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南さん?

 どうしてこうなった。

 僕、皆川裕はトラックに跳ねられて両足骨折、アキレス腱断裂で入院している普通の高校二年生なんだけど、目が覚めたらなにやらおかしな自体になっていた。


「南さん、一体何をしていらっしゃるんでしょうか?」


「裕ちゃんを襲ってるの」


 確かに僕は今、マウントポジションを取られている。みぞおちの上に乗られていて息苦しい。申し訳ないが重い。

 僕の上に乗っている女性は僕専用看護婦の南さん。とても綺麗な女性ではあるのだが、看護婦としての技能がまったくない天然のお姉さん。注射針は折るし、血圧すらまともに測れず、包帯もろくに巻けない。なぜ病院で働けているのか謎の塊の南さん。

 それは今は置いておこう。ここに入院して、南さんの殺人的なミスは嫌でも耳に入ってきているし、身にもしみている。問題は今なぜ僕は襲われているのだろうか。


「僕をどうするつもりですか?」


「どうしようかしら、お姉さんのお勧めコースでいい?」


 この看護婦は何を言っているのだろう。この病院はいかがわしいサービスでも始めたのか。僕だって男だし、そういうことに興味はもちろんある。しかし、この状況は胡散臭すぎる。ナースコールを押して誰かに助けてもらおうとしたのだが、それは阻まれた。


「看護婦ならここにいるじゃない。呼ばなくても大丈夫よ」


「何が目的ですか? お金ですか? 残念ながら家は金持ちじゃないので、たいした額を取れませんよ?」


「お金はお給料で間に合ってるわ。欲しいのは裕ちゃんの唇ね」


 どうしようこの大人、意味がわからない。どうしたものだろうか、マウントを取られていなくても僕は逃げることなんかできない。大きい声を出せば誰か来てくれるだろうか。でも、この状況を他人に見られるのは恥ずかしいし、下手をしたら南さんが首になりかねない。いや、この病院の未来のためには南さんは首のほうが平和になるのは間違いないんだけど、一様応援しようと決めたわけだし、どうしよう。


「それじゃ、裕ちゃん。いただきまーす」


 南さんの顔が迫ってくる。キスの一つや二つかまわないかと思った。というか、そう割り切るしかなかった。動けないのでどうしようもない。もう少しで唇が触れる寸前に、病室の扉をノックする音が消え、楓がやってきた。でかした、よくやってきてくれた。


「なにやってるんですか!」


「楓、たすけてくれ!」


 助けを求めると強引に南さんを僕から引き剥がしてくれた。ちょっともったいないことをしたかと思ったけど、いきなり襲われてキスなんかされてもうれしくない。少ししか。


「思ったより早かったわね。もうちょっとだったのに、惜しい」


「惜しいじゃないです! 裕に何しようとしてたんですか」


 楓が予想を超えて怒ってらっしゃる。怒髪天を衝くとはこのことだろうか。ここまで怒りをあらわにして般若のようになっている楓を見るのは初めてだ。怖いです。

 大きい声を上げてる楓に対して、南さんは余裕の表情だ。もしかしてこれ偽者じゃないか。いつもの南さんなら、楓のこんな形相を見たら恐れおののいて土下座でもしかねない。それに南さんは僕のことを裕君と呼んでいたはず。というか、南さんでもいきなりキスなんかしてこないと、思う。たぶん。


「あの、いいですか?」


「あら、なにかしら? 裕ちゃん続きでもしたくなった?」


 南さんらしき人に問いかける。絶対別人だ。確かに南さんは僕をよくからかってくるが、なんていえばいいんだろうか。そうもっとバカっぽい。この人は落ち着きすぎている。よくよく見れば、スタイルも差異がある。南さんについているものはもっとでかい。


「どちら様ですか?」


「あら? もうばれちゃったの? はじめまして。南早苗よ。早苗さんって呼んでね。裕ちゃんが知ってる南は私の愚妹ね」


 南さんのお姉さんだったのか、確かにそっくりだ。胸以外は。


「姉妹で看護婦だったんですか。でも、僕に何か御用ですか?」


「いえ、妹がえらくあなたのこと気に入っていたから、顔を見に来たのだけれど、寝顔が可愛くてついね」


「ついじゃありません!」


 般若モードを継続したままの楓が叫んでいる。あまりの怒気で背後には鬼のようなものが見える。これからは怒らせないようにしよう。僕はまだ死にたくない。

 早苗さんは楓の怒りの視線を軽く受け流している。すごい、これが大人の対応だよな。やってたことは大人以前に人としてどうかと思うけど。とりあえず、空気を換えないと楓が視線で人を殺してしまいそうだ。


