第四章 3 後始末の始まり
三
とりあえず、服が欲しい。流石に、あれだけ偉そうにかっこつけておいて、下着で戻るのは恥ずかしいが過ぎる。
とはいえ、脱がなきゃ、重くて水中での回避に影響が出ていたはずだ。脱がないという選択肢は無かった。
「二人とも、主に服を貸すと言うつもりはない?」
「「これ、肉体の一部ですから」」
二人の回答はコレだった。
そっかぁ。分身体だもんね。最初から着ているって事は、そうなるわよねぇ。
私は城塞前に降り立ち、堂々と城門を開けるように告げる。
別に、スタイルには恥じ入るところはない。むしろ、出るところは出て、凹むところは凹んでいる自信がある。ただ、あれだけ格好付けたのだから、下着姿で戻るのは格好悪いというだけなのだ。
堂々としていれば、それなりに格好が付くはずだ。
門が開くと、下着姿の私を見て、皆が視線を逸らした。
「ふ、服を着てください!」
皆が顔を逸らし、動こうとしない。
「私のこの姿に気を使っているのかもしれないけど、なら、服を頂戴! それとも、このまま服屋に行けっての⁉」
そういうと、誰かが軍服の外套を持ってきた。
「コレを……」
「ありがとう」
贅沢は言っていられない。
わたしは、下着のまま外套を羽織った。まるで、夜間に出る変質者である。
そのまま、城へと向かって飛行する。魔族の外套は、羽の部分が空いていて助かる。有翼人種以外の服は、羽穴がなくて、窮屈な上、空を飛べないのだ。
城へ向かう途中、皆から歓声が上がっていた。
やはり、絶望鯨の討伐には、かなりの効果があったらしい。
城へと戻ると、まずカミュが飛び出してきた。
「ただいま」
「おかえりって、なに、その服?」
「海に飛び込むときに、服捨てたから、城門でもらったのよ」
「なら、その下は下着?」
「そうだけど?」
カミュが、無造作に近づき、私の外套の前を開こうとしてきたので、頭をひっぱたく。
「いった~い、なにすんの⁉」
「こっちの台詞よ!」
「嘘吐いてないか確認でしょ⁉」
「嘘じゃないし、嘘だとしても、なんにも問題ないでしょ!」
普段通りのやりとりに、戦闘後の興奮が落ち着いていく。もしや、ワザとか? いや、素だな。
「みんな、あのまま待ってるよ。といっても、もう戦う空気じゃない感じ」
「なら良かったわ。戦いを止めるのが、一番の目的だったから」
私は皆に会うため、謁見の間に向かう。
「終わったわよ」
私がそう告げると、テスラやパパが労いの言葉を掛けてくれた。
枢機卿は、メルバを限界まで見開いた双眸で見つめていた。
多分、大天使メルバだと気付いたのだろう。
「軍務卿、とりあえず、クーデターは止めてもらえるかしら?」
「それは、できん」
「でも、もう皆は戦う気が無いでしょう?」
「それでもだ。わたしは、魔神排斥のために!」
私は嘆息し、軍務卿の耳元で呟く。
「私も、魔神の排斥には賛成。だから、効率的にするためにも、話し合いがしたいの」
耳元から顔を離して、軍務卿の顔を確認すると、驚いた顔で、こちらを見つめていた。
「本気よ? とりあえず、王様」
「な、なんでしょう?」
「今回の件、誰も罪に問わないで欲しいの。そして、明日、話し合いの席を持ちたい。王様や王子様達、枢機卿に軍務卿辺りとね。他にも宰相さんとか重要人物は来て欲しいところね。どうかしら?」
皆の顔を見回すと、皆の視線はメルバに向いていた。
あんな化け物が味方に居る相手の言葉に逆らえるか、と言わんばかりだ。
「反対意見はないようね。申し訳ないけど、流石に疲れたわ。今日は休ませて貰うわ」
王子達に目配せし、後は任せるとの意思を告げる。これで、少なくとも、勝手に処刑などを勝手にするようなことはないだろう。




