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桜の咲き乱れる季節が、僕の働く場所をとても鮮やかに優しく包んでくれていた。

福祉施設で働いていた僕は、まだ入社して数ヵ月の新人介助員だった。


この老人ホームで思いやりという武器を引っさげて日々悪戦苦闘しながらも、ここで暮らすお年寄りたちに介助員という立場を超えて、一人の人間として平等に接していた。


ある日、未来の寮母さんを目指す実習生たちが、卒業を目前に控え、研修の一貫として実際の現場を学びに訪れた。

そんなにぎやかさとは別に、君はひとり途中採用の実技面接のために、僕の働く職場にやってきた。


背は小さいけれど飛びっきりの可愛らしさが、とても印象的だった。

まるでヘビー級チャンピオンのストレートを手加減なしに喰らったような、死なずにすんだのが奇跡なほどの衝撃を、僕は胸に味わった。


そんな細く小さな身体で寝たきりのおばあちゃんを車椅子に乗せてあげられるの?

君よりかなり大きなおじいちゃんを入浴介助してあげられるの?

ここで生活する老人たちより君のことが心配になった。


特別な苗字と素晴らしい名前。

たった一日の実技試験で、君は稀な難病を持病として抱えていたことが理由で採用にはならなかった。

でも僕のハートは君の姿やその仕草、その笑顔に一目惚れってやつだった。


どうしても君に会いたくなった。

そんな僕の気持ちに神様からのプレゼントが、天使の翼みたいにふわりと降りてきた。

実技面接の日、僕はタイムカードを押す君を、偶然じゃなく、君の名前を知りたいという思いでそっとあとから見ていた。


電話帳を広げて片っ端から探した。

誰も知らない君への想い。君さえ知らない僕の想い。


なんだかんだで福祉施設を退職することになった僕は、プータローの日々の最中、車で君の家を探した。

思いきって四件目。

君にたどり着いた。

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