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【歴史日間62位・異世界44位】室町ホールディングス再興録 〜過労死コンサル、足利義昭に転生す。ホワイトすぎる信長を「魔王」にプロデュースして今度こそFIREを目指します〜  作者: 筑紫隼人
【第2章:上場(上洛)とプラットフォーム構築】

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第8話:京都マウント合戦 ―― 公家とコンサルの“雅なる”論破対決

1.入京 ―― 千年企業「本社」への侵入


 永禄十一年(1568年)、十月。


 織田信長率いる軍勢とともに、俺――足利義昭(佐藤健一)は、ついに京都へ入った。


 焼け落ちた家屋。荒れた通り。痩せた民。


 だがそれでも、この街には奇妙な“圧”があった。


 ――千年のブランド力。


(……ここが“本社”か)


 道端の民は平伏しながらも、どこかで俺たちを値踏みしている。


 そしてその視線の先にいるのは、俺ではない。


 信長だ。


 黒いマントを翻し、沈黙のまま進む男。


 近江で関所を“消した”存在。


 すでに京では噂が立っていた。


 ――「言葉を使わず支配する魔王」


「……信長。どうだ、京都は」


「……無駄が多い街です」


 即答だった。


「形式が多すぎる。意思決定が遅い」


(……完全にコンサル脳だな)


 だが問題はそこじゃない。


 ここには、武力では崩せない層がいる。


 ――公家。


 伝統と格式という“見えない資産”で支配する連中だ。


「……最初の会議だ。気をつけろよ」


「……はい。三秒で終わらせます」


(終わらせるな)



2.接待という名のマウント合戦


 会場は寺院。


 御簾の奥に、公家たちが並ぶ。


 中央に座るのは、関白・二条晴良。


 開口一番、挨拶はなかった。


「……これはこれは。足利の御所様。上洛、大儀にございます」


 柔らかい声。


 だが、目は笑っていない。


「……しかし、織田殿」


 扇子で口元を隠す。


「その装束……少々“バサラ”が過ぎますな」


 周囲がくすりと笑う。


「禁裏においては、その色は“忌み色”。千年のしきたりに反します」


 ――来た。


 典型的な“文化マウント”。


(非関税障壁だな、完全に)


 彼らの狙いはシンプル。


 信長を「教養のない田舎者」に落とし、主導権を握ること。


 信長は、黙っている。


 一秒。


 二秒。


 三秒。


 ……それでも黙る。


「……織田殿? 返答がないようですが」


「……やはり、その程度ということですかな?」


 空気がじわじわ歪む。


(よし、ここだ)



