99回の転生
後書きの方に世界観や設定を書いておきます。
転生、それは魂と体が一旦この世から消え、新たなる体に魂が入り込み、記憶を受け継ぐこと。
この世界で転生を行う方法はたった一つ、最高難易度であるダンジョンの最下層、そこに住む伝説の竜を倒し、その先の石版に触れた者のみに与えられる。
「ふぅ〜、これでようやく99回目も終了かぁ。」
そこには頭に鉢巻を巻き、防火加工されたローブを着て、腰にはレイピアを携えた一人の男がいた。
彼の名前はアーダ=ドナート。
28歳という若さでここまでたどり着き、一人で伝説の竜を倒した男の名前。
そして、98回の転生を既に行い、今99回目を終え100回目の転生を迎えるところだった。
「次は100回目だけどなんかペナルティとかつくのかな?正直ついてるくらいの方が楽しめるんだけどね」
この男、アーダ=ドナートは既に99回伝説の竜を倒す以前に他のダンジョンの数々を攻略し、いくつもの強敵と呼ばれたモンスターを倒し、人々から英雄とすら呼ばれていた。
しかし、それは彼にとってはとても簡単に感じてしまうことだった。
転生をする前、つまりは伝説の竜を一度も倒したことのない時の彼にとってはとても難しかった。一人ではなく数十人で挑み、何人も犠牲となりながらも戦い抜き、やっと倒せたのだった。
しかしそれが何十回と繰り返すことによって完全にパターンを読み、確実に攻撃を与え、そしていつかは一人でも倒せるようになってしまった。
「う〜ん、そうだなぁ次はゆっくりと冒険しようかな。25歳までに転生するってのは昔やってあれ以上早くはできないし...やめやめ!考えるのはなし!何にも考えずに行こう!」
アーダ=ドナートの手が石版に触れ 、彼の体が石版から放たれる光に包み込まれてゆく。
「......あ、そうだ!せっか--」
しかし彼の言葉は誰にも届かずに消え、また同時に彼の体もこの世から去ってしまった。