表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

おしつけられた幸せ

作者: 氷室六花

私はトンネルで手記を拾った……。

遠い昔、私はある妖精と約束をした。

妖精はもう霧になってしまったけれど、私は今も忘れないでいる。

彼女は私に縋ったのかもしれない。

霧になる間際で、希望を放せなかったに違いない。

霧の精は皆そうなる運命なのだった。

彼女も、最後の霧の精も違わず。


さらに遠い昔の事、霧の精は掟を破った。

境を超えて、井戸水を取ってはならない。

さもなくば、飲んだ水は毒となり、体を走るだろう。

霧の妖精は毒に冒され、目を失った。

この世の色を全て失ってしまったのだ。

毒は子にも受け継がれ、さらに孫にもまとわりつき。

やがて最後の一人にも。

彼女は言った。

「世界が闇でとざされているのは不幸だわ。けれど光ある世界なんて、きっと恐ろしい物にちがいないでしょうね」

彼女は知らなかった。

世界に光があることを。闇が全てでないことを。


光を持てば幸福と皆は言う。

霧の精は光が不幸と言う。


霧になって消えてしまえたら幸せだ、病ある私は陶酔した。

霧になるなど苦に堪えない、彼女は吐き捨てた。


私はもしかすると、病のない人が病のない恐怖におびえているに違いないと、半ば妖精に問いかけた。

「そうね。病のない人が病を欲するのと同時に」

霧の精は水晶の瞳で笑った。

「霧になる前に、あなたに一つ言いましょう」

「他人の不幸を羨まないこと」

「霧の精は世界から消えます。それが幸せか、不仕合せか」

「私は不幸せだと思います。なぜなら、闇の素晴らしさを知ることはできないから。私は幸せだとも思います。なぜなら、もう消えなくて済むから」


私は何と言っただろう。

不幸だと思った。霧のように消えることのできない私には。

幸福だと思った。光でしか生きられない私には。


この病は不幸だろうか。それとも羨ましい不幸だろうか。

この病は幸福だろうか。それともいらない幸福だろうか。


押し付けられた幸せを、未だ嫌いでいる。


他人の不幸を、羨んでいる。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 雰囲気物であることはすぐさま分かりました。 [気になる点] 暖急をつけず、終始表現を綺麗に飾り過ぎているようで、読みにくさとくどさを感じました。 設定が今ひとつ意味あるものに見えません。…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