0:悪魔の口上『海神の娘?』
1話目からが本編です。これは世界観をなぞるための前書きのようなものです。
飛ばしてもなんら問題ありません。
悪魔の脚本『海神の娘?』
むかしむかし、あるところにそれはそれはしあわせな終わりを迎えたくそったれたファッ●ン●ットまざー●ぁっくな物語がありました。
例えるならそれはウンディーネという名の人魚姫らしくない人魚姫。
例えるならそれはフルトブラントという名の王子様。
どこぞの物語に逆らい、二人は無事に結ばれそれはそれは幸せな日々を過ごしました。
それはめでたしめでたし。……から始まる可哀相なお話です。
人魚姫との間に子供を授かった王子様ですが、子育てに励む人魚姫との生活に、違和感を感じ始めたのです。結婚とは人生の墓場。何一つ欠点のない健気で一途でで優しく可憐で愛らしい妻が居ても、一人の女に縛り付けられるというのは男という生き物にとって苦痛でしかありませんでした。
その内、人魚姫にはない美徳。人としてのマイナス要素。王子はそれに強く惹かれるようになりました。新鮮だったのでしょう。その人間らしい悪徳が、何より魅力的に見えてしまったのでしょう。ていうかお色気むんむんなお姉さんとか美味しいじゃない。
それはそのはず。人間との結婚で魂を得たとはいえ、元々彼女は人間ではありませんもの。紛い物の人間です。人間になったつもりの人間です。一度罵れば、彼女はまた異形に戻るわけですから。
要するに、人魚姫はケチの付けようのない女だったところにケチが付いたのです。
かつて愛した女ですが、今となっては存在自体が嫌味。王子は自分が彼女に釣り合わないと思い始めました。彼女の寿命は人より長く、いつまでも可憐な彼女に劣等感を感じていたのでしょう。或いは彼の嗜好がロリから妖艶な女性、あるいは熟女の色香にシフトしただけかもしれませんが。どんなに可愛い女の子でも、飽きる日は来る。
美人は3日で飽きると言いますし、数年耐えた彼はまだ頑張った方でしょう。
(私でもすぐ飽きるわよそんなの。大体今時そういうの流行らないと思うのよね悪魔的にも。人間の嗜好ってのも大分良い感じに歪んできたなら結構結構。どこぞの使い魔達が頑張ってるんじゃない? 私の部下は全然だけどね。あいつら締め切り破りまくるんだもの、使えないわどいつもこいつもっ! 後で拷問にでも掛けてやりましょう。うふふ。ああ、それはどうでもいいわ)
さておきさておき。その頃にはもう彼女のやること為すこと言動仕草その全て、何もかもが気に入らなくなっていたそうです。
とうとう他の女との再婚を決意する王子に、離縁を告げられる人魚姫。
海の掟により彼を殺さなければならなくなった彼女ですが、こんな屑男のために身代わりになり、代わりに命を落としてしまいました。
ああ、なんて馬鹿な女なのでしょう。
(悪魔的にはここは大爆笑するところね。いやー……生で見たかったわ。ちょっと覗くの遅かった。忙しくても録画テープ見るよりやっぱリアル放送時間に見るのが一番よね。今度から気をつけましょうっと)
ここで怒ったのは親馬鹿である海神です。
(娘に付ける名前が間違ってんぞもうろく爺とかはつっこんではいけません。海の世界も色々あるらしいのよ。なんちゃらネーム世代とか。このころは川とか泉関連の名前が流行ってたとか何とか。どこの世界も下らないことやってんのねぇ……精霊クラスの存在まで俗世に染まってまぁ……)
それはさておき、何かを呪うことに定評のある海神様。さっそく娘を裏切った王子と、彼の国を呪いました。
それ以来王子の子孫の男性は、海水に触れると災いを呼ぶ、更には性別が女性に変わるという呪いを駆けられてしまいましたとさ。
(髭爺っ! なんて美味しい呪いをっ! GJ海神! あんたとは良い酒飲めそうよ。地獄に来る機会あったら歓迎するわよ。まぁ、来られたらの話だけど)
そんなこんなで呪われたその国は何度も水害に見舞われ、腐れ貴族共は空中に城を築いて逃げ出しました。
(よ、外道! 悪魔的にそこそこ素敵だわ。人間の癖にやるじゃない! いいぞもっとやれ! )
しかしそのとばっちりを受けてしまうのは、いつの時代も最下層。空に移り住めない哀れな貧しい人間達。
ああ、もしかみさまがいるのならどうぞあわれなかれらをおすくいください(棒読み)
(え? 海神? ……世界観的にはこの本は神って概念がちゃんとあるのねー。まぁ精霊の王様みたいなもんなんだろうけど、一応神様ってのに分類しといてやりましょう。でも神様がラスボスなんてつまらないわー。神に反逆する俺かっこいいー的な呪いが解けたわやったぁ嫌ん愛してる結局ヒロインとくっつくEDとか私の時間返せって本破り捨てたくなるわよ。そんなん悪魔的にお呼びじゃないの。んな結末になった世界は片っ端から燃やして滅ぼしてやる。私はもっとどっろどろの人間にしか生み出せないカオスな愛憎劇希望。悪魔は悲劇か喜劇しかお好きじゃありませんの。お解りかしら? ……ってあんまり阿呆なこと書いてると数世紀後の私が恥ずかしがるから程ほどにしておくか。いや、でも自分をそうやって精神的に苛めるのも割とぞくぞくするかも。いや、やっぱ駄目! そろそろ真面目に書くわよ私! しっかりするのよイストリアっ! あんま阿呆な文章書いたら地獄の第七領主としての尊厳ってのが地に落ちるわ! ごほんっ!)
ああ、もしかみさまがいるのならどうぞあわれなかれらをおすくいください(棒読み)
無論、悪魔である私は観察をするだけです。
幸い人魚姫は魂を持ったまま死ねたので、いつか人に生まれ変われる日もあるでしょう。
その時こそ、再び筆を取る日。そしてこの物語が完結する日になることでしょう。
【歴史と物語の悪魔】第七領主 ιστορία
魔王イストリアさん、はっちゃけてます。
この世界を観察し執筆した時代はまだ封印されて無くて現役だったんでしょう。
今回は契約するのかしないのか。それによってやっぱりファンタジーなのかミステリーなのかジャンルが行方不明。
出来ればじっと観察にまわって欲しいですので、彼女を満足させられるような悲劇を書きたいと思います。
これじゃあ私が使い魔じゃないか……
警告全部チェックという色々危ない小説です。危険な香りを楽しんでいただければいいなと、思います、はい。オールジャンル美味しいです。