3.ロジックの暴力 ―― コンサル式カウンター


 俺は一歩前に出た。


「……二条殿。その“忌み色”という概念ですが」


 視線を固定する。


「ソースはどこに?」


 静寂。


 完全に止まる空気。


「……そ、そーす……?」


「一次資料です。誰が、いつ、どのような根拠で定義したのか」


 晴良の眉が動く。


「……それは、古来よりの言い伝えで――」


「つまり主観ですね」


 一刀両断。


「客観データがない」


 ざわめき。


 俺はさらに踏み込む。


「では質問を変えましょう」


 藤孝に目配せ。


 帳面が広げられる。


「現在の京都。人口減少、治安悪化、飢餓発生」


 指で数字を叩く。


「この状況で、“服の色”が社会に与える損失は?」


 沈黙。


「……測定不能?」


 俺は首を振る。


「違います。ゼロです」


 そして、次の一撃。


「一方で信長のこの装束は、兵士の士気を上げ、治安維持コストを下げる」


 一拍。


「つまり“利益”が出ている」


 視線を突き刺す。


「二条殿。“利益が出るもの”と“意味のない慣習”」


 間を置く。


「どちらを採用すべきか、説明できますか?」


「……それは……その……」


「できませんよね」


 完全に折りに行く。


「では結論です」


 静かに言う。


「あなた方の“雅”は、現状において無価値です」



4.決裁 ―― 沈黙と暴力の融合


 空気は、完全にこちら側に傾いた。


 そこで――


 信長が動く。


「……二条」


 低い声。


 それだけで、場が凍る。


「……三秒待った」


 一歩前に出る。


「反論は?」


 沈黙。


「……ないな」


 即断。


「では決裁する」


 その言葉は、もはや武器だった。


「本日より、京都の行政・裁判」


 一拍。


「すべて織田が担当する」


 公家たちがざわめく。


「……い、いかがなものか……それは……」


 信長の手が、刀にかかる。


 わずかに、抜く。


 金属音。


「……口を出すな」


 それだけ。


「貴様らは今まで通り、歌を詠め」


 一歩。


「酒を飲め」


 さらに一歩。


「雅に生きろ」


 そして。


「実務には関わるな」


 静かに、だが確実に。


「邪魔をする者は――」


 刀が、あと少し抜かれる。


「処理する」


 完全な沈黙。


「……是非もなし」


 その一言で。


 勝負は終わった。



5.成功の歪み


 会議は、十五分で終わった。


 千年の権威は、崩壊した。


 血は一滴も流れていない。


 だが。


(……やりすぎだ)


 信長は、帳面を見ていた。


「……将軍様」


「なんだ」


「理解しました」


 顔を上げる。


「言葉と数字で、人は支配できます」


 その目に、温度はない。


「……恐怖と組み合わせれば、完全です」


(違う。それは“支配”じゃない)


「……信長」


「はい」


「人は道具じゃない」


 一瞬の沈黙。


「……効率が下がります」


 即答。


(……ダメだ)


 完全に踏み込んでいる。


 俺が教えた“合理”。


 それが、ここまで極端な形で実装されるとは思っていなかった。


 これはCEOじゃない。


 ――最適化された独裁者だ。


 俺は目を逸らす。


「……次は金融だ」


 話題を変える。


「撰銭令。通貨を整理する」


「……はい」


 信長は頷く。


「市場も最適化しましょう」


(……止められるのか、これ)


 京都の空は、やけに高かった。



■今回のまとめ(FIRE進捗)


・ステータス:京都入京/公家の実務権限剥奪完了

・資産:行政・裁判権の掌握

・リスク:信長の“効率至上主義”が臨界点へ

・次の課題:撰銭令(金融改革)



■著者あとがき


 第8話をお読みいただき、ありがとうございます。


 今回は「雅 vs ロジック」の正面衝突でした。


 曖昧な価値観を、数字で殴る。

 これは現代でも通用する、極めて強力な手法です。


 ただし――


 それは同時に、“人間らしさ”を削る行為でもあります。


 信長は今、その力に魅了され始めています。


 合理は正しい。

 だが、正しさは時に、人を壊す。


 この物語は、ここから少しずつ“歪み”が広がっていきます。


 次回。


 第9話「撰銭(金融)改革」


 市場を制する者が、天下を制す。


 貨幣を巡る戦いが、始まります。

【日間ランクイン感謝! 筑紫隼人より】


おかげさまで『義昭』が初日からランキング入りを果たしました!

完結作の**『立花宗茂戦記』**も同時にランクインしており、新旧の作品が並ぶ光景に身が引き締まる思いです。未読の方は、ぜひ以下のリンクから覗いてみてください。

https://share.google/NohPtIyvaZalKKF0h


また、歴史ものを扱う上記2作とは別に、魔剣を手に戦う王女の復讐劇も書いており、戦記物としての熱量はそのままに、ファンタジーならではの逆転劇を描いています。


『魔剣に選ばれた王女 〜亡国から始まる反逆の戦記〜』

https://ncode.syosetu.com/novelview/infotop/ncode/n9418lx/

王女セリスと魔剣ノイエジールの戦いも、あわせて応援いただけると嬉しいです!


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