ゲームを間違えた転生者
誰だって自分の破滅フラグが見えてたら。
それを回避するため頑張るでしょう?
私が自分に破滅フラグが立っていることに気付いたのは5歳の頃だった。
きっかけは流行病だったか、階段から激しく落ちた時だったかは忘れたが、とにかく寝込んでいた時に気付いたのだ。
あ、私悪役令嬢転生してるわ…って。
何のゲームだとか、お話だったとかは一切思い出せなかったけど。
大人になっていた自分が暗い部屋に閉じ込められて、足は鎖で繋がれて泣いているなんて
悪役令嬢が断罪された以外の何ものでもないでしょう?
だからきっと私は乙女ゲームの悪役令嬢に転生したんだってそう思ったの。
テンプレ通りにいくと私、攻略対象者に嫌われまくって、きっと断罪コースまっしぐら。
せっかく転生したのにそんな人生なんて嫌すぎる。
でも、大丈夫。
それは自分の欲望のまま育っていく時の話。
幸い、まだ私のワガママ令嬢ぶりは年齢のおかげで可愛い範囲に収まっていると思う。
おそらく3歳年上の攻略対象になるであろう、兄にも嫌われてはいないようだ。
よし、それなら愛され令嬢になってやろうって。
まずは、目の前にいる兄に可愛がってもらえるように頑張ろうって思ったんだ。
そう決意してから、10年。
本日は魔法学園の入学式。
テンプレの学園ものだとゲームスタートする日。
私も今日からそこに通うと思っていた。
でも、今私がいるのは、自室の部屋で。
テーブルの上に用意されている可愛らしい色どりのマカロンをせっせと私の口に運んでくれている兄の膝の上に乗っている。
「…お兄様。」
「ん?何かな?僕の小鳥。次はピンク色が良いのかな?」
「いえ、もうお腹いっぱいです。」
「んー、そうか、僕の小鳥は相変わらず少食なんだね。じゃ、いつものとおりお昼寝しようね。」
そう言って、侍女にテーブルの上を片付けるよう視線1つで指示をしながら、私を大事そうに抱えて、寝室へと運ぶ。
そうっと私をベッドに横たえて、自分も当然のように寄り添ってきた。
ゆっくりと優しく、まるで壊れやすい宝物を扱っているように頬を撫で、瞼にキスを落としながら眠るようにと促される。
私が目を閉じるのを確認してから、私の足にカシャリと足枷を嵌めた。
「おやすみ僕の小鳥。僕が学園から帰るまで、良い子で待っているんだよ。…前みたいに逃げようとしたら、わかっているね。」
…私は何を間違えたのだろうか…。
※※※
「小鳥は鳥かごの中」
このゲームは隙あらば監禁しようとするイケメン達から逃げながら
常識ある人を探し出してハッピーエンドを迎えるという乙女ゲームとしてはかなり異色だった。
イケメンをみたらヤンデレだと思えが合言葉。
スタートは兄。
少しでも甘えたら監禁コース。
兄に対しては無関心か我がままにふるまうが正解。