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37:永遠と遊ぶ少女

※グロ回注意報。

 眠る歌姫

 「歌いましょう、歌いましょう。私の愛した人のために。」


 *


 輝く長い金髪。海のように深い青の目。綺麗なその色。貴方の姿。

 まるで墓地。崩れかけたその古城。時が止まったような錯覚を覚える不思議で、物悲しい景色。その中に貴方は息を殺して住んでいた。どうしてこんな所に住んでいるのですかと私は尋ねた。あの人は、悲しそうに笑ってから……


 「待って居るんです」


 そう呟いた。懐かしそうに、愛しそうに……遠い空を見上げながら。

 何度も何度も通い詰め、私はその人の話し相手になった。寂しさを紛らわすくらいの友達にはなれたんだと思う。やがてあの人は私に心を許してくれたのか、自分の身の上話さえ聞かせてくれるようになった。

 その人が言うに、もうその人の王子様は死んでしまった。この人が殺したんじゃない。この人とこの人が愛した人は、海の掟に背かなかった。


 「私はとても臆病で、あの人に嫌われるのが怖かった」


 二人の結婚式の中、海神は呪いを発動させた。結婚式を行うことで水妖である彼女は、人の魂を得たけれど、呪いによって身体が男の物に変化した。海神の娘は異変に気が付き、深く悲しむことになる。浮気をされれば自分が彼を殺さなければならなくなる。それでもこんな呪われた私を見て、あの人は受け入れてくれるだろうか?

 真実を打ち明けて、嫌われるのが怖い。それでも愛を交わすことを拒み続ければ、彼は自分が嫌われていたのだと思ってしまう。そうなればいつか他の人を愛するようになる。そうして私をあの位海の底に突き落とすような、言葉の針で刺すんだわ。

 海に帰れば手に入れた魂もなくしてしまい、また水妖として長い時間と一度限りの生の果て、消滅を末だけの日々。それはとても寂しく悲しいことだと貴方は言った。


 「でも、その方が再び人として生を受けて貴方と再会したとしても……その人はその人ではないのでしょう?」


 貴方の王子様は、再び貴方を愛してくれるでしょうか。私がそう問いかける。


 「はい、信じます」

 「どうしてですか?」

 「それは……」


 少しの間をおいて、貴方はくすくすと可愛らしく笑い始める。


 「あの人はね、ずっと待っていてくれた。私が自分の口で呪いのことを言い出すまで、ずっと待っていてくれた」

 「え、ええと……それはどういう事ですか?」

 「彼は……私に無理矢理乱暴することもなく、浮気をすることもなく、罵ることなく……求められない私が不安になるくらい気が遠くなるほど、唯私をずっと待っていてくれた」


 結婚してもそれまでと変わらぬ距離で優しさだけを与えてくれた。貴方の王子様は、貴方と歩く速さが違う。それでも貴方に合わせてずっと寄り添い歩いてくれた。そうして自分が老いて死ぬまで、決して貴方を裏切らなかったのだ。


 「だから今度は私が待つ番。私は永遠に彼をここで待ち続けます。今度の彼が私のことを思い出せないのなら、その次の彼。またその次でもその次でも。この城を私を思い出した、あの人が現れるまで、私は……」


 それを聞いて私は思った。誰であっても貴方とその人の間に割り込むことは出来ないのだと。そう思っても、それでもやはり、理不尽だとは思う。


 「そんな日が……来るんですか?その人は、今日だって貴方をこんなに寂しい所に置いているのに!」

 「寂しくなんかないですよ。私は……あの人の思い出を、聞いてくれる貴女を。大切なお友達がいますもの」

 「……ウンディーネ」


 呪われた彼女はいまや彼。彼女の王子様もやっぱり彼。女である私が彼となった呪われた人魚に恋することは何も間違ったことではない。それでも、やっぱり私では敵わない。

 だからせめて、この人が幸せであればいいと願った。人間として生まれ、薄汚い心を持ってしまった私でも、いつかはこの人のように綺麗な魂を持てるようになりたいと。


 *


 海神の歌姫

 「アムニシアったら嬉しそうな顔しちゃって。生お兄様とやらに会えたのがそんなに嬉しかったのかしら?

 でも分かるなそれ。シャロンちゃんも夢とはいえシエロ触り放題!はぁ……幸せ!

