表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

4

これで一旦終わりになります。

 今日は村でお祭りだ。

 昨日、村の手前まで工事が終わり今日は村の中の大通り?と広場の細かい作業をした。近くに人間の家が建っているので壊さないよう注意が必要だった。

 そして、その工事が終わり今はその大通りの広場で人々が完成式典?の準備をしている。

 私は村の外れで子供たちと遊びながら準備が出来るのを待っている。


 日が暮れ始めた頃、メリッサが約束通り姿を現して、私たちは近くの林の方に向かう。

 人の気配がしないところまで林に入ってメリッサが私を見上げる。


【心の準備は良い?】


【大丈夫。二回目だし】


【そう、じゃあ気持ちを楽にして受け入れて】


 メリッサが『杖』を出して呪文を唱えると私とメリッサの間に白い魔法陣が浮かび回転し私を魔力が包む。

 今回は目を瞑らなかったので、みるみる私が小さくなって服の間に埋もれてゆくのが良く解った。


【う、ぷぷぷ】


 中身を失った服が私に被さってくる。地味に重い。普段こんな重い物を着ているのかと不思議な気分になる。


【大丈夫?】


 外から聞こえるメリッサの声に応えて、脱いだ服の首の所から差し込む光を頼りにそこから何とか脱出しようと藻掻いていると下の方からメリッサが現れた。


【はい、この辺りの村の女の子が良く着る衣装よ】


 メリッサの手には赤色や黄色、青色の模様が細かく刺繍されたワンピースが乗っている。


【わーーー! 素敵! 良いのこれ?】


【最初に報酬の約束をしたでしょ。人間のお祭りで踊れるように『変容:ポリモーフ』の呪文を掛けて、服とかも用意するって】


【うん、そうだけど。うれしい】


【さぁ、ゆっくりしていると、祭りが始めってしまうわよ】


【え、わ、解った】


 それから服を着て、靴を履いた。久しぶりの人間の体はやっぱりすべすべで柔らかく、とても傷つきやすそうだ。木の枝とかにぶつからないよう気を付けなければ。

 人間の服を着た段階でメリッサが私の巨人用の服を『魔法収納袋』に仕舞ってくれて視界が広がる。

 メリッサが目の前に大きな鏡を出してくれて最終チェックをするが変なところは無い。前回と同じくメリッサがチラチラと胸やお尻あたりを見ているがやっぱり何か変なのだろうか?


【何か変?】


【‥‥いいえ、髪を結ってあげるわ。後ろを向いて】


【うん】


 人間の今流行っているという髪型にしてくれるというのでお任せする。


【ところで人間の言葉は大丈夫?】


「はい、こんにちは、こんばんは、ありがとう」


「上手ね」


【私も近くにいるようにするけど、何かあったら笑って「ありがとう」と言っておけばいいから】


【わかった】


 可愛らしい髪形にリボンも付けて貰い私たちは村の広場に戻った。






 **********






 今日は子爵領の端から最初の村までの街道工事が終わり村で祭りが開かれる。子爵領の家宰も再びやって来て、進捗の確認をしている。

 工事も本当は子爵領の領都から始める案もあったのだが、グラニットに対する住民の反応がどうなるか解らないという事で、領地の端から工事が始まった経緯がある。

 家宰は村の住民や工事関係者から聞き取りもして、グラニットとの関係が良好に行っている事からこのまま工事を進めて大丈夫だと、子爵に報告すると言っていた。


 グラニットは工事関係者とも打ち解け、住民との距離も感じなくなって今では子供たちの大きなお友達だ。さっきまで村の外れで子供たちと遊んでいたが家宰とホーキンスと打ち合わせしているうちに姿が見えなくなっていた。


 祭りが始まる用意が出来、村人が新しい石畳の広場に集まって「これで雨にも安心だ」「ぬかるみを気にしなくて良くなるな」「轍が酷かったからな」などと言って喜んでいる。

 いつの間にかメリッサさんと知らない女性が一緒にいることに気が付いて挨拶に向かう。


「メリッサさん、こんにちは。わざわざありがとうございます」


 王都からこの村まで馬車でも5日は掛かるのに、また来てくれたことに感謝の言葉を贈る。グラニットの事が心配なのだろう。そういえばグラニットはと首を回すが村の周りに姿は見えない。


