4-2.学園―それぞれの昼―姉妹編
香澄達が教室で昼休みを過ごしている間、有栖と華凜は食堂にいた。
「ぐぬぬ、よりにもよって弁当まで忘れてくるとはなんたる不覚……っ」
「まったくです……おかげで兄さんの教室にも行けません」
さすがに弁当もなしに教室へ訪ねたら、『ちゃんとご飯は食べなきゃダメ!』と香澄に追い出されてしまう。そしてなにより香澄の後ろで女狐が勝ち誇った笑みを浮かべてるに違いないのだ。そんな思いをして食堂に来るなら、最初から来た方がまだ精神的に楽だ。
「さて、いつまで悔やんでいても仕方ない。放課後はどうする?」
「決まっています。携帯を入手次第、二人を捜索、見つけ次第乱入して、即兄さんをつれて帰ります」
「二人をどう見つける?」
「こういう時の為、兄さんのブレザーには発信機を付けています」
香澄にプライバシーは無かった。
「なんだお前もか、ワタシはベルトに仕掛けている」
香澄にプライバシーは無かった。
「兎も角、発信機があっても電波を受け取るものが無くては意味が無い。授業が終わり次第裏門に集合だ。携帯が無いと連絡が取りあえないからな、動くなよ」
「ええ、解りました。まったく、文明の利器に頼りすぎなのも考え物ですね」
「そう言うな。そのおかげで香澄を追える」
そのおかげで香澄のプライバシーは無くなっている。
「Hi!good afternoon ARISU and KARIN」
食堂から戻る途中、有栖達は外国人教師から気軽な感じで挨拶してきた。
「ぐ、ぐっどあふたぬーん」
「ごきげんよう、先生」
HAHAHA!と外国人教師は去っていく。
「姉さん、まだ英語の発音苦手なんですか?」
「う、うるさいな!ここは日本だ。日本語が使えれば良いだろうっ」
「グローバル代表みたいな髪して何言ってんですか」
金髪美女の有栖さんは英語が苦手です。
「そう言うお前は大和撫子代表みたいな見目の癖に、まだ古文の成績が悪いじゃないか」
「もう二十一世紀ですよ?現代に生きればイイじゃないですか!」
大和撫子華凜さんは古文が苦手です。
血の繋がりは無くとも、似たり寄ったりな姉妹だった。
「もし、ワタシ達が合流した時に桃色な雰囲気だったらどうする?」
「あの女を殺して私は生きます」
「それはお前も死ぬところじゃ……?」
「死んだら兄さんに会えませんから。それより兄さんに発信機がバレたらどうします?」
「朱莉さんのせいにしよう」
似たり寄ったりな姉妹だった。
この時は、放課後あんな事になるとは、香澄も、有栖も、華凜も瑠々も、誰も思っていなかった。




