3話 遭遇
川沿いを歩いてしばらくして、ついに出会った、知能のある生命体
出会ったは良いんだけど…
犬(?)
「…あれ、えのき様?」
たぶん、犬なんだろうな。川で水を飲んでるところを見つけた
うん、犬だろこれ
犬(?)
「え!えのき様じゃないですか!!」
二足歩行だし、ムキムキだし、指は5本だし、手ですくって水飲んでたけど。
なんか様付けで呼んでくるけど、他の特徴は犬だし、犬でいいよな
犬(?)
「え〜!!俺初めて見ました!!実在するんですね!!!」
めっちゃ話しかけてくるな。この第一村人。いや第一犬
でもすまんけど、俺話せねえんだ。
犬(?)
「あ!もしかしてまだ生まれたてなんですかね?」
よくわかったな、その通りだ。かさで頷いてみた
犬(?)
「わかりました!イヌのカケラはこちらです、ついてきてください」
良いやつそうだし、まあついていっても大丈夫だろ。それに色々知ってそうだ。
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数分歩いて、少し広まった場所に着いた。石の地面が六角形に凹んでいて、中心部に台座のようなものがある
犬(?)
「あれっす!どうぞ!」
行ってこいって事なんだろうな。で、あの台座になにかあるんだろうな。
なんか神々しい感じもするし、ワクワクしてきたぞ
中心部の台座に近づいて、茶色い六角形の物体が埋め込まれていることに気づいた。
”なんだこれ…?“
犬(?)
「それがイヌのカケラですね。えのき様に役立つ力が秘められているらしいです!」
“え?返事した?”
犬(?)
「はい!気になっている様子だったので!」
“なんか喋れるようになってる!!??“
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犬(?)はどうやらイヌのカケラを代々守ってきた一族らしい。で、犬に聞いた話によると
・世界の危機が近づくと、えのき様が助けに現れる
・カケラはえのき様が力を取り戻すために必要なので、えのき様が現れるまで守り続ける必要がある
・カケラは世界各地に散らばっており、それぞれその土地の者が管理している
犬(?)
「イヌのカケラからは喋る能力が得られたみたいですね。最初が自分のところでよかったです」
”そういう背景があって、あの初対面の反応だったわけなのね”
犬(?)
「そうですよ!ほんとにびっくりしたんですからね!!まさかサウナ帰りに出くわすだなんて思わないじゃないですか!」
”ん?今サウナっていった?“
犬(?)
「あ、そっか生まれたてなんですもんね。サウナっていうのは…」
”いやサウナは知ってるんだけど、え、あるの?サウナ。“
犬(?)
「?はい。」
”案内してくれ“
犬(?)
「え、でも」
”お願いします。案内してください。この通りです”
犬(?)
「うわ折れた!折れすぎてもはや畳まれてる!」
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そうして元来た道を戻り、さらに川下の方へ向かった先に、イヌの里はあった。
茅葺き屋根の民家のようなものが立ち並んでおり、しばしば八百屋や服屋のようなものも見られる。里を囲うようなものは特にないが、大きな崖っぷちに家が立ち並んでおり、下には滝壺が見えている。
犬(?)
「ここが自分の住んでる里です。右の崖沿いに進んでいくと銭湯があるので、えのき様は先に向かっていてください。自分はえのき様のことを父に報告してきます!」
“おう!じゃまたな”
犬(?)
「落ちたら死ぬので気をつけてくださいね〜!」
犬は軽いテンションでとんでもないことを口走りながら、足早に去っていった。
にしてもほんとすごい場所に住んでるもんだな…。子どもとか落ちたら大変なことになるんじゃないか?
まあ一旦今はいい。とにかくサウナだ。
そう何を隠そう俺は、前世で相当のサウナマニアであった。マイサウナマットとサウナハットを携え、週4で色々なサウナで整っていた。
そして今、数日風呂キャンで過ごしていたところにサウナが舞い込んだのだ。もう整わないと気が済まない。
サウナ欲が限界に達した俺は、今出せる限界の速さ(といっても自転車くらい)でサウナに向かって突き進むのであった。