「ああ、グラニットはゆっくり落ち着いて大地の気を吸収するって言って村から離れたところにいます。明日の朝には戻りますからご心配なく」


「そうですか‥‥」


 祭りを楽しみにしている様子だったが、初めて人間の中で一月生活してやっぱり気疲れてしまっていたのだろう。明日以降も様子を小まめに見ていこう。


「それでこちらは私の友人でランと言います。異国の方なので言葉は少ししか分かりませんが、この国のお祭りに興味があるということなので連れてきました」


「よろしく‥お・ねがします」


 見れば黒髪に赤い瞳が特徴的な女性がメリッサさんの陰に隠れるように立っている。実際はメリッサさんより頭半分は高そうだが、身を屈めているので同じくらいに見える。

 その赤い瞳にどこか見覚えがある気がした。


「初めまして、スタン・パラディと申します。宜しければ祭りを案内させていただけますか」


 微笑みながら二人に申し入れると、メリッサさんが答える。


「お願いします。彼女はまだこの国に慣れてないのでゆっくりで」


「はい」


 広場の中央では家宰が挨拶を始めていた。今日も子爵から振舞い酒があり、住民や工事関係者は既にグラスにエールを注ぎ回している。そこから三人分のエールを貰ってきて二人に渡した辺りで家宰の「乾杯!」の声と共に回り中とグラスを合わせる。

 グラニットが昨日、祭りの料理に使ってくれと鹿や猪を数頭狩ってきていたので、あちこちで串焼きや丸焼きの匂いが漂っている。

 その串焼きも人数分貰って二人に渡すと、ランという女性は慣れない感じで串焼きを食べ始め、メリッサさんに食べ方を教わっている。

 串焼きを食べたこと無いという事はどこかの貴族のお嬢様だろうか? 周りには村の子供たちが集まって来て私に声を掛けてきた。


「ねぇ、巨人のお姉ちゃんは?」


「彼女は山の方でちょっとお休みしているんだ。明日には戻って来るよ」


「えーー、お姉ちゃん用に猪の丸焼きを父さんが焼いてるのよ!」

「また高い高いして貰おうと思ったのに」

「‥‥‥?」


 子供たちが口々に喋る。彼女は随分懐かれているようだ。

 一番小さな子供だけじっとランさんを見上げている。

 メリッサさんが小袋を出して子供たちに渡している。


「王都の最新お菓子ですよ。みんなで分けてください」


「やったーーー!」

「いこうぜ」

「‥‥‥」


「はは、子供はどこでも無邪気ですね」


「‥‥‥」


 ランさんが子供たちを目で追っている?


「はい」


 メリッサさんが追加で出した小袋をランさんに渡し、ランさんは小袋から出した砂糖菓子を口に入れ「バキッ」と噛んだ。その後目を大きく開け幸せそうに笑った。どこかで見たことがあるような微笑だった。

 それからメリッサさんの口元に砂糖菓子を近づけ「はい」というと、メリッサさんの口の中に砂糖菓子を放り込んだ。

 微笑まし光景に口元を緩めていると、「はい」と私の方にも出してきたので周りを見つつも頂いた。とても甘い味がした。

 その仕草は貴族のお嬢様ではない?


 その後は幾つか食べ物を食べ、エールを追加していると、村の人たちが持ち寄った弦楽器や太鼓、タンバリンなどの楽器を奏で始め、自然と広場中央の焚火の周りに若者たちが集まり踊り始めた。


 焚き火を囲んで男女が交互に二重の輪を作り手をつなぎ、簡単なステップを踏む、男女のコンビが向かい合い踊り、曲の節目で隣の人と相手が移り変わる。


 横を見るとランさんがじっと踊りを凝視している。


「エスコートをお願いしても」


 メリッサさんがランさんの背中を押し、私の方にランさんを向けた。


「行きますか?」


「はい」


 ランさんの手を引いてダンスの輪に加わった。

 最初は足の運びに苦戦していたランさんもものの五分で周りに遜色なく踊りだし、次々とパートナーを変えて休みなく踊り続けた。

 申し訳ないが私は途中で体力の限界を迎え、輪から離れた。


 メリッサさんがエールを渡してくれるのをぐびっと飲み一息つく。

 焚火に照らされ踊る人々、周りに伸びた影も踊る。

 そんな中、ランさんは一際躍動的に疲れ知らずに踊っている。


「すごい体力ですね。それに楽しそうだ」


「ええ、彼女、すごく楽しみにしていましたから」


「そうですか」


 焚火の明かりを受けて輝く赤い瞳と躍動的に舞う黒髪に目が奪われずっと目で追っている自分に気が付いた。


挿絵(By みてみん)





明日は本編の投稿を18:00ごろいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