表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

過去に戻りたい男

作者: 麒凛

過去に戻りたいと願う家庭持ちの男の前に神様が現れて、、。





読み手からの初投稿です。

書く前に勉強するべきなのですが、

やる前に折れてしまいそうなので勢いだけで。


豆腐メンタルには勢い、とてもダイジ。



「ただいま」


後ろ手に鍵を掛けながら呟く。時刻は23時30分を少し回ったところだ。

妻から22時30分頃におやすみのLINEが来ていたから今は夢の中だろう。

出来るだけ物音を立てない様にするのも慣れたもので、シャワーを済ましリビングへと向かう。


食卓には夕食と共に

[お仕事お疲れさま。いつもありがとうね。ゆっくり噛んでたべてね(^-^)]

妻からの手書きのメッセージと

[パパだいすき!つぎのおやすみのときおでかけしようね♡]

愛娘からの覚えたての拙い文字で書かれたメッセージが置いてある。


温めるのも面倒で冷めたままの夕食を食べながらふと思う。

(幸せ・・・なんだろうな、愛する妻がいて娘がいて、多少の旅行が出来るくらいの仕事があって、

ローンはまだまだ残っているけど帰る家があって)


(それでも時々、違う人生を歩んでいたらって考えてしまうのは不謹慎なんだろうか)


(今過去に戻れたらどうしようかと考えてしまう俺は父親として最低なんだろうか)


(妻も娘も重荷でもなんでもないし、ましてや居なくなってしまっても良いなんて

これっぽっちも思っていない)


(だけど、こうやって考える事自体が、既に重荷に感じているからなのだろうか)

(ダメだダメだ、この感じやとネガティブモードになってしまう)


「よしっ、さっと洗い物して寝るかぁ」

思考を切り替えるよう呟き、流しに向かうために立ち上がる。


(過去に戻るとしたら宝くじの当選番号とか覚えておきたいよなぁ)


と、そこで異変に気付く。動けない。

立ち上がりきる直前の体勢のまま身体が硬直している。視界は定まったままで、声も出せない状態。

視界の先にある流し台の蛇口から落ちる水滴が、不自然なまま空中に止まっているのが見える。


(えっ?何これ?か、金縛り・・?どうすればいい?)

(そもそもコレ全部止まってない?なのに考えれるってことは・・・)

(いや全然わからない、白昼夢?そもそも白昼夢ってどんな意味だっけ・・?

夜には使わないんだっけ?)

(とにかく動けない・・朝まで??おいおい・・このまま寝る感じ?)


こんな状況なのに何故か叫んだりしない自分がいる。

(いや思考内で叫ぶもなにもないか)

(とにかく起きてくれるのを待つしかないのか)




『少し、いいかの?』


なんの前触れもなく唐突に声が聞こえたかと思ったら、

目の前にどこかの魔法学校の校長のような老人がいる。

さっきまで流し台が見えていたし、なんなら瞬きもしていない。

なのに違和感も無い。初めからそこに居たような感じで老人が口を開く。


『まずは言わせてもらう!うるさいんじゃっ!とにかく貴様はうるさいんじゃっ!』

校長が何の事を言ってるか全くわからないし、なんなら校長の方がうるさい気もするが、

こちらは話すことも動くことも出来ない。

普通ならパニックになりそうなのに、冷静な自分がいる。

(これはアレか、怒ってる人を見たら逆に冷静になるってやつ?)

(動けないし話せないのから逆に冷静になるのだろうか?)

(しかし何かおかしい、いや、やはりというかそもそもよくわからないが、とにかくおかしい)

(おかしいことに間違いはないな)

(だっておかしいもんな)

(夢・・が一番しっくりくる、夢だと気付く夢もたまにあるみたいだし、

なんなら目が覚め『だからうるさいと言うとるんじゃっ!少しは黙るんじゃっ!』

『ええか?そのままで聞くがよい』

『たまにじゃと?たまに考えてしまうじゃと!?』

『毎日毎日毎日毎日とにかく毎日毎日過去に過去に過去にっ!』

『過去に戻りたいばっかりじゃないか!!』

『ふとした瞬間?貴様はふとした瞬間がどれだけあるのじゃ?』

校長はイライラした様子だったが、長いため息をつき少し落ち着きを見せ、

『とにかくじゃ、その事で今日儂がここに来たんじゃ』

『まずは硬直を解くから大人しくしておくのじゃ』


校長が何かを呟くと硬直が解ける。別に凝り固まっていたわけではないが、

何となく身体を伸ばす。こんな状況なのに何となくだが落ち着いている自分がいる。

俺はこんなに動じない奴だったのか。

それともキャパオーバーからのショートしてからのフリーズしてからのフリーザーの兄はクーラーとか安直だよな。だけどしんぷるでわかりやすいよな。

頭が働いていないせいかフワフワする気もする。というか夢・・・・にしては

リアルな感じもする・・・

「まず1つだけ質問を、あなたは誰ですか?周りが停止しているのは

時間が止まっているからですか?それとも世界を停止させているのですか?

