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第5話 働かない俺に弟子志願が殺到する

朝、宿の扉を叩く音で目が覚めた。


嫌な予感しかしない。


「ユウト様、起きていらっしゃいますか……?」


妙に遠慮がちな声だった。


扉を開けると、三人が並んで立っていた。


剣を背負った真面目そうな青年。

眼鏡をかけた落ち着いた雰囲気の女性。

少し背の低い、回復職らしい少女。


三人とも、緊張した顔をしている。


「……何か用ですか」


そう聞いた瞬間、三人は同時に頭を下げた。


「弟子にしてください!」


来た。


「無理です」


即答した。


「俺、教えられること何もないですし」

「というか、本当に何もしてませんし」


顔を上げた三人は、それでも引かなかった。


「俺はレオンです」


剣士が名乗る。


「昨日、あなたを見て……

自分がどれだけ無駄に力んでいたか分かりました」


次に、眼鏡の女性。


「ミリアと申します。

戦闘理論を学んできましたが、あなたの行動は理論外でした」


最後に、回復職の少女。


「フィ、フィアです……

あの……近くにいるだけで、安心できて……」


それは俺のせいじゃない。


「……だから無理です」


もう一度言った。


その瞬間。


==========

スキル《最適放置》が発動しました

状況:弟子志願

最適解:最小限の拒否と距離維持


距離維持、ね。


「弟子にはしない」


三人の肩が落ちる。


「でも」


全員が顔を上げた。


「一緒に戦わない。

指示もしない。

責任も取らない」


間。


「それでもいいなら、勝手にいればいい」


沈黙。


次の瞬間。


「それで十分です!」

「はい、問題ありません」

「……ありがとうございます!」


なぜか、全員ほっとした顔をした。


意味が分からない。


その日から、三人は俺の少し後ろを歩くようになった。


近すぎず、遠すぎず。

俺が止まれば、彼らも止まる。


魔物が現れた時も、俺は何もしない。


だが。


「レオン、前に出すぎ」

「……了解」


ミリアが冷静に指摘し、

フィアが無理のない位置で回復を回す。


結果、戦闘は驚くほど安定した。


==========

スキル《最適放置》が発動しました

状況:簡易パーティ行動

結果:全員の消耗最小

==========


……俺、やっぱりいらなくないか?


夜。


焚き火の前で、フィアがパンを焦がしていた。


「あっ……!」


「……大丈夫」


俺は少しだけ焦げた部分をちぎって食べた。


「食べられる」


フィアは一瞬きょとんとして、

それから小さく笑った。


「……ありがとうございます」


レオンがそれを見て、少し肩の力を抜く。


「ユウトさんって、優しいですね」


「そう見えるなら、勝手にそう思ってくれ」


ミリアが眼鏡を直しながら言った。


「“干渉しない優しさ”ですね」


……深読みしすぎだ。


でも、不思議と否定する気にはならなかった。


布団に入る前。


==========

称号を獲得しました

《無為の導師》

==========


……本当に、いらない。


俺は目を閉じた。


教えない。

導かない。

責任も取らない。


でも。


「近くにいるだけでいい」


それなら――

まあ、悪くない。


今日も俺は、

何もしない。

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