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年賀小説「ヒツジ」

作者: 瀬川潮

※クラウドゲート(株)さまの展開するWTRPG「舵天照」(http://www.wtrpg8.com/)のNPCを主人公に据えた短い二次創作小説です。

「あ、あれ?」

 コクリ・コクル(iz0150)ちゃんは胸苦しさを覚えて、自分の体を改めて見てびっくりします。

「な……。ボクの胸、こんなにおっきくなってる!」

 襟の大きな空賊服の胸がかなりおっきくなっているではありませんか。よろしくないことに、いつも着ている服はぺったんこな胸に合わせてあるのでぎゅうぎゅうになっています。ちらりのぞく胸元には谷間がくっきり。

「どうして……」

 収まりの悪さにもじもじしていると、羊の群れが通り過ぎました。

 その向こうに、一人の人物がいます。羊のようなもこもこふわふわのコートで全身を包み、頭ももこもこふわふわの白い帽子をすっぽりかぶっています。おかげで顔がよく見えません。

「それは君が望んだから。ここは君の夢の中だよ。どうだい、望みがかなった感想は」

 その人物は得意そうに言うのです。

「ボク、こんなの望んでないよ! 元に戻してよ!」

「あまり困ることはないよ。どうせ、夢。覚めてしまえば一緒。それまでひとときの夢を楽しむといい。ほら……」

「くっ」

 羊装束の人物が指差すと、コクリちゃんの胸はさらにおっきくなりました。服を圧迫するくらいに丸々となり、ぎゅうぎゅうで痛いほどです。

 そればかりではありません。

 服がはちきれそうになっています。もちろん、布胸当てなどつけていません。これ以上放っておくと恥ずかしい姿をさらしてしまいます。

「夢から覚めたいなら私を倒すことだね……おっと」

 苦しそうなコクリちゃんは敵が言い終わる前に駆けつけて切り伏せました。が、声が後ろから。

「生きがいいね。でも、私は羊。ここにいる羊を全部倒すまでは消えないよ」

「くっ……二匹目、三匹目……」

 コクリちゃん、剣を振るって次々に羊の敵を屠ります。ですが、斬った後には羊のコートが残るだけ。敵は別の場所にいる羊と入れ替わっているのです。本当に、最後の一匹になるまで倒さないとならないようですね。

「羊が十匹、羊が十一匹……」

 それでも頑張ります。斬った羊を数えながら。胸がいつもと違う感覚でバランスを崩したりもしながら。

「羊が百一匹、羊が百二匹……」

「ふふふ。どうしてこんなに、と思っているね? 人は寝る時に羊を連れてくるくせに、起きるときは連れて帰ってくれないからねぇ。私はいつだって大忙しだよ」

 敵の言葉にはっとしました。

 確かに寝付けずに羊を数えた、と。その数は忘れたけど、たくさんだった、と。

「その……ごめんなさい」

 コクリちゃん、謝りながら腰溜めに剣を構えて羊コートの敵に突っ込みました。

――ばさり、ふわっ……。

 渾身の突きに、敵の着込んでいた羊のコートが纏いつきます。

 敵本体は横にかわしていました。入れ替わらないのは、謝った時にほかの羊がすべて消えていたから。

 が、攻撃を繰り出した後の無防備な状態です。かわして横に回った敵は、身を伸ばしたコクリちゃんを好きに料理できます。

――ぎゅっ。

「ありがとう」

 なんと、敵はコクリちゃんを抱きしめました。羊コートを脱いだ、おっきな布胸当てだけの姿で。優しく、感謝の瞳で――。


 そして。

「う、ううん……」

 無事に目覚めたコクリちゃん。

 目覚めは爽やかかというと……。

「ああん、もうちょっと胸ー。胸がおっきくなって旦那様をむぎゅーって抱きしめて……」

 うわごとのように「胸がおっきくなればいい」と繰り返しながらコクリちゃんをむぎゅーっと自分の胸に抱いて雪切・真世(iz0135)さんが寝ていました。

「あの悪夢は真世さんのせい……か」

 コクリちゃん、自分の胸がもとに戻っているのを見て、ほっとしながらつぶやきます。

「でも、数えた羊を後からまとめるの、確かに大変そうだな」

 真世さんの腕と胸から脱出して、そんなことも思うのでした。



   おしまい

 ふらっと、瀬川です。


 クラウドゲート(株)さまの運営する「キャラコミュ」に掲載したばかりの作品です。

 今年は頑張って何年かぶりに年賀小説を書きました。

 ちっちゃくて胸がぺたんこなボクっ娘、コクリちゃんは相変わらず受難な感じです。

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