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楽しい時間はいつだって足早に過ぎていく。
君は大人ではあるけれど病気を抱えている。
暗くなる前に家まで送らないと、両親が心配するだろう。
早めに家まで送ると約束して、次の目的地のカラオケ店に向かった。
そのとき、早くも次に会う約束というかお願いもしていた。
カラオケ店では楽しさなんかそっちのけで、お互いに思いの丈をすべてぶつけるように交代で熱唱した。
今思い出すと確かに楽しかったのだけれど、何故か哀しく思えてならない。
君の病気を理解せず、僕の身勝手を押しつけてしまったこの恋は、気ままに通過していった大型台風のようだった。
過ぎ去ったあとの心の想いは、清々しくすべてを洗い流していたのだから。
何度か会って過ごした大切な君との日々は、破ることが出来ずに最後まで残った一枚の写真を破ったことで終わってしまった。
今でも元気に生きていてほしいと願っている。
君と出会った福祉施設は僕には噂という人生を変えてしまうほどの深い痕跡を残した場所でもあったが、君との日々がきっと僕を輝かせてくれるに違いない。
たったひとつ輝くのは君と出会えたこと、ともに過ごせたこと。
あれからの季節。
君が君らしく生きていけたなら、僕との出会いも意味があったのだという気がする。
僕も強くなった。
優しさも限りを知らないほどになった。
生きている自分から生かされている自分へと成長した。
今僕が君と再会できるなら、再会までの月日よりも未来について語りたい。
今も僕の心のなかで、君は[あの日の君]のままだ。
[あの日の僕]は形を変えたかもしれないけれど、すべての記憶は手で触れることができるくらい鮮明に、今も僕のなかに息づいている。
伝えたい想いはもう多くの言葉を必要としない。
今も幸せに生きていてくれたなら、同じ空の下で笑って生きていけるだろう。
この胸に残る大切な恋を描きながら。