彼女の答え
「どうして、そこまで……?」
「エステル?」
「私はそんな、殿下に思っていただけるような存在ではありません……っ。私はただ、傷付くのが怖くて、怯えて、閉じこもるしかできない……強くなんてない、気高くなんて、ないのですっ……!」
向けられるものに返せるだけの何かがあれば――――。彼の思いに心を押され、この手を握り返す事ができるのに。けれど……。
「そんな私が、殿下の妃だなんて……務まりません。こんな弱い私では、ふさわしくない……」
「――――エステル」
首を振り、俯きながら自分を卑下する彼女を、名を呼んで止める。思いがけず低い声が出た。彼女自身でさえも、そんな風に言うのは許せる事ではないようだと、すでに芽生えている独占欲に心の中で苦笑する。
ただ彼女が愛おしいのだ。その気持ちに偽りはなく、止められるものではない。彼自身にも、彼女でさえも。――――だから、言っておかなくては。
「相応しくない等と、私以外の誰にそれを決める権利があるのです?」
他人の入る余地など、これっぽっちもない。たとえ何か障害があるとして、――――あまり使いたくはないが――――王命が出ている以上、誰にも邪魔はさせない自信がある。
「私が欲しいのは――――エステル、あなたの真の気持ちです」
だから、答えてください。
そう言いながらリーランドは、フィンセン伯爵邸を訪れた時の様に彼女の傍らに膝をつく。
「エステル、どうか私の妻になってくれませんか」
「……はい!」
次で最後ですが、あまり期待はしないでください……