  相変わらず私のシエロは可愛いんだから、もうっ!」


 *


 第七魔力。それは歴史と物語の悪魔、イストリアが持つ力のこと。それはアムニシアの裏返しの力に似ているが、それより遙かに万能だと言う。一冊の本を眺めながら、歌姫シャロンは呟いた。


 「へぇ……懐かしいなぁ、『優しい人魚の伝承(フォークロア)』か。私も読んだことはあるな、何かの絵本か童話だったかで」


 こんな所でこの本に出会すとは思わなかった。アムニシアが私の所へ持ち帰ったその本のことは私もよく知っている。そうだ。私はあの本が好きだった。

 海神の娘の相手役の王子様。彼はもう死んでいたけど、永遠を約束してくれた。海色の瞳に金髪の人魚姫と、空色髪の王子様。二人の外見描写は、大元となる『海神の娘』での設定に準じている。

 そもそもその『海神の娘』には、二つの物語がある。海神の娘が死んだパターンの話と、王子が死んでしまったパターンの話とが。その『海神の娘』の元となった話には私達がオペラでやった『波の娘』という話があるわ。そのどれもがヒロインの名前がウンディーネ。そのため『波の娘』はタイトルがごっちゃになって『海神の娘』と表記されることも多々あるの。そういうわけで、その辺がかなりややこしい。


 「つまりはあれね。まずは『波の娘』の悲劇があった。それを知っていたエーコと私の前世は、悲劇を回避しようとした。そうした結果、私だったウンディーネは王子様を殺すのではなく、私の命でお父様の手から愛しい人を守り抜いた。でも、それならカロンお兄ちゃんはどこからやって来たんだろう?そうは思わない?」


 でもさっき言ったように『海神の娘』には二通りの結末がある。その二つの関係は、歴史と物語。

 私とエコーの悲恋が歴史。その歴史を知って、私達を哀れんだ誰かが作った物語。それがもう一冊の『海神の娘』。だけど時の流れは二つの境界を曖昧にしてしまう。どちらが嘘か真か、正確なところ誰にも解らないのだ。


 「あのねアムニシア。私が思うにお兄ちゃんは、もう一冊の本の方の私なのよ」

 「どういうことですかシャロン?」


 ソファーに腰掛けた私を覗き込むようにアムニシアが此方を見る。それに私はにっと笑って答えを返す。


 「私を哀れんだ誰かが作った物語。『優しい人魚のフォークロア』。あれが今回の第七魔力の発生源。長い時間を語り継がれて愛された物語に膨大な第七魔力が宿ったんだ。その力が生み出した魂があるの」


 人の魂は輪廻を巡り何度も何度も使い古される。それでもそれが最初から人である必然性はない。魂を得た人魚が来世で人として生まれ変わるように、そう言った事例は幾らでもある。彼の場合は唯、存在しない存在。それが空想だっただけで。


 「シエロはね、私の王子様でお兄ちゃんの王子様。それは間違いないわ」

 「まぁ、貴女がそんなことを言うなんて驚きましたわ」

 「勿論渡さないけどね!ってここはそうじゃなくてね!私が言いたいのは……私が思うにシエロはこの物語が、人の思いが生み出した魂。それが魂を得て人になった存在なんじゃないかしら?だって私がこの本読んで想像していた王子様のイメージそっくりそのまんま!最初は本当吃驚したの。私の理想の王子様が、本の中から抜け出してきたんじゃないかと思ったくらいよ」


 そう、だから信じていたの。シエロは、シエロだけは……死ぬまで私を裏切らないって。二人で今度こそ、永遠に変わらない愛を誓えるって信じていたんだ。その先には私とシエロの永遠の幸せがあるはずだった。

 私はシエロが永遠を私に捧げてくれたなら、何でもあげた。してあげた。貴方を傷付けるようなことはもうしない。貴方が私を信じさせてくれたなら、何回でもキスしてあげた。もっともっと貴方を愛して、貴方に愛されてあげたわ。


 「シャロン……」

 「私はね、現実に人として生まれた以上、この本の私ほど永遠に待っては居られない。私だけ辛くて苦しいのは嫌。私は欲しい。前の私が幸せになれなかった分まで、幸せになりたい。嘘のあの人。物語が脚色した理想のあの人。あの人の色を継いで、あの人じゃない……私を永遠に愛してくれるシエロと一緒に」


 本の中の王子様。もう死んでしまったその人は、お爺ちゃんになってよぼよぼになって死ぬまで私を愛してくれた。私とエーコの歴史とは違う。この本のエーコは私を裏切らなかった。私を裏切ったエーコとは違う。嘘の私の王子様。この本から生まれた私のシエロ。


 「あ、勿論私は前世と今を混同してないわよ。私は私、ウンディーネはウンディーネ。前世の記憶なんてこれと同じ。本を読んでいるようなものよ。共感もするし反発もするし反論もある。私が好きなのはやっぱりエーコじゃないし、シエロだもん」

