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「メリッサ・スー魔法古物店へようこそ  ~魔法古物の査定、鑑定、買取、販売いたします~」の番外編になります。


「メリッサ・スー魔法古物店へようこそ  ~魔法古物の査定、鑑定、買取、販売いたします~」

EP12.13 『若返りの秘薬』と農民1.2

短編 石巨人の少女は今日もダンスを踊る

短編 水準測量技師は今日も水平を測る

が関連しますのでよろしければそちらもご覧ください。


こちらだけでも読めますが、よろしければ本編もよろしくお願いいたします。

 私はグラニット、ストーンジャイアントのグラニット。

 人間でいうと16歳くらいらしい。


 始めてメリッサに会ってから一月が経ち、また大の月が満ちて来た。ここ一月、月が欠けて満ちてくるのが楽しみで毎日、夜空を見上げて過ごした。

 約束通りメリッサは大の月が満たされた夜に『魔法の絨毯』に乗ってやって来た。


 再開を喜び合った後、メリッサは改めて聞いて来た。


【本当に人間と一緒に仕事をすることは大丈夫?】


【うん。ここ一月楽しみで夜も眠れなかったの】


【最初は私も一緒にいるから何か有ったらすぐ言ってね。じゃあ、前回説明したことを覚えている?】


【うん。まず人間は私たちに比べて小さくて見えないところに居るかもしれないから、移動するときは足元に注意していないことを確認してから動くこと‥‥‥】


 それから前回教えて貰ったいくつ間の注意事項を確認した。

 歩くときはゆっくり歩く。

 立ったり座ったりするときもゆっくりする。

 人間を掴んだりしない。

 大きな声は上げない。

 道具を置くときはゆっくり置く。

 などなど


 その後はメリッサが用意してくれた作業着?のチュニックとズボンに着替えてホーンドタイガーの革ベルトを締める。

 色は濃い紺色で今まで着ていた生成りの薄いベージュより綺麗だし軽い気がする。肘と膝にはパッチがしてあってカッコいい!

 服の材質は人間が船の帆に使っている帆布のようで、前に故郷のお母さんが人間と交換してもらって成人記念に作ってくれた服と同じ作りだ。お母さんが作ってくれた服はところどころ破けてしまっていたが、メリッサが次来る時までに直してくれるという事で預けることにした。

 また、三つ編み用のリボンもくれたのでそれをする。

 お礼に何かお返しをしようとしたが、作業着?の支給?で必要経費?だから気にせず働いてほしいと言われたので一旦受け取っておく。

 そのうち機会があった時に何かお返ししよう。


 その夜はメリッサが石舞台の上で『幻影』の魔法で人間の街の様子を見せてくれた。


【今日は王宮でグラニットが見たがっていたものがやっているんですよ】


 遠く微かに見える街の明かりまで幻影の光景が空を飛んでゆくと石と木で出来た家々が一杯並んでいて、いくつかの櫓から光が空に向かって伸びている。

 街の中央にはいくつもの塔が立っている一際大きい建物があるが、実際どの程度の大きさなのだろう?偶に見かける人間の大きさを参考にすると大きいと言ってもそれ程ではないのかもしれない。

 その建物の中に入るとそこは吟遊詩人の女の人が言っていた舞踏会の会場だった。

 大理石の床や壁に掛かったタペストリー、天井から下がったシャンデリア?が煌めき、流れる楽団の音楽、綺麗なドレス?を着た人間の女性、タキシード?を着た人間の男性がホールで踊っており、いくつもの花が舞う様だ。

 前に聞いた時には話の半分も分からなかったけど、煌びやかに人間が踊りまわる姿はとてもきれいだ。

 会場を俯瞰していた視界がホールの中央で踊る一際綺麗で煌びやかなドレスを着た女性に近づいてゆき、その女性が見ている視界になった。

 見の前にはこれまた煌びやかなタキシード?を着た男性が間近に見える。彼の出した手に彼女も手を添えて、その女性の視界でワルツの音に合わせて踊りだす。

 クルクルと視界が変わってまるで自分が本当にそこでワルツを踊っていると錯覚する。

 わーーーー楽しい!視界の隅では他の男女も踊って、女性達のドレスの裾が広がって本当にお花が咲いているようだ。


 翌朝、起きてからも昨夜の舞踏会の事をあれこれメリッサに質問してしまった。メリッサはひとつずつ答えてくれたが、【そろそろ行きましょう】と人間のいるところまで山を下りて行って仕事?相手と初めて会った。


