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第3話 努力家冒険者が俺のせいで折れた件

翌朝、村は少しだけ騒がしかった。


理由は簡単だ。

昨日のゴブリン討伐が、なぜか「俺主導」という話になって広まっていたから。


「森の入口で一人、仁王立ちしてたらしいぞ」

「動かずに敵を誘導したとか」

「タイミングを完璧に読んでたって!」


全部、誤解だ。


俺は朝食のパンをかじりながら、できるだけ目立たないようにしていた。


――関わりたくない。


そう思った矢先。


「お前か」


低い声。


顔を上げると、全身を鍛え上げた青年が立っていた。

年は俺と同じくらい。

剣を背負い、目は真っ直ぐで、いかにも努力型。


「昨日の話を聞いた」


嫌な予感しかしない。


「……何か?」


「本当に、お前一人であの場を制御したのか」


制御なんてしてない。


「いや、たまたまです」


正直に言った。

だが青年は、鼻で笑った。


「謙遜か。

だが、才能があるやつほどそう言う」


あ、駄目だ。

話が通じないタイプだ。


「俺はガルド。

三年、毎日剣を振ってきた」


胸を張って言う。


「才能がすべてだなんて、認めない」


……別にそんな話してない。


「だから、確かめさせてもらう」


ガルドは村の外を指差した。


「俺と一緒に、森の奥へ来い」


いや、行きたくない。


「強いモンスターが出る。

そこで、お前の“本物”を見せてもらう」


完全に死亡イベント。


「俺は……」


断ろうとした、その瞬間。


===========

スキル《最適放置》が発動しました

状況:挑発・実力証明要求

最適解:同行(ただし介入不要)

===========


……最適解、同行なの?


「……分かりました」


俺は、観念してついていくことにした。



森の奥。

空気が重い。


「出てこい!」


ガルドが剣を構えた瞬間、

地面が揺れた。


現れたのは、巨大なオーク。


一目で分かる。

今の俺じゃ絶対勝てない。


「来たか……!」


ガルドは笑った。


「これくらい倒せなきゃ、意味がない!」


突っ込んだ。


剣が弾かれ、体勢が崩れる。


「っ……!」


それでも、立ち上がる。


「努力は、裏切らない……!」


……やめろ。

それ以上、頑張るな。


俺は、何もできなかった。

いや、何もしなかった。


すると。


オークが突然、足を踏み外した。

腐った木の根が崩れ、体勢を崩す。


ガルドの剣が、偶然にも急所を貫いた。


オークは倒れた。


静寂。


ガルドは、剣を落とした。


「……違う」


膝をつく。


「俺は……勝ったはずなのに」


震える声。


「今のは……俺の力じゃない」


俺は、何も言えなかった。


==========

レベルが上がりました

Lv.5 → Lv.8

==========


俺だけが、強くなっている。


「お前は……何者だ」


ガルドが、俺を見た。


答えようがない。


「俺は、ずっと信じてきた……

努力すれば、報われるって……」


拳を握りしめる。


「なのに……」


その目から、光が消えた。


「……もう、いい」


立ち上がり、背を向ける。


「俺は冒険者を辞める」


その背中は、ひどく小さかった。



村に戻ると、噂はさらに膨らんでいた。


「努力家すら心を折った」

「次元が違う」

「関わるべきじゃない存在だ」


やめてくれ。


俺は、ただ思った。


――この世界は、優しくない。

――でも、頑張らない俺には、妙に甘い。


その夜。


==========

称号を獲得しました

《努力破壊者》

==========


……いらない。


俺は布団に潜り込み、天井を見つめた。


絶対に決めた。


この世界で――

誰の努力も、邪魔しない。


だから、俺は、

何もしない。

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