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その勇者、魔王の家政婦につき  作者: 藤 ゆみ子


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第12話 探し者

 鳥の串焼き美味しかったな。

 でも、魔物の肉の方が旨味が凝縮された感じ深みがあるんだよな。

 はじめに食べたビーツの煮付けも美味しかった。

 ビーツは絶対に買って帰ろう。

 料理酒も欲しいけどあるのかな? ワインならありそう。


 ゆっくり食べたくて、神官たちが来なさそうな場所を探して着いたのがあの広場だった。

 教会と王家は仲が悪いって聞いたから王宮の近くなら神官には会わないだろうと思ってお堀の近くまで行ってみた。

 静かでいい場所だなと思ったけど、あの人はあそこで何をしてたんだろう。


 そにしても、転移魔法って聞いてすごくびっくりしてたな。

 質問攻めにされたし。

 なかなか習得できないとは言われてたけど、古の魔法だとか特別なものだとは思ってなかった。

 でも、魔王城に住んでいて魔王様に魔法を教えてもらったなんて言えるわけない。


 また会えるかって、私に会いたいのだろうか。

 悪い人ではなさそうだけど、またいろいろ聞かれたら面倒だな。

 

 まあ、この広い王都の街でそう何度も会うこともないか。

 気にしないでおこう。


 私は何を買って帰ろうかと考えながら街へ戻った。

 

 野菜や果物が売ってある通りに入り、目星を付けていたビーツを手に取る。

 色も鮮やかで美味しそう。

 あとは葉物野菜も買おうかな。根がついたまま売られてるから再生栽培とかできそう。

 

 買い物をしながら街を回っていると「ちょっと、あんた」と後ろから肩を叩かれた。

 振り返ると、エプロンを付けた恰幅の良い女性がいた。

 前に神官と王子が揉めていると教えてくれた人だ。


「はい、なんでしょう?」

「たぶんだけどね、アンドレア王子があんたのこと探してるよ」

「え? 王子が私を探してる? どうしてでしょうか?」

「どうしてかは知らないんだけど、街に馴染みのない黒髪の女性を探してるって言ってたからあんたのことかと」


 それは本当に私のこと?

 黒髪の女性なんて他にもいっぱいいそうだけど……。

 辺りを見回してみると、黒髪の女性は……いない。

 なんだか、急に自分が目立っているような気がしてきた。

 でも、珍しいだけで他に一人もいないことはないよね?


 仮に王子が探しているのが私だとして、どうして?

 王子なんて会ったことないし。

 神官と揉めてたのと関係あるのかな?

 もしかして召喚に失敗してこの世界にきた異世界人の私を捕えようとしてる?

 それはまずい。

 

「あの、人違いだと思います!」


 買ったものを抱え急いで街を出た。

 丘の上まで駆け上がり、息を整える。


 私を探しているなんて。もう気軽に買い物に行けないな。でも買い物ができないと困る。

 

 そうだ、魔王様は仲間が姿を偽って街に行っていたって言ってたよな。

 私も変装とかしたら大丈夫かな。

 姿を変える魔法とかあるのだろうか。

 帰ったら聞いてみよう。


 周りに人がいないことを確認し、転移魔法で魔王城へと帰った。


「ただいま戻りましたー」


 お城の庭に戻ると、ちょうど魔王様がいた。

 

「遅かったな」

「いろいろ見て回ったり、食べたりしていたので」


 返事をするも、魔王様はじっと私を見ている。

 少しゆっくりし過ぎてしまっただろうか。

 早く帰った方が良かったかな。


「変なものがまとわり付いているぞ」

「え? 変なもの?」


 まとわり付いているって、蜘蛛の巣とかなにか?

 自分の体を見るけれど、特になにも付いていない。

 すると魔王様は私の額に手をかざした。

 何かが弾けるような感覚がして、魔王様は手を下ろす。

 

「取れた。もう大丈夫だ」

「あ、りがとうございます?」

 

 おでこに何か付いてたのか。

 虫だったら嫌だな。なかったことにしよう。


 それよりも、気になることがある。


「魔王様、その後ろに倒れているのはなんですか?」

「魔物だ。最近魔力がある程度回復してきたから力試しだ」


 力試し? 私が街へ行っている間に一人で倒してきたってことだよね?

 ある程度って言うけど、大きな魔物が五体も転がってますよ?


「まだ完全には戻ってないんですか?」

「四分の一程度だな。だが、これまでと比べ驚異的な早さで回復している」


 まだ四分の一なんだ。完全に回復したらどれだけ強くなるんだろう。


「料理に使うなら、処理しておくぞ」

「では……お願いします」


 こんな量は食べきれないと思うけどね。

 やっぱり、お肉は買わないで良かった。



 ◇ ◇ ◇



 追跡魔法が解除された?!


 会議中、意識半分にユリの居場所を追っていた。

 しばらく街で買い物をした後、はじめに出会った丘の上まで行き、転移魔法を使ったようだった。

 短時間で長距離を移動したため場所の特定に時間がかかっていたら、その間に彼女にかけた魔法が消えてしまった。

 魔法をかけたことは気づいていなかったはず。

 それに、魔法についてほとんど知識のない彼女が解除魔法を使えるだろうか。

 解除したのは転移魔法を教えたという人物か?


 結局、どこから来ているのかはわからなかった。

 次に街に来るタイミングも知ることができない。

 また、振り出しに戻ったか……。

 

「アンドレア王子、聞いていますか?」

「ああ。カルトル国がこちらに攻めいる準備をしているのだろう」


 百年に一度、我が国の北の森に棲む魔王が復活する。

 魔王討伐に戦力が取られるこの時期を狙って国に攻め入ろうとする他国が現れるのは歴史上でも珍しくはない。


「勇者の召喚もまだ、魔王討伐に加えカルトルとの戦になれば……」

「対抗措置は考えている。魔王復活まではまだ時間がある。まずはカルトルとの戦いに向けて対策を取る」


 本当なら戦にはせず穏便に解決したい。

 だが、話し合いで納得するような相手ではないだろう。

 軍事国家であり、長年武力で統率してきた国であるが、それも限界がある。

 干ばつ地帯が多く、農作物が育ちにくいカルトル国は自然豊かな我が国を領土にする機会を虎視眈々と狙っていた。

 今がそのタイミングということ。

 

 他国から仕掛けられることは予想の範囲内ではあった。

 だが魔王討伐に勇者がいないとなれば話が変わってくる。

 魔王が完全に復活する前に、できるだけ早く討伐に向かいたい。


 でも、カルトルは準備が整えばすぐにでも攻め入ってくるだろう。

 やはり目の前の戦を終わらせることが先。


 戦の後の魔王討伐に備える上でも、どうしてもユリの力が必要だ――。

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