ん?世界を停止ってどういう事?えっとそもそも何が起こっているのですか?

それであなたは一体誰なんですか?そもそもどうやって入ったんですか?ここ11階ですよ?それにこれは夢ですよね?

えっと家の鍵は閉まってたハ『ストップ!ストップじゃっ!!』


校長は両手をこちらへ突き出しながらアワアワしている。

さっきはイライラしてた感じなのに、情緒は大丈夫か?

『落ち着くのじゃ、今から説明するから質問はあとにせい、口を挟むでないぞ』


校長が両手を軽く上下させながらまるでできの悪い生徒に説明するかの様に語り出す。

俺は落ち着いているぞ?


『まず儂じゃが人間で言うところの神にあたる存在じゃ、まぁその認識でよい』

『そして時間や世界を停止しているわけではない、このリビングの空間だけを限定し時間を限りなく延ばしているのじゃ!貴様にわかるように言えばスーパースローモーションじゃな、現実ではまだ1秒も経っておらぬ』

『じゃがそれじゃとこの限定的に加速された空間で動いてしまうと人間には耐えられぬ、そこでこの限定的な空間の中でさらに限定的に貴様の身体を加速した時間のと同じだけ減速させておる』

『でなければ今ごろ限定的に加速された空間の力によって過負荷で爆散しておるのでな』

校長はまるで絵に描いたようなドヤ顔だ。妙に鼻につく感じの半笑いのドヤ顔だ。

(限定限定って逆に全く意味がわからねぇ。期間限定かっての!限定限定うるさいんだよ、それ言いたいだけだろ?それで結局なにしに来たんだこいつ)

『あと考えている事はダダ漏れじゃからな』

「あっなんかすみません」

なんとなくヤバそうな感じがしたからすぐに謝っておく。

これが大人の処世術ってやつだな。

『貴様のドヤ顔も大概じゃがまぁ良い、そもそも今日は何しに来たのかじゃったな』

『答えは簡単じゃ!そう・・・貴様を過去に戻してやろう』

校長が軽いノリとさっきの半笑いドヤ顔でそんなことを言う。

なにそれ自分の中で流行ってんの?


「えっ?はっ?え?過去に・・過去に戻れる!?俺が!?えっ?なんで?」

『なんでとはなんじゃ?貴様が戻りたいと願ったのじゃろう』

「そ、そりゃ過去に戻れたら嬉しいけど、いや、その、でも俺の願いを叶えてくれるよりも、も、もっと叶えてあげるべき願いが他にあるんじゃないんですか?」

『ふむ、貴様ら人間は儂らをなんじゃと思っておるのじゃ、まぁ昔から人間は変わらず愚かな生き物じゃからな、大体わかるがの』

『そもそも人間で言うところの願いは、儂らからすると、そうじゃのぅ・・わかりやすく言うとクレームじゃ』


『人間もうるさい方のクレームから対応するじゃ「ちょっ、ちょっと待ってください!」

「儂らってことは、つまり神様は他にもいるんですか?」

『いちいちうるさい奴じゃのう・・だから儂らをなんじゃと思っているのじゃ・・いやそもそも人間には知る由もないか』

『まぁええじゃろ、儂らのような存在は人間で言えば1万2千人くらいはおる』

『儂らの存在未満なら無数におるがの・・日本には八百万のとかいう言い伝えもあるじゃろう?』

「ちょっ、ちょっ『とにかく話の腰を折らずに黙って聞けぃ』

『その地球にいる1万2千人の内およそ1万人が貴様のクレームに頭を抱えておる・・・物理的にな』

『中には火星への異動願いを出しておる奴も多い』

(地球に1万2千人!?ヤオロズの神が未満ならこの爺さんは上位神的な?え?他の星にもいんの!?)

