隣の席のバカ女
ちょっとガールズラブ?なので注意。
久しぶりの更新がこれですみません、マジすみません。
たぶん誰も読んでいないけど。
クラスメートの小杉小夜子は顔と家以外にはなんの取り柄もないバカ女である。
道で男にぶつかれば惚れられたと勘違いし、それをみた女子が顔をしかめれば嫉妬故だと高笑いする。一人称は「さや」で、語尾は必ずのばす。髪をいじるのがくせで、笑う時は口に手をあてうふふと笑う。テストはいつも赤点ぎりぎりで、教師は当然渋い顔。でもそんな教師がとやかくいわないもの彼女の家(金持ち)が圧力かけているからなのだが、彼女は自分の魅力でなんとかのりきっていると思っている。バカである。彼女はバカでアホで、そこなしの勘違い女なのだが、それでも一人は寂しいらしい。
心のどこかでは自分が本当は男からも女からも冷たい目でみられていると悟っていた彼女は、偶然席が隣になった私を「ひきたて役にぴったりそう!」といい放ち、下僕に任命した。いい迷惑だ。
それからの私ときたら、昼食も登下校も彼女にぴったり連れまわされ、ついたあだ名は「オヒメサマの犬」。確かに見た目だけなら小杉は金髪ロン毛の緑色の目と、まるで西洋のピスクドールのように美しいお姫様で、黒髪黒目の地味な私はいいとこお付の犬、ってところだろう。
だがひとつふたつ言わせていただくとすると、小杉のあの髪はウィッグで緑の目はカラコンだ。本当の彼女は黒髪テンパのぼさぼさごわごわで瞳はどこにでもあるこげ茶の濁りきった瞳である。見る人が見たら彼女の目の中に浮いている死んだ魚がみえることだろう。嗚呼、痛い。痛すぎる。その言動が痛すぎるぞこのバカ女。
私?私の話はおいておく。
しいていうなら癖のない黒髪以外に自慢はない。ほうっといて。
まぁ、このように小杉はバカで阿呆な勘違い女なのだが、そんな彼女にも時々惚れるド腐れがいるらしい。思うにその無駄にお綺麗な顔しかみてないか、彼女のバックにあるお家を狙っているか二つに一つである。・・・が、嬉し恥ずかし学園ライフっぽいイベントはそんな救いのない阿呆共でも成立してしまうらしい。つまりどういうことかというと、小杉は今日も今日とて一年B組のアホ山アホ太君に呼び出された。別に妬んでなどいない。
「あ、みゆみゆー終わったよぉ~」
弁当を食べながら本を読んでいると、ふいに屋上のドアが開け放たれた。
反射的に顔をむけるとバカ女がしまりのない笑みをのぞかせている。
「あっそ。」
小さく手短に答えると何を思ったかバカ女は隣に座って、べらべらとしゃべり始めた。
そっと翻ったスカートが目の前で舞ってふわりと花の匂いがする。
ああ、香水の匂いがうっとおしい。
「あのねぇ、さやまた告白されちゃったのぉ。ほんとこまっちゃう。さやはぁ、皆のお姫様だから一人のオトコノコと付き合えないのにぃ。しょうがないから下僕にしてあげようかなぁ?って思ったんだけどぉ、みゆみゆに悪いかなぁって思って。」
「何が。」
「え?ほら、みゆみゆったら人付き合い苦手でしょ?下僕増えたらみゆみゆもその子と話さなきゃいけなくなるじゃない。彼氏もできたこともないのにそんなの酷いかなぁ、って思ってぇ~みゆみゆったらせっかく綺麗な髪してるのにねぇ。まぁ、みゆみゆにはそれ以外いいとこないから仕方ないけどぉ。」
くるくると人差し指に髪を巻いて小杉はそう言う。
余計なお世話だ、バカ女。もってきていた弁当の一つを置いて顔をそむけた。
小杉は何がおかしいのか余計にきゃははと不気味な笑い声をもらす。
「あ、これ、さやが好きな卵焼きじゃなぁい。も~らい!」
「ちょっ!」
「おいしぃ~このゴボウのきんぴらもみゆみゆにしたらいい出来じゃん。また作ってきてもいいよぉ?」
「うるさいな。誰がお前にやるか、バカ女。」
ひどぉい!と大声を上げながらも小杉はその顔はにやけていた。
人形みたいな美しい顔も、そんなにゆるみきったら台無しである。本当に残念な美形ってこういことをいうのだろう。
クラスメートである小杉小夜子は人を下僕扱いするとんだ勘違い女だ。
ネクラで地味な私とはいえ、こんな女の友人なんて絶対ごめんである。
たとえ、その濁った瞳が時折寂しそうにゆらいでいたって。
たとえ、その笑顔が人形みたいに強張っていたって。
たとえ、その言葉が強がりと妄想の間でつくられていたって。
たとえ、私の名を呼んでくれるのが彼女だけだとしたって。
たとえ、初めて褒めてくれたのも彼女だけだとしたって。
たとえ、たとえ、
「ね、美柚。明日もお弁当つくってきてね?」
「・・・・・・・。」
そして、そう、あいらいくゆー小夜子。
こくりと思わず頷いてしまった頭をしまった、と思ったが後の祭り。
今日も今日とてくだんのバカ女は何が楽しいのか私の隣で大声をあげて笑う。
最後が駆け足だよ、どうしよう。
誤字脱字感想などありましたら、よろしくおねがいします。