表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/53

第二章 2 特異依頼


   二


 自室で眼鏡に対する呪い防止の処置をしていると、ドアがノックされた。

「は~い。ちょっと今、手が離せないの」

 この呪い防止は、視線で呪うことが出来る自分が、無意識に周囲を呪わないようにするために、必要な措置なのだ。

「失礼します。組合の者ですが、支部長がお呼びです」

 男の声がした。ドア越しなので、姿は見えない。

 突然、なんだろうか?

 まあ、どうせろくな用件ではあるまい。

「急ぎ?」

「はい」

 ならそっちが来いや、と思わないでもないが、部屋にそれほど親しくもないおっさんを入れるのも嫌である。

「ほんとに、今は手が離せないから、目処が付いたら行くわ」

「で、ですが」

「呪いの拡散防止処置中。今、やめたら、都市に呪いが蔓延するわよ? なに、責任取れるの?」

「い、いえ。では、そのようにお伝えします!」

 そう言って、使いぱしりの男は帰っていった。

 さて、続き続き。

 自身の血を、以前手に入れた龍の骨粉と混ぜる。それに火を付け、眼鏡を燻す。

 うん、煙い。部屋でやるべきじゃなかった。でも、外でやると苦情来るしなぁ。

 げほげほ、とむせながら、涙を堪えて実施する。ぽたりと垂れる涙は、赤と黒だ。

 数分の処置を終え、窓を開いて、換気する。

 眼鏡をかけて、レヒとリンクに、眼鏡への呪い防止が機能しているかを確認する。

 二匹は、こくんと頷いた。

 正直、リヒとリンクは、呪いを上手く扱えるのだが、私は少々下手くそだ。感情が高まると、無意識に呪ってしまうことがある。そのため、眼鏡はどうしても必須だ。

 特に戦闘中など、否が応にも感情が高まるのだ。視界に入った、知り合いを呪ってしまったら目も当てられない。

 眼鏡を掃除し、着用。戦場に行くわけではないので、眼鏡は不要なのだが、組合に行くのならば、仕事着で行くべきだろう。

 部屋着から、ローブに着替えて、マントを羽織る。懐に、呪術関連を突っ込んだ巾着を入れる。後は、自分の武器である金槌を腰にぶら下げる。

 最後に新しい眼鏡を着用。

「よし、行くか」

 いや、面倒だな。やめよっかな……。

 本気でそう考えるが、本当に重要な用件だったらまずいので、仕方なく行くことにした。

 組合に着くまでに、屋台で買い食いながらしたので、少し時間が掛かってしまった。

 でも仕方が無い。美味しそうな匂いがしたんだもの!

 組合の建物に入ると、カウンター内で待ち構えていた組合長が、早く来い、と手招きをしていた。

 どうやら、カウンター奥の組合長の部屋で話をするらしい。

 私は、組合のロビーの壁に金槌を立てかけた。話し合いの場にはでかくて邪魔だ。

 特注の金槌であり、材料は二度と手に入らないであろう物が使われているが、多分、値段は付かないであろう代物だ。

 以前、とある事情により倒すことになった、亜神の魔力の結晶と骨を使って造った物なのだが、その所為で触れただけで、体調を崩すというデメリット付きだ。多分、私以外には、使い事なすことが出来ないだろう。

