第4話 職業:無職(なのに待遇が貴族級)
翌朝、俺は村長に呼ばれた。
嫌な予感しかしない。
村の集会所には、見慣れない人間が数人いた。
革鎧を着た男、ローブ姿の女性、そして――受付嬢らしき少女。
「ああ、来てくれたか」
村長が深々と頭を下げる。
「この村の件、正式にギルドへ報告が上がってな」
……あ、やっぱり。
「王都の冒険者ギルドから、調査員が来た」
革鎧の男が一歩前に出る。
「俺はギルド調査官のバルドだ」
調査官。
嫌な単語ランキング上位だ。
「まずは形式的な確認をさせてもらう。
君、ギルド登録は?」
「……してません」
「だろうな」
なぜか納得される。
「では、今から登録を」
受付嬢が水晶板を差し出した。
「手を置いてください」
言われるまま、置く。
一瞬、光った。
名前:ユウト
種族:人間
職業:無職
レベル:8
沈黙。
受付嬢が固まった。
「……職業、無職?」
「はい」
即答した。
ざわつく集会所。
「無職で……レベル8?」
「この村の討伐記録、全部一致してるぞ……」
調査官が、額に手を当てる。
「確認するが……
君は、どこの流派にも属していないのか?」
「属してません」
「師匠は?」
「いません」
「訓練は?」
「してません」
頭が痛そうな顔をされた。
「……なるほど」
何がなるほどなんだ。
「通常なら、無職は登録不可だ」
終わった。
「だが」
来た。
「君の場合、実績が異常すぎる」
机に書類を置かれる。
そこには――
ゴブリン襲撃の最小被害解決
オーク討伐(単独関与判定)
村の信頼度上昇
単独関与って何。
「よって、特例措置を取る」
嫌な予感が加速する。
「職業は無職のまま。
だが、特別登録冒険者として扱う」
特別とか、やめてほしい。
「待遇は?」
受付嬢が淡々と告げる。
宿泊費免除
食費一部補助
ギルド施設、自由利用可
……貴族か?
「質問は?」
ある。
山ほどある。
でも一番の質問をした。
「……働かなくてもいいですか」
場が凍った。
調査官は、少し考えてから言った。
「むしろ――」
嫌な間。
「動かないでほしい」
……え?
「君が介入しない方が、結果が良いケースが多い」
公式に言われた。
その瞬間、頭の中に表示が出た。
==========
スキル《最適放置》が発動しました
状況:ギルド登録
結果:最低労働・最大報酬
==========
最低労働。
最高すぎる。
「……分かりました」
俺は、深く考えるのをやめた。
その日の夜。
用意されたのは、村で一番いい部屋だった。
一人用。
静か。
ベッドも柔らかい。
――異世界、怖い。
だが。
現世より、だいぶ優しい。
布団に横になった瞬間。
==========
称号を獲得しました
《特例存在》
==========
……またいらない。
俺は天井を見ながら、ため息をついた。
この世界では。
頑張らない方が、
評価される。
働かない方が、
守られる。
なら――
俺は、このままでいい。




