全の勇者
久しぶりの投稿です。
目の前には水晶玉のようなものがあり、それには全の勇者という文字が浮かんでいる。
全の勇者とは最弱勇者の1つとして知られている勇者なのだが、どうやら俺ことヨミはその全の勇者になってしまったらしい。
せっかく転生をしたというのに神様はどうやら俺のことが嫌いらしい。これからどうしていこうか。
◇
正直言って転生する前の俺の人生というのはあまりにも酷すぎた。
小中高ではいじめられていたし、最初に勤めたブラック企業から転職することもなく、底辺役職からの脱却すらできないどころか、どこの馬の骨とも知らないやつに妻を寝取られた。こんなのまだまだ序ノ口だよ。もっとやばいことだってあったよ。それこそ言えないようなこととかね。
そんな人生を送ってきた俺は、それまでの疲れのせいか、家の中で一人さみしくぽっくりと逝ってしまった。
そうして気がつくと俺は赤ん坊になっていた。唯一の俺の癒しであった異世界系のラノベの知識というものがあったからか、これがすぐに転生だということに気がついた。
魔法やらなんやらが存在するそんな異世界だった。
そしてこの異世界のいい点として挙げられるのが勇者制度というものだ。
この異世界には1000人に1人の確率で勇者が産まれるらしい。勇者というのは一般人とはかけ離れた超常的な力を持ち、世界を安寧へと導くという役割を担っている。しかも、勇者にはランキングというものがあり、高ければ高いほど受けられる恩恵というのも高くなっていく。
俺はそんな勇者に憧れた。それにこういう系の異世界転生というのはだいたいチート能力というのを持っている。だから自分が勇者であるという確信があった。
勇者になるためには15歳の成人になったら受けれる勇者の儀というもので選ばれたもののみが勇者になれる。
それを知ったのが5歳の時だったのでとても15歳というのが待ち遠しかった。
そしてついに俺は15歳になった。
なった次の日には勇者の儀が開かれる王都ディズムへと向かった。
それからは早かった。
そうして、現在に至るわけである。
全の勇者。どうやら俺は最弱候補の1つである全の勇者になってしまったらしい。
しかし、考えてみてほしい。全部の能力を使えるということが弱いわけがないのだ。
これは所謂チャンスというやつなのではないだろうか? 最弱として知られているこの全の勇者で無双をしたら、成り上がりってやつになるんじゃないのか? これはいいぞ。これこそ異世界って感じの展開だぞ。
男なら一度は憧れるハーレムっていうのも可能な気がしてきたぞ。
ガハハ買ったな風呂入ってくる。風呂なんてないけどね。ハハハ…。
「全の勇者ヨミよ。この世界の安寧のためそなたの活躍が必要である。頑張ってくれよ」
目の前にいる神官がそう言う。
「はい、ありがとうございます。精いっぱい頑張ります」
そう答えたあとに神官に謎の穴の開いたプレートを渡される。
「これは勇者というのを表すプレートである。絶対に失くすでないぞ。そうしてこれを使えば勇者ランキングを見ることができる。そなたは勇者になったばかりであり最下位ではあるが頑張ってくれ。それでは全の勇者ヨミよそなたの健闘を祈っているぞ」
そう言われた俺はその場をあとにする。
勇者になったのはいいけれどどうしたものか? あの神官さんに聞いとけばよかったな。
でも今更後悔しても遅いよな。本当にどうしよう。
こういう時こそ前世の異世界のラノベの知識を使うべきだろう。
最初に行くべきはあそこだ。転生したら誰もが向かうであろう冒険者ギルド。とりあえずそこへ向かってみよう。
ん? そういえば家のことはどうしたのかって? そりゃあ成人したんだから独り立ちだよ。実家に帰ることはほとんどないだろうね。俺はこの王都ディズムを拠点に活動していきたいと思っている。
そうこうしているうちに俺は冒険者ギルドについた。ついたんだが、さすがは王都というべきか、冒険者ギルドがめちゃくちゃでかい。俺が住んでたのは本当に小さな村だったからこのでかい建物が新鮮に感じる。
いざ、中へ!!
そうして中へ入ると受付嬢やら他の冒険者やらがたくさんいる。
首にあの謎のプレートをぶら下げている人がいる。あの人は絶対勇者だな。ていうかあの穴ってぶら下げる用の穴だったんだ。また新たな発見をしたな。
とある受付嬢のところへと向かう。
「新規登録ですか? 」
「はい、新規登録です」
「わかりました。銅貨2枚ともし、お持ちでしたら勇者のプレートの提出をお願いします」
銅貨2枚か、俺が持ってきたお金は銀貨25枚と銅貨20枚。ちなみにこの世界のお金というのは銅貨100枚で銀貨1枚。銀貨100枚で金貨1枚となかなかに金貨のレートが高いのだ。
勇者になったので、そんな金貨と対面するのもそう遠くないだろう。
昔から金にがめついわけではないけれど、楽しみで仕方がない。
そんな事を考えつつも銅貨2枚と勇者のプレートを提出する。
「勇者様でございますね。勇者様は登録の際に当ギルドでは受注料の免除を行なっております。これはどのギルドも共通なんですが、勇者様は開始のランクがGからではなくEから始めさせていただきます」
え? 受注料? 危ない危ない勇者じゃなかったら取られるところだったのか、勇者でよかった。それにランクがEからだって? これはいいぞ。
「わかりました」
「それではコチラをお返しいたしますね。冒険ギルドの説明は受けていかれますか? 」
そんなものもちろんYESだ。
「受けます」
「はい、それでは冒険者ギルドについて説明させていただきますね。まず、冒険者ギルドというのはですね、様々な依頼が置いてあります。それらを受けていってお金を稼いだりだとか、名声を高めたりだとかを行います。そんな名声に関わることなんですけど、冒険者にはランクがありますGからSSSまでの幅広いランクとなっております。勇者様は特別にEランクからの開始となっております。ここまでで不明な点などはありませんか? 」
「ありません」
「最後にですね、当ギルドでは、依頼の失敗や怪我などをされた際にですね一切の責任を負いませんのでそこは気をつけてくださいね。それでは新たな勇者様のご活躍を祈っております」
受付嬢はそう言うと笑顔で見送ってくれた。
さてと、説明も受け終えて早速依頼をと言いたいところだが武器も何も無い。まずは武器屋からだな。そうと決まれば武器屋へ向かおう。




