麒麟
柔軟剤の匂いが染み込むセーラー服
恋に効くと噂の飴玉
伝説の赤い糸
朝日が綺麗に昇り、
余裕のある時間で今日も始まる。
寝衣を脱いで、制服に着替える。
歯磨きをして、朝御飯を食べる。
もう一度歯磨きをして、
髪を結う。
お弁当と水筒を鞄に詰めて、いってきます。
いってらっしゃい、と母の声。
おう、という父の声。
当たり前なこの会話。
親友の奈々との待ち合わせ場所。
奈々が走って来るのを笑いながらみて、
おはよう、というのが好きだ。
それよりも、何よりも。
俊、山城 俊。を眺めるのが好きだ。
容姿端麗で文武両道。背が高くて凛としている。
世間体では彼を「麒麟」と呼ぶ。
でも彼を好きになる女はそうそう居ない。
彼から漏れている威圧感、完璧さが漂うから。
私位だな、と一人笑いをすると、
奈々が心配そうに私の顔を覗くので、
大丈夫だよ、と微笑む。
彼を好きになるには百年早い。
本当に。
可愛い訳でも、賢い訳でも、運動神経が良い訳でもない女と。
容姿端麗、文武両道、凛としている事から
「麒麟」と呼ばれる男が。
結ばれる訳ない
それで好い。
遠くで眺めて微笑めるより、幸せは手繰り寄せるモノだけど、
眺めて微笑めるより幸せなことは無い。
話した事も無い男を
好きになってしまったもんだな…