表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/93

箸休め 我々の生活を支える植物たち③ 日本一酷使されてきた植物

 番外編です。

 今回は、エジソンがフィラメントに使ったアレを紹介しています。

 植物に興味のある方は、ぜひ『亡霊葬稿シュネヴィ』のほうもご覧下さい。

 あちらの番外編では、薔薇や薬になる植物、毒草について蘊蓄うんちくを垂れています。

 二回に渡って、植物の偉大さを語ってきた今回の箸休め。前回は人間の胃袋を守って来た植物を紹介しましたが、今回は日本人の生活を豊かにしてきたそれをげていきたいと思います。


 建材に使われるひのきに松ヤニを産出する松と、日本人の生活に寄り添ってきた植物は枚挙にいとまがありません。とは言え、竹ほど衣食住に渡って日本人を助けてきた植物は存在しないでしょう。

 成長が早い上に丈夫な竹は、遥か昔から様々な製品に使われてきました。日本最古の物語である竹取物語たけとりものがたりにも、竹取たけとりおきなが登場します。名を讃岐造麿さぬきのみやつこと言うおきなは、野山から取ってきた竹を色々なことに使っていたと言います。


 今でも夏場になれば、竹製のすだれやラグがインテリア売場に並びます。涼感りょうかん溢れるつややかさや青々とした香りは、蒸し暑い夏を迎え撃つにあたって心強い味方です。

 金属製の製品が登場するまで、物干し竿と言えば竹でした。また竹炭ちくたんには空気を綺麗にする働きがあり、衣服の消臭剤に利用されています。水道水のカルキ臭さを取る働きもあり、浄水器にも採用されているそうです。

 一説には竹酢液ちくさくえきにも同様の効果があり、愛用する方も多いと言います。竹酢液ちくさくえきは独特の香りを持つ液体で、竹炭ちくたんを作る時に発生する煙を冷やすことで作られます。消臭効果の他にも、水虫や肌荒れに効果があると噂されています。


 食の面に目を向けても、竹の貢献は計り知れません。

 古くから竹で作られたかごや竹竿は、魚を捕るのに利用されてきました。まだIH調理器も都市ガスもなかった時代、煮炊きするかまどには竹筒を使って酸素を送っていました。真っ二つに割れば、流しそうめんのコースにもなります。

 竹には抗菌こうきん作用さようがあり、水筒や弁当箱としても有用です。前回紹介した笹やかしわのように、竹の皮もまたおにぎりや和菓子を包むのに使われています。


 食材として見ても、竹はなかなか優秀です。

 竹の若芽わかめであるたけのこは、炊き込みご飯や煮物、天ぷらに中華料理と幅広く使われています。またたけのこを発酵させて作るメンマは、ラーメンに欠かすことの出来ないトッピングです。


 文化的視点に目を向けても、竹の存在感は大きいものがあります。

 扇子せんす団扇うちわと言った日本的な品々には、竹製の骨が使われています。玩具にも竹馬や竹トンボと、古くから親しまれてきたものが存在します。竹ひごを使って工作にいそししんだ経験は、誰にでもあることでしょう。


 竹はおめでたい植物として、門松の材料にもなっています。また神社の手水舎ちょうずや――参拝する前に手を洗う場所には、多くの場合、竹製の柄杓ひしゃくが置かれています。食べ物や式のグレードを指す松竹梅しょうちくばいの一つとして、口に出すことも多い言葉です。

 抹茶をすくうのに使う茶杓ちゃしゃくに、お茶を掻き回す時に使う茶筅ちゃせんと、茶道にも竹を使った道具が登場します。素朴な花瓶として、竹筒を茶室に飾ることもあるそうです。


 風雅ふうがな音を発する竹は、楽器の素材としても使用されてきました。尺八しゃくはち雅楽ががくに使われるしょうは、竹を材料にした笛です。楽器ではありませんが、かこーんと小気味よい音を鳴らす「ししおどし」にも竹が用いられています。


 エジソンが白熱電球の改良に使ったのも、京都でれた竹です。竹炭ちくたんで作られたフィラメントは、白熱電球の寿命を飛躍的に伸ばしたと言います。フィラメントとは電気を通すと発光する部分で、竹で作られる以前のそれには短時間で燃え尽きてしまうと言う問題点がありました。ちなみにエジソンが竹の産地として選んだ八幡市やわたしには、立派な記念碑が建てられています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