狂戦士(バーサーカー)
少しグロテスクな表現があります。
苦手な方は注意してください。
「ハハハハハッ!」
「何が面白い?」
激しく降る雨の中、二人の男が会話をしている。
一人はボロボロの服に無造作な長い髪をしていて、地面に倒れている。
もう一人は警官のようで、それを見つめている。
手には拳銃を握りしめて。
倒れている男は、腹から血を流していた。
「お前は死ぬんだぞ?怖くはないのか?」
「怖い?そんなわけないだろ。今まで数え切れないほど人を殺してきたが、自分が殺されるのは初めてだ!ワクワクするだろ、初めてってやつは?」
「狂ってやがる」
警察らしき男は、化け物を見るかのように男を睨んだ。
「ああ、意識が遠のいてきた。これが死か。不思議な感覚だ」
次第に、男は目を閉じていった。
そして、二度と目を開けることはなかった・・・、
この世界では。
「初めまして、武田剛。私は女神アパテイア。あなたを異世界に転生させます」
「?」
男が目を覚ますと、目の前に女性がいた。
綺麗な顔立ちをしている。
でも、感情は感じられない。
「異世界だぁ?俺は死んでないのか?」
「あなたは死にました。なので別の世界に生まれ変わらせるのです」
「何?生まれ変わる?それは、記憶を失うのか?」
「いいえ、失いません」
男は笑みを浮かべた。
「それはいいな。何か理由があるんだろうが、俺には関係ない。あんなには感謝するぜ」
「それでは、望みを聞きましょう。あなたの求める力を一つ授けます」
「力?そんなのは要らねぇ。人を殺せれば、それでいい」
「今のあなたでは、異世界の住人には敵いません」
男は女神の言葉に反応した。
「敵わない?なぜだ?」
「異世界には地球に存在しない様々な『力』があります。それはあなたの想像以上のものです」
男は考えた。
何を望むべきか。
異世界でも人を殺すにはどんな力がいいのか。
「それじゃあ、女神さん。言わせてもらうぜ。俺の望む力は―」
「最強の肉体だ!」
「了解しました。あなたに最強の肉体の授けます。それでは、良い人生を」
女神がそう言うと、空間が歪み始めた。
そして、男の意識も朦朧とし出した。
「次に目を覚ましたとき、あなたの新たな人生が始まります」
この言葉を最後に、男は気を失い、女神と空間は消えていった。
・・・。
そうか、全部思い出したぞ。
俺がこの世界に転生して15年が経った。
今まで前世の記憶が曖昧だったが、ついに全部を思い出した。
今の俺の名はバン。
孤児院で育ち、一人立ちをしてからは冒険者をしている。
女神から授かった力のおかげで、稼業は上手くいっていた。
でも、この力のことは誰にも話していない。
記憶がはっきりするまでは目立たないようにしていたからだ。
そして、それは正解だった。
記憶が目覚めた今、やることは一つだ。
人を殺す。
しかも、大量に、だ。
この肉体は素晴らしい。
最強という名に相応しい力を有している。
今まで色々な化け物と戦ってきた。
この世界には魔獣と呼ばれる怪物がいる。
地球じゃあ見ることのない生物だ。
そして、人間も色々な力を使う。
魔法とか呪術とか、色々だ。
あれは前世の俺だったら瞬殺だったな。
でも、この肉体には敵わない。
世界最強と恐れられる魔獣がいる。
通称、覇王だ。
そいつは世界に数体しか存在しないドラゴンの一体で、ドラゴンの中でも圧倒的な力を持っている。
俺はそいつに勝負を挑んだ。
今まで誰も覇王に傷をつけた者はいない。
奴は人間と生物としての格が違うのだ。
例えるなら、イワシとサメだ。
そこには絶対的な上下関係がある。
でも、俺は圧勝してしまった。
いや、勝負にもならなかった。
覇王の攻撃は大地に亀裂を入れ、その鱗はどんな武器も通さない。
だが、俺の拳は奴の腹を貫通し、生まれながらの筋肉は奴の鋭い爪をも防いだ。
俺こそが食物連鎖の頂点だったわけだ。
俺は、この世界の最強ですら勝てない存在なのだ。
というわけで、記憶を完全に取り戻した俺は、自らの欲を満たすことにした。
乾ききった喉を人間の血で潤すのだ。
「や、やめ・・・」
ブシュッ
目の前にいた男の首から血飛沫が飛び散る。
俺の顔はすでに真っ赤に染められている。
俺は手始めに町から離れた所にある村を襲った。
特に理由があったわけではない。
メインディッシュ(町)は最後に残しておきたいタイプなんだ。
料理と同じように。
村を襲う時、俺は正面の入り口から堂々と入った。
まぁ、警備をしていた村人に止められたが。
え?その村人をどうしたかって?
それはもちろん、丁寧に弔ってあげたさ。
誰も気づかないくらい静かにね。
それで俺は村に入った。
だが、すぐに村の奴らは俺に武器を向けてきた。
俺の身体は返り血で染まっていたからな。
これでは静かに門番を殺した意味がないと思われるかもしれない。
だが、俺の考えを聞いてほしい。
意味が必要なのか?食事をするのに。
どんな料理をしようが、それはその日の気分次第だろ?
それと同じだよ。
俺は門番を静かに殺したい気分だった。
それだけだ。
俺の殺しに計画はない。
ただただ自由気ままに殺るだけだ。
そこからは殺戮パーティの開幕だった。
最初のうちは臆せずに俺に向かってくる連中だったが、数人の首を一発で跳ね飛ばすと、怖気づいて攻撃をしなくなった。
中には逃げ出す者もいた。
この根性なしが。
仕方ないので、俺のほうから特別に声をかけてあげた。
「この村の女と子供を差し出したら、殺さないであげよう」
人間というのは単純な生き物だ。
この一言で目を真赤にして自ら死地に突っ込むのだから。
俺は高笑いをしながら、向かってくる男どもを肉塊に変えた。
それが終わると、家に隠れてる連中を外に引っ張り出して、声が枯れるまで泣き叫ばせてから殺した。
それは実に有意義な時間であった。
特に楽しかったのは、髪の長い女だった。
髪を掴んで振り回していたら、いつの間にか足が破裂していた。
それでも気にせず振り回したら、髪が全部抜けて吹っ飛んでいった。
まぁ、すでに死んでいたんだが。
今まであんな量の髪を引っこ抜いたことがなかったから、とても気持ち良い感覚に胸が高鳴った。
またやろうかな。
そんなこともありつつ、日が暮れる頃には村人全員が死んでいた。
俺は再び町に戻ることにした。
もし目撃者がいれば俺は捕まることになるが、そんなことはどうでもいい。
なぜなら――
人間はただの餌だから。
色々な作品を連載したい欲がありつつ、そんな余裕がないので、短編をどんどん書いています。
本当はこの作品も最後まで書いてみたいです。
最後まで読んでくださりありがとうございます。