 「それでもシャロン、貴女は運命を信じるのですね」

 「いや、それはやっぱり私も女の子だもんね。その辺はないよりあった方がよりいいじゃない」


 私の答えにアムニシアはくすくすと可愛らしく笑ってくれる。彼女も恋する乙女なのだから、こういうところは解るのだろう。


 「あのねアムニシア。私、やっぱりお兄ちゃんだけには負けられないの」


 シエロはエーコが生んだまぼろし。綺麗なところだけ掬い上げられ、物語の力で美化された王子様。それなら私とお兄ちゃんは何?私はウンディーネ。現実を生きて死んだ海神の娘。お兄ちゃんは……それならお兄ちゃんは私が生んだまぼろしなのだ。


 「お兄ちゃんは、やっぱりこの本が作った。伝承が生んだ第七魔力が転生する私の魂を二つに分断した。そうして私とお兄ちゃんという人間が生まれたんだわ。歴史と物語……本当のことを知っている私と、この本のようになりたいと……理想と夢だけを抱いたお兄ちゃんに」


 言うなれば歌姫シャロンが闇で、歌姫カロンが光。それでもシャロンが現実で、カロンは空想。お兄ちゃん現実の辛さや痛みを知らない。裏切られたことがないから。この本の中のヒロインのように、愛することと信じることだけを植え付けられた人形よ。お兄ちゃんは現実を生きていない。

 それなのにシエロは私を否定するの?それって狡い。私の綺麗なところだけを集めた、美化された私は愛するのに、現実で歪んでしまった私を拒んで捨てるの?


 *


 罪の悪魔

 「こ、怖い本なんか読むんじゃなかった。僕の方が怖くて眠れなくなるなんて……

  カタストロ様まだこっちに来てくれないし、エペンヴァさんに添い寝頼んだら確実に貞操の危機だし。

  エフィアル様はどこか行っちゃったし、カロンさん寝ちゃったし。アルバさんとか頼んだら一緒に居てくれるかなぁ。でもカロンさんの護衛が……」


 *


 さざ波の音がする。どうやら眠ってしまったのかとカロンは思う。それでも違和感が拭えない。


(なんだここ?)


 この前見た本の中と様子が違う。この間の景色と全然違う。見上げれば崖の上には古びた城があり、ここはその城が望める海辺。貴婦人もあの二人の姿も見えない。代わりにいるのは、角の生えた人間?ああ、あの黒髪はそうか。知っている悪魔が砂浜に倒れている。例の妹やらにこてんぱんにやられたのだろうか?


 「エフィアル、お前こんな所にいたのか?」

 「……」


 大丈夫かと駆け寄ったところで、それが人違いだったことをカロンは知った。


 「あれ……あんた、……誰?」


 新顔だ。見たことがない悪魔。長い黒髪と二本の角という出で立ちはエフィアルに似ているが、髪質や角の形はまるで異なる。赤い瞳も同じだけれど、この男のそれは酷く眠そう。


(何なんだ、この悪魔……)


 砂浜にだらだらと転がる内に波に攫われ、浅瀬を行ったり来たりとそいつは流されていた。抗おうという意思がまるでない。それどころかされるがままに目を閉じて、再び眠りに就こうとさえしている。その自堕落っぷりには心当たりがあった。


 「まさか、エングリマが言ってた悪魔って言うのが……」


 エングリマ。第四領主の名を口にした途端、その青年はむくっと起き上がり此方を睨み付けた。それまで眠たそうだった目が怒りに縁取られ、黒かったはずの彼の神は血のように赤く鮮やかな色を映し出す。


 「な、何だよ!」


 しかしすぐにその色は消え、また静かな黒へと戻る。顔の造形は悪くないのに、表情が緩んでいるためか、そこまで格好良いとは思えない。そもそも魔王としての威厳とか迫力と言ったものが皆無だ。これならまだ初登場時のエフィアルの方が迫力があったし怖かった。

 そんな気の抜けた悪魔はころんとその場に倒れ込み、彼はだらだらと口を動かすのも面倒だと言わんばかりに嫌々ながら言葉を発する。


 「面倒だ」

 「は?」

 「私に代わってあの男を殴っておいてくれ……ぐぅ」

 「寝るなって!殴ればいいのはあのエペンヴァだってのはなんとなく解るけど、何しに来たんだあんたは!」


 駄目だ起きない。くそ。何か目が覚めそうな歌でも歌ってやるか。明るい爽やかなメロディーでひたすら起きろとっとと起きろと歌ってやれば、仕方なさそうに安眠妨害をされた魔王がのろらのろらと立ち上がる。


