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【歴史日間62位・異世界44位】室町ホールディングス再興録 〜過労死コンサル、足利義昭に転生す。ホワイトすぎる信長を「魔王」にプロデュースして今度こそFIREを目指します〜  作者: 筑紫隼人
【第1章:シード期・創業】

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第4話:現場の衝撃 ―― 聖人君子の脆弱性

1. 監査フィールドワークの開始


 ――これは、まずい。


 織田信長を「魔王」に仕立て上げる。


 そのプロジェクトを始動した翌日、俺――足利義昭(中身:元コンサル)は、早くも致命的な違和感に気づいていた。


 昨日の会議で、信長は確かに変わった。


 沈黙を覚え、声を落とし、視線に圧を宿した。


 だが、それはあくまで――


 “見せ方(UX)の改善”に過ぎない。


(問題は中身だ)


(あの“全方位に優しすぎる性格”というバグを放置したまま戦国に出せば――確実に死ぬ)


 俺は決断した。


 現場を見る。


 名目は「将軍による領内視察」。


 実態は――


 信長の“善人度”の脆弱性診断ペネトレーションテストだ。


「……権六。信長はどこだ」


「はっ。本日は、焼けた村の復興視察に……あ、あそこに」


 指差した先を見て――


 俺は、固まった。



2. 致命的な「共感能力」


 そこにいたのは――


 黒マントも、魔王の威圧もすべて脱ぎ捨てて。


 泥だらけで屋根を直している男だった。


「……何やってるんだ、あいつは」


「いつものことにございます」


 勝家は、誇らしさと絶望を同時に滲ませる。


 俺は言葉を失った。


 信長は、老婆の隣に座り――


 握り飯を差し出しながら、涙ぐんでいた。


「そうか……息子を亡くされたか……」


「すまぬ。私がもっと早く来ていれば……」


 ――謝っている。


 一国の大名が。


 領民一人に。


 本気で。


(……終わってる)


 俺の中で、コンサルとしての危機アラートが鳴り響く。


 戦国における「優しさ」は、資産じゃない。


 “ exploitable weakness(突かれる弱点)”だ。


 部下は甘え、


 敵は確信する。


(こいつは、人質を取れば折れる)


 つまりこれは――


 “裸で戦場に立っている状態”だ。



3. 家臣団の「隠蔽工作」


「権六。正直に言え」


「……こういう話、他にもあるな?」


 勝家は、少しだけ迷い――


 やがて覚悟を決めたように口を開いた。


「……木下藤吉郎の件にございます」


「軍資金の計算を誤り、多額の不明金を出しました」


「普通なら――打ち首です」


「だが、信長は?」


「『疲れていたのだろう』と……」


「……算術を、教え始めました」


 俺は思わず空を見た。


(いやいやいや)


(それで忠誠MAXになるの、完全に“恩バフ”じゃねえか)


「他にもございます」


「一揆を招いた城主に対しても――」


「『死ぬな。畑を耕せ』と鍬を与えました」


 俺は、確信した。


 織田家の秩序は――


 信長が作っているのではない。


 “現場が必死に補正している”


「……つまり、お前たちは」


「信長の優しさを、隠してきたわけか」


「……はい」


 勝家の声は低かった。


「でなければ、国は持ちませぬ」


 そして――


「上様は、夜に泣いておられます」


「『誰も傷つけたくない』と」



4. 義昭の覚悟


 俺は、子供と泥遊びする信長を見つめた。


 ――美しい光景だ。


 だが、同時にわかる。


 これは長く続かない。


(このままなら、確実に破滅する)


 中途半端な善は、被害を拡大する。


 戦が長引き、死者が増える。


 ならば――


 やることは一つ。


「……権六」


「これからやるのはブランディングじゃない」


「全人格の偽装だ」


 勝家は深く頭を下げた。


「……お頼み申す」


 その姿は、家臣ではない。


 溺れる主君を救いたい男の顔だった。



5. 夜の特別研修


 夜。


 風呂を終えた信長を座らせる。


「……将軍様。今日の老婆、喜んでくれました」


「私はああいう笑顔のために――」


「黙れ」


 空気が凍る。


 信長が震えた。


「お前が与えたのは慈悲じゃない」


「依存だ」


「お前が死んだら、その老婆は終わる」


「それは救いじゃない。リスクだ」


「……ですが……」


「いいか」


「お前は“優しい領主”になるな」


「“逆らえば滅ぶが、従えば生きられる存在”になれ」


「恐怖は、善意より安定する」


 信長は、目を伏せた。


「……寂しいですね」


「ああ、寂しい」


「それが“リーダーのコスト”だ」


 しばらくの沈黙。


 そして――


「……うむ」


「私は、寂しい魔王になります」


 震える声だった。


「……将軍様。そばにいてください」


 胸が痛む。


 だが俺は――


 その手を外した。


「……次は比叡山だ」


「“焼かずに焼いたように見せる”」


「プレゼンを組むぞ」


 その夜。


 俺たちは――


 歴史という名の「嘘」を設計し始めた。



今回のまとめ(FIRE進捗)


・ステータス:信長の致命的な性格バグを特定

・資産:勝家ら幹部との共犯関係構築

・次の課題:比叡山プロパガンダ戦略(恐怖の最大化×実害最小化)



著者あとがき


第4話ありがとうございます!


今回は「なぜ魔王が必要なのか」をロジックで証明する回でした。


・善人すぎるリーダーの危険性

・現場が裏で支える組織の歪み

・そして“優しさを捨てさせる”という最大の暴力


義昭は正しいのか?

信長は間違っているのか?


この答えは、物語の最後まで揺れ続けます。


【日間ランクイン感謝! 筑紫隼人より】


おかげさまで『義昭』が初日からランキング入りを果たしました!

完結作の**『立花宗茂戦記』**も同時にランクインしており、新旧の作品が並ぶ光景に身が引き締まる思いです。未読の方は、ぜひ以下のリンクから覗いてみてください。

https://share.google/NohPtIyvaZalKKF0h


また、歴史ものを扱う上記2作とは別に、魔剣を手に戦う王女の復讐劇も書いており、戦記物としての熱量はそのままに、ファンタジーならではの逆転劇を描いています。


『魔剣に選ばれた王女 〜亡国から始まる反逆の戦記〜』

https://ncode.syosetu.com/novelview/infotop/ncode/n9418lx/

王女セリスと魔剣ノイエジールの戦いも、あわせて応援いただけると嬉しいです!


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