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僕は運が良かった。
たまたまか、調子のいい僕ならではか、神様から三度目のプレゼント。
デートのシナリオに必要不可欠な条件ーーー快晴。
その日は本当に気持ちのいい天気だった。
君の家に電話をすると親が出た。
少し緊張して固くなってしまったが、すぐに代わってくれてから君の声が聞こえた。
その明るい可愛い声に吸い込まれそうな気持ちで、ハンドル片手に電話をしながら君のもとへ走った。
ラフな格好と無邪気な笑顔の君が助手席に座った。
可愛い君を乗せて街を走れる僕は、世界一の幸せ者だと思った。
最初のデートは誰だってそうだろう。
すべてが満たされた気持ちってこういう精神状態なんだろうと、結構冷静に受け止められた。
どこに行きたいって聞いたら、君の答えは『どこでもいいよ』
そんな返答も予測してシナリオを決めていた僕は少しも慌てず、目的地の動物園に向けてハンドルを切った。
およそ一時間半の道のり。
会話が途切れて気まずくなってはいけないと思い、流行の曲を詰め込んだカセットテープをたくさん積んでおいた。
カセットテープにダビングされたミュージシャンの曲たちは、主役を引き立たせる名脇役を見事にこなしてくれた。
僕らの会話は車内に流れるメロディーに乗って弾みをつけ、あっという間に動物園に到着した。
背の小さい君。
それは病気の影響からくる発育障害。
何も知らない周囲の人たち。
なかには『小学生じゃないの?』とでも言いたげな、無遠慮で奇異な目を向けてくる人も居た。
僕らを違和感なく見ていたのは青空と動物たちだけに思えた。
でも僕は気にならなかった。
とびっきり最高に可愛い君と肩を並べて、同じ歩幅で歩けるのだから。