「南さんにお姉さんがいるなんて知りませんでしたよ。一緒にこの病院に勤めてるんですか?」


「いいえ。私は今日から愚妹の手伝いに来たのよ。裕ちゃんならなぜ手伝いにこないといけないかわかるでしょう?」


「手伝いに来ないといけないほど、あの人は仕事ができないんですか?」


「恥ずかしい話だわ。院長からこの話を持ちかけられたときは耳を疑ったわ。あなたの処遇のこともそうだけど、小学生でもできる仕事が満足にこなせられないってね」


 思い当たる節が多すぎるのが悲しい。今聞いたことが本当なら、たまにやってる書類整理とやらもまともにできていないということだろう。仕事内容に関しては非常識な人なので、この程度では驚きはしないが、それでなんでさっきみたいな状況になるんだろう。


「妹さんのことはわかりました。でも裕は私の物なので手をださないでください」


 楓ってこんなやつだっただろうか。相変わらず物扱いなのはやめて欲しい。後首にしがみ付いてこないで欲しいな。苦しいし。


「あら、付き合ってたの? それはごめんなさいね」


「いや、こいつとは――」


「お兄ちゃんは明日香のおむこさんだもん!」


 否定しようとすると、僕の声は明日香ちゃんにさえぎられた。これだけ騒いでいたらさすがに明日香ちゃんも起きるよな。というか、何かデジャビュを感じる。昨日もこんなやり取りしなかっただろうか。


「あら、裕ちゃんったら、こんな小さい女の子まで手篭めにしたの?」


「してません! 明日香ちゃんとは同室で友達なだけで」


「お兄ちゃん私のこと嫌い?」


 やばい、明日香ちゃんの涙腺という名のダムが決壊しそうだ。


「大好きだよ。そうだなー明日香ちゃんと結婚したいなー」


「ほんとう!?」


 取り合えず機嫌は直ったようだが、今度は楓のほうがまずい。夜叉が出てきそうだ。これ以上何を言っても泥沼にはまりそうだ。でも、このままだと僕の命も危ない。頭を悩ましていると突然額にやわらかい感触がした。状況を理解するのに五秒ほどかかったが、どうやら、早苗さんにキスされてしまったようだ。突然のことに、楓も明日香ちゃんも呆けていたのだが、すぐに僕を睨みつけてきた。


「裕!」


「お兄ちゃん!」


 ちょっと待ってくれ、僕が悪いのか。今のは不意打ちでかわせるわけないし、というか早苗さんはいったい何を考えてるんだよ。なんか、二人ともすごく怒ってるし。誰か助けてください。


「まだまだ、若い子には負けられないわ」


 いやそんな感想いいですから助けてください。楓の手が首に伸びてきてすごく怖いんですが。顔をうつむかせたまま、楓の手だけが僕に近づいてくる。絞め殺される。そう思ったが、その手は目の前で止まり――


「裕の、裕の、バカー!」


 という叫びとともに、やけにスナップの効いた張り手が僕の頬に炸裂した。殴られると星が飛ぶなんていうが、本当にチカチカって飛ぶんだな。楓は僕を殴ると同時に病室を駆け出していってしまった。


「あらら、若いわねぇ。やりすぎちゃったかしら」


 この状態を作った張本人は、楓が出て行った方向をあっけらかんと眺めていた。

 明日香ちゃんはまだ僕のことを睨んでいる。早苗さんはなぜか笑顔のまま花瓶の花をいじくっていた。この空気どうしてくれんだ。


「一体どういうつもりですか早苗さん! 楓を怒らせないでくださいよ。次あいつが来たとき気まずいじゃないですか」


「来るのかしら? ずいぶん怒ってたみたいだけど」


「来ますよ。あいつは真面目だから、僕が退院するまでずっと来るに決まってる」


 楓はそういうやつだ。いつもおせっかいをやいてくる。どんなときでも僕の横にいるようなやつなんだから、この程度で見舞いをやめるようなら、はじめから来ないだろう。


「熱いわねぇ。楓ちゃんのこと信頼してるんだ」


「楓とは家族より付き合いが長いですから」


「そう。なら私は仕事に戻るわね。あなたもうるさくしてごめんなさいね。お休みしましょ」


 明日香ちゃんは渋っていたが、早苗さんに促がされて布団にもぐりこんだ。静まり返る室内。僕なにも悪いことしてないよね。

 ある意味厄介な看護婦、早苗さんがこの病院に加わった。僕はまたからかわれることになるのだろう。平和だった入院生活がしばらく騒がしくなりそうだ。

行き会ったりばったりで書いているせいで何を書きたいのかわからなくなってしまいました。

駄文ですがよろしくお願いします。

読んでくださった方ありがとうございました。

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