 「あんたが噂の第二領主、カタストロだかカタストロフだかカタストロフィだかなんだかだな。エフィアルより強いって言う……」


 一から三番目の領主は夢の領地を持っていると聞いた。カロンが察するに……本の中まで現れるのが面倒だったらしいこの悪魔は、夢を渡ってここまでやって来たようだ。


 「夢を、一つ見せに来た。あの子らをここから出す手助けにはなるだろう」

 「へぇ、良い奴だなあんた。悪魔の癖に。心配してるんだあいつらのこと」

 「別に。それだけでもない。あの子らが城の掃除に来てくれなければ、安眠もままならないのだ」

 「あ、そう……」


 そんな照れ隠しがあるか?この悪魔、ぼーっとしているというか淡々としているというか、感情の色があまり見て取れない。今の言葉の半分は、言葉通りのように聞こえる。


 「でも俺に見せたい夢って何だ?」

 「少年。君はウンディーネの記憶を取り戻せないのではなかったか?」

 「ああ、そうだけど」


 その辺はシャロンに引き継がれてしまったのだろうな。そう思っていたのだが、第二領主は曖昧に、それでも否定の色を瞳に映す。


 「君と君の周囲の人々は確かに前世の記憶を持っている。しかし君がそれを思い出せないのは理由がある」

 「どういうことだ?」

 「人は二前世前の記憶まで易々と思い出せるものではない」

 「……は?」

 「ウンディーネの魂が分かれたのは今生でではない。君の片割れと恋敵と運命の人。彼らのサイクルより早く、一度欠けて落ちたウンディーネの魂が、人の世に生まれたことがある」

 「えええ!?何だよそれ!?」


 突然もたらされた情報に、俺は驚きを隠せない。だってそうだろ。そんなの寝耳に水だ。

 ウンディーネは俺の前世ではなくて、俺の前世の前世なんだって?其程遠い昔のことなら確かに思い出せなくても無理はない。しかしそれなら俺って一体なんだったんだ?


(でも……)


 シャロンもエコーも知らないこと。俺がシャロンを出し抜くための手掛かりは、そこにしかないのかもしれない。

 それを知るのは怖い。それでも、思い出すのはシエロのこと。シエロが危険な場所で頑張っていてくれる。それなのに俺が逃げるわけにはいかないのだ。俺の前が誰でも、俺の前の前が誰でも、今の俺は俺だ。それは揺るがない。

 その上で俺は真実を知りたい。シャロンに打ち勝ち、俺がシエロを守って下町も守る。海神との蟠りを解き、この街を平和にするんだ。そうして何の心おきなく、シエロを幸せにするために……俺は頑張って生きる。そんな未来のために、俺は絶対に負けられないのだ。


 「……教えてくれ」


 顔を上げたカロンと対照的に、第二領主はこっくらこっくら首をがくんと上下に何度も揺らしている。何ともやる気のないことだ。


 「物語は嘘と真。真実と虚構が介在する。どちらが欠けてもそれは成立しないもの。君達が話していた『優しい人魚のフォークロア』というあの物語は、全てが虚構なのではない」


 欠伸をしながら悪魔は言う。

 ここに来るまでの間……近しい夢を渡り歩く内にこんな物を拾ったのだと、悪魔は俺に本を手渡す。どっこいしょとその場に腰を下ろしながら。

 もう少しでこいつまた寝そべりそうだな。カロンがそう不安になったところで、第二領主がいよいよその場に寝そべった。もう自分の役目は終わったと言わんばかりに。


 「おい、あの!」

 「……すー」

 「……ね、眠ってやがる」


 噂には聞いていたが、ここまでやる気がない悪魔だとは思わなかった。


 「いや、どうすれば良いんだよ俺」


 この本をどうすればいいのかも解らない。こんなんでシャロンを出し抜くことが出来るのか?不安になる。とりあえず読んでみるかと捲った本は全くの白紙。文句を言おうにも相手は目を覚まさない。こうなったら相手の夢に乗り込んで文句の一つでも言ってやろう。


(こいつ、寝相とか悪くないよな?)


 仮にも魔王だし寝ながら火とか毒吐いたりしないだろうなと不安にはなる。それでも此方に残された時間は残り少ない。虎穴に入らずんば虎児を得ず。意を決し、悪魔の隣に寝転んで、カロンはその本を枕に夢の中で眠りに就いた。

 そうして聞こえるのは、さざ波の音。何処か懐かしい……潮騒の歌、海の匂い。


 *


 終末の悪魔

 「人魚の子孫のある家に、その呪われた娘は生まれた。それでもその娘は、人魚にはなれなかった。そして、なる気もなかった。」


 *


 「フルトブラント様……貴方は今、どこにいらっしゃるの」


 生まれ変わった私を抱きしめるのは、空色の髪の美しい人。いや、そんな人は何処を探しても居なかった。一人先に死んだ私が、あの人より先に転生してしまうのは仕方ないことかもしれない。


(それなら貴方はいつお生まれになるのかしら?)