「ってか俺のクレーム??」

『頭で考えようが口にしようがどっちでも同じなんじゃがのぅ・・・落ち着きのない奴じゃな』

「いや絶叫したりうろうろしていないだけマシかと思うけど・・」

『まぁ続きじゃ、儂らは願い・・いやクレームの多い順に対応しておる、ただし聞ける分だけじゃがな、だから今回ここに来たのは特例中の特例じゃ』

『何故かわかるか?貴様のクレーム、つまり願いの強さはおよそ30億人分に相当する』

「30億っ!?」

『そうじゃ・・30億人に耳元で過去に戻りたいと囁かれていることを想像してみるがよい』

『それも連日連夜じゃぞ』

「30億人も耳元に集まるなんて不可能じゃ・・・?」

『比喩表現じゃ・・つまり貴様の願いはそれぐらいうるさいという事じゃな、そこで願いを、いやクレームを処理することが決まり、代表で儂がここに来たのじゃ』

『その毎日うるさいのを我慢するか、面倒なクレーマーを処理する手間を天秤にかけた結果、貴様を過去に戻すことが決定した』


『喜べ、貴様の思考を読み取った結果、今からすぐに転送を開始する』

『ふむ、中学2年生の夏休み初日じゃな・・青春じゃのぉ・・・では行「ちょちょちょちょちょちょと待って!!待って待って!」

「ストップストップ!!」

『なんじゃ?』

「い、今過去に戻ったら残された妻と娘はどうなるのですか??」

『なんじゃい、戻りたいと願ったわりになかなか気にするではないか』

「当たり前でしょう!!大事な事なんです!!答えてください!お願いします」

『やれやれ、少し考えたらわかる事じゃが、貴様が過去に戻る以上、当然同じ分だけ周りも戻る』

『つまり結婚の事実は無くなり、結果当然貴様の愛娘の存在も消える、そして仮に人生の先にもう一度同じように結婚して出産して娘が産まれ同じ名前を付けたとしてもそれは別の子じゃ』

『貴様だけが誰も知らない同じ名前の娘を覚えていることになる』

『わかったのならそろそろ転送をはじ「ちょちょ、だからちょっと待ってください!!」

校長はながいながい溜め息をつき、

『さっさと終わらせたいのじゃが・・』

「す、少しだけ時間を下さい!お願いします!!」

(妻や娘を捨てたいわけじゃない!そうまでして戻りたいわけじゃない!)

(だが過去に戻るれるのも捨てがたい!考えろ!俺の脳よ!!頼む!!閃けっ!!脳を解放せよ!いい方法がなにかあるハズだ!!)

『加速された時間の中で時間を下さいと言うた奴は初めてじゃのう』

『思考もダダ漏れなのも忘れておるしのぅ・・』


(閃いたっ!!)

「あのっ!昔アニメ見たんですけど、俺のコピーにここに居て貰うことはできますか?」

「俺は過去に戻る!そしてもう1人の俺がここに残って妻と娘を大事にする」

「コピーと言っても俺だしなんとかなりませんか?」

『あきれた奴じゃ・・なんとわがままな・・・』

『が、出来ないこともない、このまま帰ってもまたうるさい日々が来るようではここに来た意味もなくなってしまうでの』

『では聞こう、過去に戻る貴様と、ここに残る貴様の意識はどうする?繋げておくのか?それとも完全に分けてしまうのか?』

「分けておいてください、残ったもう1人には妻と娘の幸せを考えて欲しいので」

『あいわかった!少しばかり手間が増えたからほんの少し時間がかかるが今から転送を開始する』

『そして転送が成功した時点でコピーした2人の意識は完全に別れることになる!』

(2人ともこんな俺を許してくれ・・本当に済まない・・・だがもう1人の俺がきっと幸せにしてくれるハズだ!)

(何故ならそいつは俺で、俺は2人の事を愛しているからだ!)


校長もとい神様がいつの間にか持っている何かを触りながら何かを口ずさんでいる。

風は吹いていないのに神様の方からの風圧の様な何かを感じる。

まばゆい光と共に自分の中を何かが通り過ぎて行くが眩しくてなにも見えないしなにも聞こえない。


『転送は無事に成功した、これでもううるさいのに悩まされる事もないな』


(人間の願いはクレームか・・こんな話誰も信じねぇだろうが、過去に戻れるのならまぁいいか)


期待に胸を膨らませながらゆっくりと目を開けるとそこには、

なにも変わることないリビングが広がっている。

「えっと・・・どういうこと・・?」

事態が飲み込めないわけではない。何となく、だが間違いなくわかってしまった。

『そうじゃ、そういうことじゃな』

思考もダダ漏れだ。

『意識の繋がりさえあればまた少し結果は違ったのじゃろうが、それでもあまり変わりはない』

『だが、願いは叶えられた、これからは枕を高くして眠れるわい』

『わかっておると思うが念のために伝えておくが、もう一度願っても無駄じゃ、それならば最初からここには来ておらぬからのぉ』


神はその長い髭を撫でながらさらばじゃと言い消えていった。


外を走る車の音が現実を感じさせる。俺は力なく椅子に座り、天井を見上げ長く気だるい溜め息をついた。

「そうだよなぁ・・過去に戻るのも俺で、置いていかれるのも俺なんだもんなぁ・・」


本当にもう1人の俺が過去に戻ったかなんて確認のしようもない。

ただわかってる事といえばまた同じような明日が来るということ。

そしてそれはいつか振り返った時に掛け替えのない大切な思い出の日々になるということ。

「今度の休みは奮発するか」


(あぁー・・・過去とかじゃなくて宝くじで億万長者とかにしておけば良かったなぁ・・)


明日はもうすぐそこだ。


fin

途中からオチがわかると思いますが、まずは書ききるのを大事にしてみました。

世界観としてはマトリックスの現実世界というやつでしょうか。神は人間をデータとして管理しているので、

削除、転送はお手のものだったというものです。

読んでくださりありがとうございました。

あととても書くのは大変で毎日連載とか尊敬します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