第1話 死亡フラグは会議室にあった
「じゃあ、この仕様変更、今から対応できる?」
その一言で、俺の人生は終わった。
金曜の23時。
冷房の効きすぎた会議室。
ホワイトボードには意味のない横文字。
そして上司の、悪意のない無茶振り。
――あ、これ死ぬな。
不思議と確信があった。
次の瞬間、視界が白く弾けた。
胸が締め付けられ、息ができない。
倒れる俺を、誰も見ていなかった。
過労死。
テンプレみたいな最期だ。
⸻
「ようこそ。大変だったね」
目を開けると、そこは真っ白な空間だった。
床も壁も天井もないのに、なぜか立っている。
目の前には、ローブ姿の少女。
神様、だろうか。
「えっと……ここ、どこですか?」
「簡単に言うと、死後の待合室」
待合室で死後を処理するな。
「君は働きすぎ。現世での貢献度は高いけど、寿命はもうゼロ」
淡々と告げられた。
ブラック企業の評価面談みたいだ。
「なので、特典付きで転生してもらいます」
来た。
なろうテンプレ。
「異世界ですか?」
「そう。剣と魔法。モンスター。ステータスあり」
勝ち確演出が続く。
「じゃあ、最強魔法とか?」
「うーん、それは却下」
即否定。
「剣聖?」
「努力が必要だから却下」
「チートスキルは?」
神様は少し考えてから、言った。
「君にはね、“何もしない才能”がある」
……はい?
「正確には、《最適放置》という固有スキル」
嫌な予感しかしない。
「説明すると、君が何もしない時、世界が勝手に最適解を選ぶ」
「意味がわからないんですが」
「大丈夫。向こうで勝手に分かる」
雑。
「あと一つ忠告」
神様は少しだけ真剣な顔になった。
「この世界では、頑張るほど死にやすい」
その言葉を最後に、俺の意識は落ちた。
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目を覚ますと、森の中だった。
頭の中に、見慣れないウィンドウが浮かぶ。
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名前:ユウト
職業:無職
レベル:1
固有スキル:
・最適放置(EX)
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無職。
異世界でも無職。
その瞬間――
「ギャアアアア!」
叫び声とともに、巨大な狼が飛び出してきた。
完全に詰み。
俺は逃げなかった。
いや、逃げなかったというより、動かなかった。
すると――
狼が突然つまずき、木に頭をぶつけて気絶した。
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レベルが上がりました
Lv.1 → Lv.5
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俺は、理解した。
――あ、これ
何もしない方が強いやつだ。