 記憶を頼りに旅を続けて辿り着いたのは、古びた屋敷。昔、愛しい人と共に暮らした場所だった。

 過去に囚われて、新しい恋を探せない。貴方以上に愛せる人など何処にも居ない。唯毎日が寂しくて、泣いてばかりいた気がする。そう、愛せるはずがないのだ。まだこんなにも、貴方が恋しい。

 一度は解けたはずの呪い。それでも私は呪われている。生まれ変わった私はウンディーネの記憶を引き継いだのに、男の身に生まれてしまった。綺麗な金色の髪も、海色の瞳だって昔と何も変わらない、それでもやっぱりそうじゃない。

 人魚の血が色濃く出た私は、成長が他の人魚の子孫達よりも遅い。ゆったりとした時の流れを生きている。家の者は我が家から王が出るぞと喜んでいたけど、私は歌姫の少女達を愛せない。家を飛び出したのは、あの人に会いたかっただけではないのだ。

 私は今を受け入れられない。過去に帰りたかった。あの人と、あの人と……三人が笑って幸せになれる未来は何処にもなかったのかと、過去の出来事をどうすれば良かったのか、何が正しいことだったのかと……そればかりを考える。


(会いたい、だけど会いたくない)


 生まれ変わった貴方は、男である私を愛してくれるでしょうか。前とは違うのです。

 女だった私が呪われて男になったのではありません。今生では呪いが解けて女に戻ることがないのです。貴方が私を覚えていてくれる保証もない。思い出してくれたとしても、ずっと呪われたままの私を変わらず愛せるはずがありません。女であった私さえ、貴方は裏切ったのですから。

 男の身体に女の心……何とも歪な私では、男として女を愛することも出来ず、女として男に愛される事も出来ない。寂しさを紛らわすよう海風と共に歌い暮らすだけの日々。

 魂がなかった頃はこんな風に寂しいと感じることもなかったのに。あの人が私に与えてくれる気持ちは、何時からかこんなにも辛い物ばかりになってしまった。


(愛しているのに……どうしてこんなに苦しいのだろう)


 永遠とはこんなにも惨めで辛く悲しいことなの?あの人に恋をしたときのような喜びや、幸せを……私は歌に乗せられない。涙が風に攫われるだけ。


(……そうじゃない、そうじゃないわ)


 貴方を愛しているのは私じゃない。ウンディーネだ。

 私は私。だけどこんな歪な私をこの時代に受け入れて愛してくれる人は居ない。女の心を持った私は、どんなに可愛い女の子でも綺麗な女性でもやっぱりそういう風には愛せない。

 私を罵らないで、あの海に飛び込みたくなるから。そうすれば、そうすれば……私は魂を失うわ。それを予感している。もう二度と生まれ変われない。だからそう思うと新しい恋なんか出来ない。

 どんな男の人だって、何時かは私が邪魔になる。鬱陶しがる。気持ち悪いと罵るんだ。世界に唯一人……私が愛せて私を愛してくれる人は、生まれ変わったあの人しか居ない。

 そう思うから、私は過去の記憶に縋る。私ではない私の記憶にもたれ掛かって生きている。そうしないと私があの海に飛び込んでしまいたくなる。でもそれは駄目だ。


(そろそろ、あの人が何処かに生まれただろうか?)


 時折そんなことを思っても、探しになどもう行けない。この古びた屋敷の外には出られない。あの街から離れたこの場所は、あそことは違う伝承が息づいている。

 一度死人が生き返った曰くがあるこの屋敷は、お化け屋敷のように思われているのだ。時折肝試しに現れる者が居て、そこに啜り泣く私が住んでいるのを目撃し、ここは本物だと大騒ぎをしたことがある。

 それ以来来客がある度に息を潜めて姿を隠さなければならない。あれからもう何年も経つ。人魚の血で、なかなか老けない私を見られたなら、また彼らは大騒ぎをしてしまう。

 そんなことを思っている間にも、風が人の気配を歌い出す。


(っ!誰か来た!)


 それでも今回の来訪者はいつもと様子が異なる。いつもはがやがやと騒ぎ声が聞こえるのに、今回はそれがなかった。何か様子がおかしい。恐怖と言うよりは好奇心。ここで警戒を怠れば身の危険にも繋がるというそういう考えもあり、私は人の気配がする方へ、そっと近付いた。

 来訪者は若い娘。嗚咽を漏らしながら彼女は裏庭の……海に面した崖に立っている。何をしているのだろう。まさか飛び下りるつもり?そんなはずないと自分に言い聞かせた直後、娘の姿が消えた。


 「大変っ!」


 まさか本当に飛び下りるなんて。私は崖まで走り、溺れている娘の姿を見つける。良かったまだ生きている。でも、そこで私は躊躇した。

 海が怖い。海に入れば死ぬ。人魚の子孫の家に生まれた私が、海に飛び込むのは自殺行為。それでも今飛び込んだその人を見捨てられなかった。


(ベルタルダ!)


