下僕体質脇役不憫少年(童話パロ)
シンデレラパロディ話。以前個人サイトにのせたものを手直ししてのせました。
もしかしたらハーレム?な、少年の話。
「聞きましたか、スウリー?隣の小娘が今度わたくし達の王妃様になるらしいですよ?」
俺がそれを聞いたのはお屋敷のご令嬢・ソフィー様からだった。
ソフィー様は他のお子様と同じく頭がかなり残念で見た目だけが取り柄の方なんだけど、ちょっと腰痛の気があるせいか俺を踏んだり叩いたりしないし、あまり無茶をしない。きまぐれに残飯をくれたりと何かとかわいがってくださるから俺はそれなりに好きだ。
あくまでそれなりだけど。
「となりの小娘、というのはアリアのことで?」
「えっと、そんな名前だったかしら?あのサンドリヨンといわれてた娘のことですわ。」
下々の名前なんて興味ないのでわかりませんの。
ふふっと口角をあげお上品にソフィー様は俺達をあざ笑う。
でもそんなこと気にならないくらい俺の心は荒れ狂っていた。
手が震え、かぁっと頬が好調する。
もちろん怒りではない。目もくらむような幸福感の嵐で、だ。
「そ、そうですか。あのアリアが……」
「お前もお仲間がいなくなってさびしいでしょうが、がんばりなさいな。まぁ、どうしたってお前なんて~」
それからソフィー様はなにやらごにょごにょ長話をして去っていったが、今の俺にはもはや馬事東風、右から左へと流れ出て、ひとっかけらも残らなかった。
嗚呼、ああ、アア!!神様、感謝しますっ
今までこんちくしょーとかいねぇよあんなモンとか思ったのは間違いでした!
がくりと膝から力がぬけ、その場にひざまずく。
頬を伝ったのは安堵の涙。
アリア・ブレマン・メイデン、又はサンドリヨンと呼ばれる件の娘は隣の屋敷の令嬢にして小間使い。
そして極悪非道鬼畜外道な俺の悪魔だった。
<サンドリヨン~外伝~>
俺の名前はアルノー。苗字はない貧民の子だ。
仕えているお屋敷の人たちからはねずみを意味するスウリーの愛称で親しまれて(?)いる。
ちなみにアリアのサンドリヨンってあだ名にも灰かぶり、って意味がある。
あんまいい意味じゃないから、俺が間違ってそのあだ名を呼ぶたびこっぴひどくなじられた……や、いやいや、そんな暗ぁい過去はおいといて、っと。
この度めでたく、(本当におめでたく!!)アリアはこの国の王子様の心をゲットしたらしい。
幼い頃から顔をあわせるたび、苛められて苛められて苛められて(エンドレス)な、俺にとってはこれまたないってほどのビッグニュースだ。
どうやったのかは詳しくしらないけど、どうやら先月の舞踏会がきっかけらしい。
まぁ、あれだな。アリアってちょっと(いやかなり?)魔女的なところがあったから、媚薬でもなんでも使ったのかもしれないけど、ともかく。
よかった!ほんとぉぉうによかったぁぁぁぁああ!!!
お屋敷のお坊ちゃま達や旦那様達のやんちゃっぷりも大変だったけど、そんなものお隣の悪魔に比べればかわいいもんだ。
あの悪魔ときたらそれはもうっ……!
ああ、ダメだ。目を閉じたらまた聞こえてくる。
あの女の高笑いが……
あれでどうして小間使いなんて身分に甘んじてたのかよくわからないけど、たぶんアレだ。
作戦だ。
今までずっと虎視眈々とこうなる日を計算して儚げな横顔で周りをだまくらしてたに違いない。
王宮は魑魅魍魎住む昼ドラワールドだって、いつか奥様から聞かされたことあったけど、あの悪魔なら絶対実力でそのトップになれるだろうし。
よかった、よかった………胸をなでおろし、屋敷の同僚達と掃除にいそしむ俺はこのとき知らなかった。
あの極悪非道な悪魔が、そう簡単に自分の下僕を解放したりしないんだってことを………
「え、私もですか?」
「そうだ。王妃様たっての希望でな……」
渋い顔でそう言うのは旦那様。普段俺みたいな下働きとは話しかけるのも叶わない方だ。
んで、そんな方とどうしてこうやって顔を向き合わせているかというとそれはあの悪魔、アリアのせい。
「慣れぬ王宮生活では大変だろうとて、幼馴染のお前を小間使いとしてご所望のようだ。」
「そんな!私めごとき者が、恐れ多い・・・」
「仕方がない。これも陛下のご命令だ。」
私もお前なんぞに任せたくない、っとごみ虫を見る目で旦那様は言う。
うんうん、わかるよ、旦那様。旦那様ったら上級貴族のくせにとんだぼんくらで根回しも媚売りもろくにできない窓際族だもんな。これで俺が下手な真似をしたりしたら完全にお家つぶされちゃいそうだしなぁ。
だ・か・ら。
俺としてはここで旦那様にふんばっていただきたい。そう!これは俺のためだけじゃないのだ。俺があの女に会いたくなくて会いたくなくて会いたくなくて(エンドレス)言ってるわけじゃない。俺はこの家に恩返ししたいのだ。ろくな給料も休みも楽しみもなにもない。ただ拾っていただいたというだけでこき使うあほんだらのお子様方とぼんくら旦那様と亡き奥様(の亡霊)を見守って働いていたいのだ!
・・・・ということを力説して数時間後。
俺はあっけなく王宮に引き渡されてしまった。
「旦那さまぁぁああああっ!!」
「逝ってこい。」
嗚呼、旦那様。何故ですか?
いままでに見たことのないような酷薄な顔で旦那様は薄く笑い、俺を蹴りだした。
それを反射的に受け取る王宮の使者の方々は、うわっと死んだネズミにふれてしまったかのように俺をはたきおとす。
まって、ちょっとまって。俺にだって人権がある!小間使いとしての人権が!!
「スウリー!」
「ソフィーお嬢さま!」
馬車の中へ荷物のように運びいれられる途中、ソフィー様がかけこんできた。
も、もしかして、俺を救いに・・・・!?
「スウリー!おま・・・・あ、腰が・・・」
ええええ!そこでそうきちゃうの!?つかえねー!最高につかえねぇっすよ、ソフィー様ぁぁあああっ!!
―そうして、必死の抵抗むなしく俺は王宮馬車(の荷台)にのせられて悪魔の元へ連れ去られた。
この後一体どうなるのか、それを思う俺の明日は・・・・ない。
外伝といっていますが、本編はないです(笑)