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【日間43位】過労死コンサル、足利義昭に転生す。ホワイトな信長を魔王にプロデュースして今度こそFIREを目指します【完結済/続編有/一気読み推奨】  作者: 筑紫隼人
【第5章:本能寺エグジット ―― FIREへの脱出編】

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第39話:本能寺の変(四) ―― エグジット(退職)完了

1.「織田信長」というアカウントの完全削除デリート


天正十年(1582年)六月二日、正午。


京都の街は、本能寺から立ち昇る黒煙と、明智軍の軍靴の音に支配されていた。


本能寺の焼け跡では、明智光秀の重臣たちが必死になって「信長の首」を捜索していた。


灰を掻き分け、焼けた骨を拾い上げ、遺品を確認する。


しかし、そこには「織田信長」を特定できる物理的なデータは、一片も残されていなかった。


一方、京都の喧騒から隔絶された嵯峨野の隠れ家。


義昭は、信長に簡素な麻の衣を差し出し、自分自身もまた、将軍の威厳を象徴する一切の装飾を脱ぎ捨てていた。


「信長、準備はいいか。この門を潜れば、お前はもう『天下布武』の主ではない。ただの『一人の隠居人』だ。二度と命令は下せないし、二度と豪華な城には住めない。だが、その代わりに……」


義昭は、遠くで燃える本能寺の煙を指差した。


「お前はもう、誰を殺す必要もないし、誰に殺される恐怖に怯える必要もない。俺がこの四十五年……いや、この世界に来てからずっと夢見てきた『最高の配当』を、お前にも分けてやる」


信長は、差し出された粗末な衣を静かに纏った。


かつて「魔王」として天下を震え上がらせたその肩は、どこか軽やかになったように見えた。


「公方様……いえ、我が師よ。私は今、不思議な感覚に包まれております。あれほど執着していた『天下』という名の大義が、この炎の中で驚くほど小さなものに思える。私が守りたかったのは、権力ではなく、貴方が示してくれた『誰もが飢えぬことわり』だったのかもしれません」



2.最後のアドバイス ―― 「秀吉」へのプッシュ通知


義昭は、草庵の机に一枚の書状を置いた。


それは、これからこの「主を失ったシステム」を掌握することになるであろう、羽柴秀吉への「非公式なパッチ(修正プログラム)」であった。


「信長、お前を連れ出す前に、一つだけやっておくことがある。俺たちが消えた後のこの国が、再び『無秩序な競合状態』に陥らないようにするための、最後のアドバイスだ」


義昭が筆を走らせたその書状には、現代の経営コンサルタント・佐藤としての知見が凝縮されていた。


•「山崎の戦い」における圧倒的な速度(パッチ適用): 秀吉に対し、中国大返しを「全速力で実行せよ」と示唆。混乱が長引く前に、新しい管理権限を確定させる。

•「検地・刀狩」という名の権限リセット: 武士と農民のデータを分離(兵農分離)し、社会構造をデータベース化する手法の伝授。

•「五大老・五奉行」による負荷分散ロードバランシング: 特定の個人への負荷を避け、合議制によってシステムを安定させる運用案。


「これを、秀吉の手に渡るよう手配した。あいつは聡明だ。俺たちの意図を汲み取り、この国を『織田信長』という強烈なカリスマがいなくても回る、自律的なOSへとアップデートしてくれるだろう」


信長は、義昭の筆致を見つめ、驚嘆したように呟いた。


「……貴方は、去り際に至るまで、この国の数百年先を設計デザインされていたのですね。私や秀吉は、貴方の掌の上で踊る『実行プログラム』に過ぎなかったというわけですか」


「よせ。俺はただ、自分が隠居した後に戦争が起きて、せっかくの配当金(不労所得)が紙切れになるのが嫌なだけだ」


義昭は、佐藤としての本音を隠すように、不敵な笑みを浮かべた。



3.歴史の「デッドコピー」と「オリジナル」


午後三時。


義昭と信長は、京都を後にし、瀬戸内海へと続く山道を歩み始めた。


背後では、歴史という名の巨大な録画装置が、事実とは異なる「本能寺の変」という映像を記録し続けている。


「信長、見てみろ。歴史ってのは面白いもんだ。事実データよりも、解釈ストーリーの方が優先される。世間は、お前が炎の中で華々しく散ったと信じ込むだろう。そして、俺……足利義昭は、毛利の庇護の下で無力に余生を過ごした、時代遅れの将軍として記憶される」