 彼女の長い金髪と、悲しそうな横顔が……不意に、大好きだった誰かと重なったのだ。


 「自ら死のうとするなんて、なんて事を!」


 人のことは言えない。それでも引き上げた相手を私は叱り付けた。幸い岩場が近くにあったため、鮫が現れる前に退散することが出来たのだ。


 「だって……生きてたって、苦しいだけ!」


 現代の医学では治すことが出来ない病に蝕まれていた少女は、噎び泣く。生の果てに救いなどない。それならいっそと彼女は言った。


 「この世には神様なんて居やしないんだわ!だからどんなに祈っても私を救って下さらない!私が自殺したって、私を裁く人は何処にも居ない!」

 「そんなことはありません。神はいらっしゃいます」

 「どうしてそんなこと言えるのよ!」

 「……少なくとも、私は一人は知っています。父さ……いえ、海神のことなら」

 「海神……様?……そんなの嘘よ」

 「……嘘じゃありません」


 どうしたらこの子を助けられるだろう。明るい方向を向かせてあげられるだろう。悩んだ私はウンディーネの話をすることにした。別に嘘ではない。昔には確かにあったことなのだ。


 「私は、海神の娘。今は呪われて男の姿になっていますが、元は女でした」


 呪いのことを教えれば、間接的にそれは神の証明になる。勿論私の言葉を彼女が信じてくれるかどうかは賭けだった。けれど彼女は私の言葉を信じたのか、私のことを海神の娘と呼び始めた。


 「ウンディーネ!」

 「もう、ベルタ!ここへは近付いてはいけないと言ったでしょう?」

 「でも、どうしても貴女に会いたくて!それにほら……っ!じゃーん!どうです、これ!」

 「うっ!」


 美味しそう。こんな所に隠れ住んでいたから、もう長いこと侘びしい食生活を送っていた。ベルタの差し入れてくれるお弁当やらお菓子やら、涙が出るほど腹に染み入る。そうでなくとも彼女の訪問は、私にとっても嬉しいことだった。大事な友達とよく似た名前の女の子。そんなベルタと仲良く出来るのは、昔のことを彼女に許されたような錯覚に陥る。それは一つの許しだ。


 「で、でもねベルタ。私なんかに関わると貴女も危ないわ。人魚の肉を狙う人間達だっているんだもの」


 もっとも今の私は、人魚の子孫であって人魚ではない。食われたところでどのくらい効果があるかは定かではないのだけれど、私を人魚だと信じているベルタは陶酔した眼差しで私を熱く見つめてくる。


 「大丈夫です!私は貴女に救われた命です!貴女を危険に遭わせたりしません!今度は私が貴女を守る番なんですウンディーネ!」

 「……ベルタ」


 「ねぇ、ウンディーネ。貴女は昔のことを色々知っているでしょう?それも私達人間が知らないようなことを一杯!」

 「え、ええ」


 過去の記憶を引き継いでいるため、人の知らない海の話を知っているのは確かだけど、そんなことがどうしたのかと私は問う。すると彼女はふふふと笑って白紙の本を見せて来た。


 「私、夢が見つかったんです!貴女のお陰で!」

 「まぁ!それは良かったわ!」


 それでどんな生きる希望が見つかったのだとわくわくしながら彼女を見上げる。


 「私、本を書こうと思うんです。貴女のことを綴った物語!貴女がこんな所に隠れ住まなくて良い日が来るように、大勢の人に読んで貰って愛して貰えるようなお話を!」


 それは予想だにしない返答。唖然としている私に、鼻息荒く彼女は語りかけてくる。


 「勿論それだけじゃありません!今まで貴女から聞いた話も全部しっかり覚えています!それを文字に言葉にします!普通の人間が知らないようなお話を人の世界に放り込む!みんな間接的に海神様を信じるようになります!そうなれば気分が良くなって、海神様が貴女の呪いを解いてくれるかもしれません!」

 「ベルタ……」

 「貴女が今生きていることにはきっと意味がある。貴女の大事な人が今度は間違わないように、貴女の言葉を本にして広めます!私の本を読んで、生まれ変わったその人が……貴女をこの場所を思い出せるように!」


