第2話 何もしてないのに初期村を救ってしまった
目を覚ましたら森。
狼は木に頭をぶつけて気絶。
俺はレベル5。
……冷静に考えて意味がわからない。
とりあえず、森を抜けると小さな村があった。
木造の家が並び、畑が広がる、テンプレみたいな初期村だ。
「助けてくれー!!」
いきなり悲鳴。
村の外れから、子どもを抱えた女性が走ってくる。
その後ろから――ゴブリンが三体。
「うわ、無理無理無理」
俺は反射的に立ち止まった。
戦う? 無理。
逃げる? 方向がわからない。
結果、何もしない。
すると、
「そこを動くな!!」
村の門から、冒険者らしき男たちが飛び出してきた。
剣士、魔法使い、弓使い。
いかにもバランス型パーティ。
「数は三! 囲むぞ!」
「魔法は牽制!」
「子どもを先に!」
連携が完璧すぎる。
……え、俺が囮みたいになってない?
ゴブリンたちは俺に気づき、突進してきた。
俺は、やっぱり動かなかった。
いや、正確には――動けなかった。
その瞬間。
弓矢が一本、完璧な角度でゴブリンの足を射抜いた。
つまずいたゴブリン同士がぶつかり、隊列が崩れる。
「今だ!!」
魔法が炸裂。
剣士が一気に距離を詰め、三体をあっという間に制圧。
……終わった。
「無事か!?」
剣士が俺に駆け寄ってくる。
「は、はい……」
声が裏返った。
「見事な判断だった」
「……え?」
「無駄に動かず、敵を引き付ける。
あの状況でそれができる冒険者は少ない」
いや、違う。
怖くて固まってただけだ。
だが周囲は違った。
「確かに、下手に逃げてたら子どもが危なかったな」
「完全に戦況を読んでた」
どんどん話が大きくなる。
女性が子どもを連れて頭を下げてきた。
「ありがとうございます……!
あなたが止まってくれたおかげで……!」
止まっただけなんだけど。
その時、頭の中に表示が出た。
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スキル《最適放置》が発動しました
状況:村襲撃
結果:被害最小・最速解決
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あ、これ……
本当に「何もしない」のが正解だったやつだ。
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村に案内され、簡単な食事をご馳走になる。
パンとスープ。
異世界でも、温かい飯は正義だった。
「名前は?」
「ユウトです」
「やっぱりな」
……何が?
「雰囲気が違うと思ったんだ。
ベテランのそれだ」
完全に誤解されている。
「この村、最近モンスターが増えててな……」
村長が困った顔をする。
「もしよければ、しばらく滞在してもらえないだろうか」
え、嫌です。
喉まで出かかったが、言えなかった。
断ると、逆に面倒なことになりそうだった。
「……考えます」
そう答えた瞬間。
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村「リーフ村」からの信頼度が上昇しました
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信頼度制とかあるのかよ。
その夜、俺は村の簡易宿で寝転がりながら思った。
――異世界、怖い。
――でも、下手に頑張らなければ生きられる。
現世と、真逆だ。
俺は決めた。
この世界では、
絶対に頑張らない。




