王子の求婚
“リーランド王子が、昨夜行われた王宮主催の舞踏会で、とある令嬢に恋をしたらしい――――”
そんな噂が、一夜にしてグランローズ国中を駆け巡った。
噂には、こんな続きがある。
“その令嬢は、王宮の時計が12時の鐘を鳴らし始めた途端、慌てたように駆け出し、会場を飛び出していった。そのあまりの慌てように、履いていた靴の片方を階段に残して――――”
残された靴を拾ったリーランド王子は、残念そうに……だが愛しげに握りしめ、父王に告げた。――――この靴の持ち主に求婚します、と。
今まで浮いた噂一つなく、会わせた令嬢達の誰にも興味を見せなかった王子を心配していた国王は、その申し出に大変喜んだ。すぐさま側近に命じて触れを出させ、王子とまだ顔も知らぬ令嬢との婚礼の準備をさせるほどだった。
そして翌日――――。リーランド王子は片方の靴を手に、ある屋敷を訪れた。
そこは、フィンセン伯爵の屋敷。
伯爵邸の居間に通されたリーランド王子は、優雅な仕草で片膝をつき、誰もが聞き惚れてしまうような甘い声音で求婚した。靴の落とし主、ダイアン=フィンセン――――の姉に。
タイトルに「シンデレラ」と入れつつ、シンデレラ要素はそんなにないです。ほぼないと思います。シンデレラ的なもの(……どんなもの?笑)を求めて読まれた方には、期待外れな作品かもしれませんので、ご注意を。