 この頃には流石に気付いていた。彼女の私を見る目は、恋する少女のそれだ。彼女に生きる希望を与えたのは確かに私だけど、女の心を持った私はその思いに応えられない。

 彼女を救ったつもりで傷付けている。それなのに彼女は、私が幸せになればいいと言う。彼女の信じるように私が呪いが解けて女に戻ってしまったら、彼女の恋は叶わなくなるのに、それでも彼女は私の幸せを願ってくれている。

 何て優しい人だろう。私は何者にも代え難い友を手に入れた。今生の宝は彼女だろう。例え愛する人に再会出来なくとも、私はこの時代に生まれたことに後悔はしないと心の底から信じられた。


 「私、頑張ります!あとどれだけ生きていけるか解らないけれど、生きている限り、ずっと貴女のことを伝えていきます!」

 「……何てお礼を言ったらいいのか」

 「お礼なんて!貴女が私の恩人なんですよ!?」

 「ベルタ……もしね貴女が……」


 私に出来ることはないだろうか。可哀想だと思ったのだ。私などという間違った希望に縋って生きる彼女が。貴女に応えられない私ではない誰か。そんな誰かと生きて幸せになって欲しい。そのためには彼女の余命幾ばくもないと宣告された寿命がもう少し長くなければ駄目だろう。

 私は指の先を噛み切って血を垂らし、その手を彼女に向かって差し出した。


 「私の力はそう強くない。それでも私の血肉はある程度の回復力を持つから、貴女の病気を治せるかも知れない」


 私は人魚じゃない。それでも人魚の子孫。少しくらいは人魚の力が残っているだろう。数年くらいは彼女を死神から守れるはずだ。


 「ベルタ……私が怖い?」

 「い、いいえ!でも、もし死ねなくなったら……」

 「なったら?」

 「貴女とこうしてずっと……一緒に、お喋り出来るんですね」


 幸せと、彼女が笑った。そうじゃないのよ。他の幸せを探して良いんだよ。そう言っても彼女は私を真っ直ぐに見つめて私の手を取った。その時だ。


 「へぇ、やっぱりそう言うことだったのか」


 突然屋敷の扉を蹴破って、柄の悪そうな男達が押し入って来る。悲鳴を上げたベルタを庇い、彼らを私は睨む。


 「な、何ですか貴方達は!」


 破落戸は二人組。その二人に連れられるよう、気の弱そうな男が室内に現れる。


 「こいつで間違いねぇか?」

 「へ、へい!この女、化け物だ!十年も前から全く老けてねぇ!」

 「死んだ魚みてぇな面してたこの娘が、いきなり生き生きとし出した。どういうことかと後をつけてみりゃ……人魚が隠れ住んでいたとはねぇ!」

 「ほぉ、あれが人魚か。噂通りの別嬪さんだ!こいつは殺すのが勿体ねぇな」

 「そんじゃ、殺す前にせめてもの情けだ。遊んでやろうぜ野郎共!」

 「に、逃げて!こいつら金のためなら平気で何だってするような連中です!」


 この辺り一帯でも評判の悪い破落戸に、目を付けられたのか。本当にそそっかしいんだから。それでも憎めない彼女に微笑んで、私は首を横に振る。


 「ベルタ、私は大丈夫だから、貴女から逃げなさい」

 「で、出来ない!そんなのっ!」

 「ベルタ、私は……」

 「逃げてウンディーネ!海に逃げれば助かるのに!魂なんかなくなっても、生きてさえいればまたあの人に会える!またそれで魂を得ればいいだけじゃない」


 ああそうか。このは私を人魚だと思っているのだ。水妖の世界に戻れば魂を失うのだと信じてる。


(でも、そうじゃない)