「……それで、よろしいのですか? 貴方がこの国を救った真の功労者であることは、誰一人知る由もなくなるのですよ」


信長が問いかけると、義昭は足を止め、新緑の木々の間から差し込む光を浴びた。


「いいんだよ。むしろ、それが最高のエグジットだ。『誰にも知られずに世界を救い、自分だけは最高の利確をして消える』。これがコンサルタントとしての、究極のKPI(重要業績評価指標)なんだからな。目立つのは、まだ現場で働きたい奴らに任せておけばいい」


義昭は、自身の胸に手を当て、内なる「佐藤」に語りかけた。


「四十五年。長かったデスマーチは、今この瞬間、完全に完了コンプリートした。これからは、誰の目も気にせず、誰の期待も背負わず、ただ自分の楽しみのために、残りの人生という名の『ボーナスステージ』を消費するだけだ」



4.義昭の独りごち ―― 「退職願」の焼却


夕闇が迫る頃、二人は小さな峠の茶屋で休息を取った。


義昭は、袂から一通の、誰にも見せることのなかった「退職願」……すなわち、足利義昭としての、将軍の辞令を取り出した。


「……佐藤、お前はよくやったよ」


義昭は、自分自身にだけ聞こえる小声で独りごちた。


「最初は、ただ生き残るために必死だった。室町OSのバグを修正し、信長という名のモンスターを教育し、戦国時代という名の地獄を再構築した。……だが、今、隣にいるこの男(信長)の穏やかな顔を見ていると、俺がやってきたことは、単なるビジネス(統治)じゃなかったんだな、と思える」


義昭は、その紙を茶屋の囲炉裏の火に投げ入れた。


「さらば、足利義昭。さらば、天下。……俺は今、人生で初めて、『本当の自由』を手に入れた」


信長は、その炎を見つめながら、静かに、しかし力強く言った。


「師よ。私も、貴方と共に参ります。貴方の語る『自由』という名の新天地が、どのようなものか……この目で見てみたい」



5.今回の結び:【エピローグ】へのログアウト


天正十年(1582年)六月二日、深夜。


本能寺の変という名の「大規模システム移行」は、表向きには悲劇として、裏側では「完璧な事業承継」として完了した。


織田信長は歴史から消え、足利義昭は政治から消えた。


しかし、その翌月から、備後の鞆のとものうらという小さな港町に、妙に世情に明るい「隠居の老人」と、その用心棒を務める「無口だが風格のある大男」が住み着いたという。


第40話〜最終話:エピローグ ―― 義昭のFIRE。歴史に刻まれた「謎の急成長」。


戦国時代の終焉。


秀吉、家康が築く新時代を、特等席(隠居先)から眺めながら、義昭(佐藤)が手に入れた「真の不労所得」と、歴史が語らぬ「日本経済の黒幕」としての最後の日々を描きます。


ーーーーーーーーーーーーーー


今回のまとめ(FIREへの進捗)

•ステータス: 天正十年(1582年)六月二日。退職エグジット完了。歴史の表舞台からのログアウト成功。

•資産: 各地に分散させた「名義貸し」による利権配当、および鞆の浦の秘密拠点に集積された莫大な物資。

•FIREへの寄与:

•完全な匿名性の獲得: 「死者」または「過去の人」として扱われることで、一切の政治的責任を回避。

•最強のボディーガード: 織田信長(実体)という、世界最強の人材を個人雇用(共同隠居)として確保。

•次なる課題: 第40話〜最終話:エピローグ ―― 義昭のFIRE。歴史に刻まれた「謎の急成長」。


ーーーーーーーーーーーーーー


【あとがき】


 本能寺の変という名の「退職劇」が、ついに完結しました。


 信長を殺さず、共に連れ出す。


 これは、冷徹なコンサルタントであった佐藤が、この過酷な戦国時代を四十五年間生き抜く中で手に入れた、唯一の「人間らしいわがまま」でした。


 「部下を犠牲にしたFIREに価値はない」。


 この信念こそが、本作の義昭(佐藤)を、単なる歴史の改変者ではなく、真の意味での「設計者」へと昇華させたのです。


 さて、物語はいよいよエピローグへ。


 天下が秀吉、そして家康へと引き継がれていく中、隠居した二人がどのような「不労所得生活」を送るのか。


 歴史の教科書には載らない、しかし確実にそこにいた「経済の黒幕」たちの、最高に贅沢で知的な余生を描き、この物語を締めくくりたいと思います。


 最後まで、お付き合いください。

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