叫ぶような雨の音
『いつからだろうか?』
雨の降る音だけがよく響いていた夜に、、、そう、、聞こえた気がした。
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大量のゴミ袋と、中途半端にビール缶の中身が入ったもの、丸まったティッシュが悪臭を放つような暗い部屋、そんな一言でいえば”汚部屋”と称されるであろうここが自分の人生の最終地点となると、そう感じずにはいられない日々が続いた。親の言い争う声はだんだんと大きくなり、妹との距離はもう広げることのできないほどに薄くなり、社会復帰への道のりは時間とともにその距離が長く感じられるようになり、ついにそのゴールが見えることはかなわなかった。
とうとう親の叫び声が聞こえることはなくなったころの事だった。
その日はなぜか叫んでいるのか、嘆いているのか、とも感じられるかのような、、そんな印象深い雨の音が逆に辺りを静寂へと変えていたのを今も鮮明に思い出せる。俺はいつものようにネトゲ(主にファンタジーアクションなど)にのめり込み、時間を忘れて垢の目立つパソコンをカタカタさせていた。
「お~い、、夕飯忘れてるぞ~~BBA~~~!!!」
しばらく返答がなかった後、もう一度叫んだら母は”は~い”と弱弱しい声で返事をして俺の部屋がある二階に上がってノックをした。
「あのねぇ、、大事な話があるの、、、」
「うるさい!もうその話は聞き飽きたからやめろ」
母は部屋のドアノブに手を置いていたようだがそれを離し、その後に食器を置く音が聞こえた。その音は雨の中、よく響いていたような気もする。
「でもね、今日の話はどうしても、」
その言葉を遮り”〇ね”と言った後、、母の気配が遠くに行ってしまうことを感じた。
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朝、空腹から目を覚ますとドアの前に置いてあるであろう朝食を取ろうとドアを開けた。
目の前には片付けられていない昨日の晩飯が置いてあるだけだった。
「お~い!ちゃんとしろよ~!早くこの皿片づけて朝食だせよ~~、、、」
返事はなかった。その後も二、三回ほど声をかけたが、、やはり返事はない。
ただ、一階に降りるのがめんどくさくなった俺はゲームで空腹を紛らわせることにした。
前に聞いたことがある。引きこもりの子供が部屋から出たがらなかった時に、ある心理カウンセラーは親御さんにご飯を出すことをやめさせたという。するとどうだろう、意地でも出ようとしたがらなかったその子供は案外あっさり出てきたという。兵糧攻めにはなすすべもなかったってとこだろうか。
”BBAがその気なら意地でも出てやるか”
———そう思った。
しかしながら、意思が固かったのならこんなところで引きこもりなんてしてるわけもない。
結局昼になってからさらに押し寄せてくる空腹に耐えきれず、俺は苦渋の決断の末、一階に降りることにした。
「お~い、、、まじで誰もいないのか?」
階段を降りることすら久しぶり過ぎて、ゆっくり降りる事しかできなかった。それは実際にだったのか、ただただ俺がそう感じただけなのかは分からない。ただ妙に、、階段を降りる時間が長く感じられた。
無事階段を降りて、右に見えるリビングのドアをゆっくりと開けた。
リビングでは、両親が首を吊った姿が、、ただそこにあるだけだった。