 海へ逃げても鮫に食われて私は死ぬのだ。逃げ場なんて何処にもない。私に選べるのは共に死ぬか、彼女だけは見逃して貰うかだけなのだ。

 神も希望もないと言った彼女に私は孤独から救って貰った。そんな彼女にせめて希望を与えたい。嘘を吐いた私は最後まで人魚を演じなければならないだろう。


 「あなた方、彼女の身の安全は保証して下さいますね?でなければ私は海に飛び込み父様に泣きつき津波を起こさせますよ」

 「……っち、そっちの娘を連れて行け。目の前で見せてやりたかったのに残念だよ、全く」

 「う、うああああああああああああああああああああああああああああっ!」


 別室へ移動させられそうになったベルタが運搬係の男に噛み付いた。そして彼の得物を奪い、奪った長剣を……私に手を伸ばした男に向かって振り下ろす。


 「こ、この女ぁああああああああっ!」


 致命傷には至らずも、出血した男は逆上し、ベルタに向かって斬りかかる。


 「危ないっ!」


 咄嗟に彼女を庇った私は、白刃に身を預ける格好になり、深々と身を切り裂かれた。


 「ウンディーネっ!」

 「あーあ……勿体ねぇことを。お前が暴れるからだぞ」


 男達は文句を言いながら、仲間の手当てのために一度その場を立ち去ることを決めたようだ。

 私の傍で泣いていたベルタも、私が事切れたのを知ると、フラフラと立ち上がり……去りゆく男達の背に向けて鬼の形相で剣を構える。


 「させない」

 「あ?」

 「あの人は、私にくれるって言った!あんた達なんかにやるもんか!あの人の血一滴だって!あんた達には渡さない!」


 怒り狂った女は、相棒を抱えた男を後ろから刺し殺し、悲鳴を上げて逃げた気弱男にも狙いを定めて追いかける。その気迫に脅え、躓いた男に容赦なく剣を振り下ろし、彼女は私の所へと戻ってくる。


 「あげない、誰にもあげない……」


 幸せを願っても、愛しい人を守れない。誰にもこの人をもう渡すものかと彼女は、嘘吐きな人魚の肉を貪り食った。


 「私が貴女を歌ってあげる。永遠に……永遠に」


 *


 「……私は」


 永遠を手に入れてしまった少女は、その場に飛び起きた。

 暗い、暗い地下室。それでもその現実にほっとする。餓死ならまたすぐに始まる。火葬ならまだ良い。もう一度最初から始まるだけ。一番酷いのは死体をそのまま埋めること。死ねない私は生き埋めの死を何度も味わいながら、必死に地上を目指さなければならないのだから。


(懐かしい……)


 そんなこともあったわねと、少女は自嘲気味に嗤った。鏡に映る顔は歌姫ドリスの物。それでもそれが自分の本当の名前ではないことを、少女は思い出していた。

 人魚を食らった娘は、永遠を手に入れた。けれど永遠は今度は彼女自身が人魚であるとの疑いを、人に抱かせるようになる。

 あの悪魔と契約したのは、きっと今回は茶番だったのだ。あの悪魔にとっては。だから全てを忘れた私の家に、召還道具を置いてみたりした。

 私は道化としては一級品だったろう。彼女は随分と面白がってくれたのではないか?


(そうだ……)


 私の最初の願いは、今回……歌姫ドリスとは違うものだった。物語の悪魔は永遠を好まない。ピリオドを付けたがる性分。それが悲劇であれ喜劇であれ、私は死ぬことが出来るようになる。あの悪魔に飽きられさえすれば。


 「私の名前は……」

 「ああそうだ。お前の名前はベルタ。しかしお前は貴婦人などではない」

 「イストリア様!」


 棺桶に腰掛けた悪魔は、これまでと様子が違う。常に女の姿をしていたはずの物語の悪魔が、今は男の姿でここにいる。

 それが何を意味するのかは分からないが、こうしてまだ傍にいてくれると言うことは、自分を見限ったわけでもないようだ。全てを思い出した今となっては、それだけが救いだった。


 「ウンディーネが姉妹のように大切に思っていた友人にして恋敵……ベルタルダ。彼女に名前のよく似たお前を、あの娘は彼女の生まれ変わりだと思って大切に思ったんだろうよ」

 「カロン君は……ウンディーネ。でも……」

 「ああ、お前はシャロンとエコーが生きていた時代には存在しない人間だ」

 「はい、思い出しました」

 「そうか。その上で何をお前は願う?」

 「私は……」


(不思議……)


 死にたい。そう思ってこの悪魔を呼んだのに、ドリスはオペラ座で死にたくないと願った。私と私の心が食い違う。それも仕方のないことだ。だってようやく逢えたのだ。あの日失った、私の大事なウンディーネ。

 私はずっと貴女を想い続けて待っていた。あの日の貴女もそうだと信じた。貴方が今生でもエコーを思うなら敵わないと諦めたかも知れない。それでも貴方はエコーを裏切った。貴方を支えていたはずの物がぽきりと折れたのだ。今生で。今度の貴方はまっさらな貴方。私でも手を伸ばせば手に入れられる愛しい人。


(カロン君……)


 出会ったのは下町で。それは嘘じゃない。でもね私と貴方は、下町で二回も出会っているのよ。

 貴方がこの空に来たのは、シエロ=フルトブラントのためじゃない。私の歌に導かれて。


 「イストリア様。私は……脚本を」

書いてて自分で気持ち悪くなった。


西洋の人魚の話は悲恋だけど、東洋の人魚伝説は生々しいね。

人魚の肉の伝説を拾って設定に入れただけでグロくなって、掘り下げれば掘り下げるだけ吐きそうなりました。私そういうグロって苦手なのに、脚本の神に今日も踊らせられています。


ドリスとカロンの正体判明回。

シエロの正体の仮説提示回。

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