いたとおり特定の人物を特別扱いするのは問題が多い。余計な軋轢を生むのは必至だし、本人の性格が歪む可能性を孕む。


「タカウジさんは、軽い感じで頼んで来たんですけど……」

「彼は自分の立場を軽んじ過ぎてるよ。オウエドの各都市を一日で往復できる能力の持ち主なんて、国に囲い込まれても不思議じゃないのに」

「で、その頼まれた新人は、どんな感じなんだ?」

「ルシェという冒険者で、マヅの街でラウレンツ達がパーティに誘ったそうです」

「なるほど、ラウレンツが見出したのか。それは有望株かも知れんな」

「しかし、いま彼らは辺境の討伐依頼に出発してて、しばらく戻ってこれませんよ」

「参ったなぁ……」


 冒険者が単独で受注できる仕事なんて限られている。

 薬草などの採集や近隣の魔物の駆除などはまだマシな方で、街の清掃活動に代表される「人が進んでやりたがらない仕事」が圧倒的に多い。これには粗暴なイメージが強い冒険者への風当たりを弱める意味もある。

 けれど、実力者として認められているラウレンツ達がスカウトし、更に各位から重宝されつつあるタカウジに世話を頼まれたとあっては、ぶっちゃけ扱いに困ってしまう。

 ……休憩室から漂う重い空気は、なかなか晴れることはなかった。







 時は過ぎて三日後。

 タカウジは冒険者ギルドの受付嬢に深々と頭を下げていた。


「申し訳ないです。ちょっと気にしてくれたらいいなー、くらいのつもりだったんですが……」

「いえいえ、気にしないでください。有望な新人に気を配るのも私たちの仕事ですので」


 先の休憩室での一幕では明確な結論が出せず、ギルド職員たちは微妙にピリピリとした緊張感の中で仕事をしていたのだが、昨日になって顔を出したリシェ本人がその空気を打ち砕いてくれた。

 受付に来た彼女は、自ら「町内清掃とかの仕事はないですか?」と尋ねてきたのである。


「今日も朝から清掃に行ってくれてます。素直ないい子ですね~。逆に心配になってくるので、職員全体で悪い誘惑から彼女を守ろうって纏まってますよ」


 望ましい話なんだが……ちょっとやり過ぎだろ、とタカウジは苦笑せざるを得ない。

 とはいえ、ルシェがきちんと冒険者として働き始めたのは良い傾向だろう。

 冒険者らしくない仕事を積極的に受けるのは院長の薫陶なのかもしれない。


 あとは都会の誘惑に絡め取られないかだが――これは彼女を誘ったパーティーの面々が早く戻ってくれるのを祈るのみだ。

 いくらギルドの職員たちや下宿先の夫婦が目を光らせていても、冒険者という職業である以上は同じ冒険者でなければ防げない場合が多い。


(こればっかりは、彼女の意志の強さを信じる他ないな。つか、これ以上は俺が介入する話じゃないだろ)


 なんとなく因縁めいたものを感じてちょっと世話を焼いたものの、これ以上は過干渉と見られるのではなかろうか、とタカウジは自分を納得させる。

 ソウハに鼻先で突かれ、彼はようやくリシェ関連のアレコレを胸中に沈めた。




「それじゃ、今日の配達分をお願いします」

「はい。今日もたくさん溜まってますよ」


お話し的にキリが良いので、

ここで一旦終了とさせていただきます。




一応、この後の展開も考えてはあるのですが、

気分転換のために書いていた部分が大きいので、

続けるかどうかは現時点では決めていません。




短い間でしたが、それでは。

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