【こんにちは、私はスタン、よろしく】


 人間が広げた筒のような何かを顔の前に広げて話しかけてきた。私は身を屈めてその小さな体を見降ろし答えた。


【こんにちは、私はグラニット、よろしく】


 逃げ出したりはしていないが、怯えているような気はする。この人間と上手くやっていけるかちょっと心配だ。






 **********






 私の名はスタン・パラディ20歳、王国西部の特に産物があるでもない小さい領地を待つ男爵家の四男だ。

 煤けた金髪に垂れ目と人当たりが良い顔は良く「いい人」と言われるがそれで特段モテるわけではない。

 色々あって今は街道建設の責任者をしている。


 ある子爵領から王都を繋ぐ街道を作る工事で新技術導入で測量までが順調にいったところで人手不足が問題化した。

 工事の出資者である商会のブランチ・ホーキンスが何とかすると言っていたが、一月ほど前に渡してきたのは「巨人の言語と生活様式」という本だった。


「これは?」


 当然の私の疑問にブランチは普段の真面目そうな顔に悪戯っぽい笑みを浮かべた。


「一月ほど後に現場に新人が入る。そのための準備だよ」


 連れて来たのは、本当にストーンジャイアントだった。

 見上げるほどの巨体、身長は8mほどか?皮膚は磨き上げられた滑らかな岩肌のような質感で色は灰色、体は人間で言うところの非常に筋肉質だ。

 顔立ちは人間に比べると非常に彫りが深く、鷲鼻で顎のラインが角ばっており、瞳はルビーの様に真っ赤だ。

 髪は黒曜石のような黒で今は腰ぐらいの長さで三つ編みにしてリボンをしている。

 女性なのか?


 足が竦み声は裏返っていただろうが、事前に準備して貰った『拡声器』を使って覚えたての巨人語で挨拶をしてみる。


【こんにちは、私はスタン、よろしく】


 巨人は身を屈めてその真っ赤な目で私を見降ろした。身を屈めただけでも風圧を感じる。


【こんにちは、私はグラニット、よろしく】


 とりあえず巨人語でコミュニケーションが取れることに一安心したところで、近くで様子を伺っていたブランチ・ホーキンスと『魔法古物商』の店のメリッサさんが近づいてきて今後の流れの確認になった。


 なにが助かったかというとメリッサさんが巨人語を普通に喋れるという事で一週間ほどは同時通訳をしてくれるという事だった。

 その間にグラニットと私の方の意思疎通がある程度できるように私は巨人語の習得を行わなければならない。

 まぁ、勉強は得意な方だし一月みっちり予習はしてあるので何とかなるとは思う。

 メリッサさんは巨人語を話せるなんてすごい。確かに王立図書館で言語学の棚辺りで見かけたことはあったが、学者志望なのだろうか?


 その後はグラニットには街道建設の現場作業に入ってもらう事になる。一旦今行っている通常の街道建設の作業は中断し、グラニットが作業に合流した時のための準備を他の人員は行う事にする。

 工事進行速度の大幅な上昇が予想されるため、砕石や石灰、砂、玄武岩などの資材の準備がここ一か月で進んでいたが、その資材の配置や管理に人員を割くことになる。

 また、石巨人のグラニットに危険が無い事の付近の村の住民への事前告知や工事現場に近づく者への注意喚起を徹底して行うことなどが話し合われた。


 メリッサさんの顔は久しぶりに見たが相変わらず儚げで大人しい感じである。グラニットと巨人語で話しているときはちょっと明るい感じがするが。


 という事で、それから一週間ほどグラニットとメリッサさん、私の三人で私への巨人語のレクチャーと石巨人の生活様式の講座が始まった。


 まず、グラニットが寝そべり両手を重ねた上に顎を乗せ私たちと高さを合わせる。

 そこからグラニットと私で簡単な挨拶や身の回りの物の名前などをお互いに言い合って、最低限の会話を私が出来ることを確認した後は、それぞれの趣味や好きな事、家族の事などを紹介しあう。難しい単語や言い回しはメリッサさんがフォローしてくれたので会話は捗った。


 驚いたことにグラニットの好きなことはダンス、しかもワルツだそうだ。前にメリッサさんと一度踊ってとても楽しかったと言っていたが、人間と巨人でどうやって踊ったのだろう?聞いてみたがメリッサさんが口に指を当てるとグラニットも大きな体で同じように口に指を当てて大きく口を開けて笑った。


 その仕草と笑い声でなんかこの巨人とは上手くやっていけそうな気がした。



挿絵(By みてみん)


次回は明日、18:00頃に更新いたします。

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