 盗むような馬鹿はいない。

 部屋の中に入ると、相手の許可を待つことなく、ソファに腰を下ろす。対面に組合長は座った。

 秘書の女性に「珈琲、砂糖は二つ、ミルクなし」と告げる。一瞬、イラッとした表情をされたが、すぐに表情を笑顔に戻し、部屋の外へと出ていった。

「で、なによ?」

「というか、お前、何してたんだ? なんか、凄い煙いんだけど」

 組合長は、五十前半の虎の獣人だ。当然、実績も十分で、今でこそ前線から離れているが、皆に一目置かれる実力者だ。

 名前はキタ・イチポーロ。息子もおり、その息子はと言えば、組合員として現在名を上げようと必死に頑張っている最中だ。

 因みに、組合長とは便宜上のあだ名のようなもので、正確には職業斡旋組合支部長であり、支部長と呼ぶのが正しいのだが、皆組合長と呼んでいる。

「新しい眼鏡に、呪い防止の措置してたのよ」

「あ、そういえば、眼鏡変わってるな」

「でしょ、似合う?」

「前のが酷かったから、何を着けたって、前のよりは似合うだろ」

 世辞っでいいから素直に褒めなさいよ……。ただでさえ乗り気でないのに、更にやる気が失せた。

「で、なに?」

「飲み物が来てからで良いだろ」

 そう言われたので、腕を組んで、ソファの背もたれにもたれかかる。

 テーブルの上に、珈琲が置かれ、組合長が秘書へ外で待つように告げた。

「この都市に、風龍の群れが向かってきている」

「到着は?」

「三日後」

「あ、そ」

 組合長は、腕を組んで、こちらを見つめ続けている。

「龍討伐に参加して欲しい」

「無理無理。その日はデートあるし」

 これは本当。フィリアとしてだが、テスラと遊びに行く予定が入っている。

「それはあれか? テスラとか」

「当たり前でしょ。何、私が他の男と遊びに行くとでも思ってんの?」

「いや、そうではない。テスラは、この話受けたぞ?」

 この話をされたのならば、テスラは受けるだろう。

 だが、私は受けたくはない。

「なら、テスラにめっちゃごねて、辞めさせるわ。フィリアとして、約束破るのってごねれば、上手くいけば、デートに来てくれるでしょ」

「お、お前。都市の大ピンチなんだぞ⁉」

 しらけた表情で、私は珈琲を飲む。あ、これやっすいやつだ。組合長の客なのに、安い豆で煎れたな?

「まだ三日あるんでしょ? だったら、組合、教会、王宮で強制招集権使って、更に近隣に応援頼みなさいよ。それなら、対応も出来るでしょ?」

「だ、だが、間に合わなかったら……」

 組合長が目を逸らしたので、わざと音を立てて食器を置く。

 びくり、と肩をあげて、こちらにおずおずと視線を戻してきた。

「なら、それこそすぐに動かなきゃ、ね?」

「……に組合が協力する、ならどうだ?」

 最初の方が、小声すぎて聞こえなかった。

「テスラと付き合えるように、組合が協力するなら、どうだ?」

 凄いこと言い出した。

 仮にも一支部を任された者の言うことだろうか。

「協力って、何してくれるのよ?」

「予約しにくい劇の鑑賞券回したり、店を予約できるように手を回したり、色々だ」

 ふ~む、どうしたもんか。正直、最終的には受けるしかないとは思っていたのだ。テスラにデートの件でごねたとして、デートに来てくれたとしよう。だがテスラは楽しめない上に、被害が出れば悲しむだろう。逆に、討伐に行けば、フィリアに対する罪悪感を増すことになるだろう。フィリアとして、別れる理由付けに使えるかも知れない。なら、いい落としどころか。

「わかったわ。それで受けるわ」

「ほ、本当か⁉」

「でも、緊急招集はしなさいよ。群れの全部、私とテスラで相手なんか出来ないからね」

 うんうん、と組合長は頷いた。

 因みに強制招集はCランク以上の組合員が対象であり、Fランクの私には関係の無い話だったりする。

 ってことは、テスラがフィリアに謝罪しに来るわね。お店で働いておかなきゃ。

「じゃ、それで用は終わりね。帰るわよ?」

 予想通り、夜にテスラが酒場に現れ、三日後に仕事が入ったことを伝えに来た。

 その申し訳なさそうな顔に「人々のためでしょ、誇らしいぐらいです」と返すと「ありがとうございます」と淡い微笑みを浮かべた。

 次の日は、早く起きた。多分、テスラが来るからだ。

 気を使ってか、テスラは昼前に現れた。

「おはよ。仕事のことでしょ?」

「ああ、そうだよ。部屋で、それとも下の食堂で?」

「食堂かな。もうお昼だし」

 二人で食堂に移動。時間が時間な為結構混ではいたが、宿泊客用のテーブルがあるため、待つことなく座れた。

 適当に注文を済まし、食事が運ばれてきてから話を開始する。

「仕事の日、デートだったんじゃないの?」

 からかうように言うと、テスラは苦笑いを浮かべた。「それは断ったよ」

「振られちゃうかもよ?」

「かもね。それでも、君は仕事を受けただろう? だったら、僕はそちらを優先するさ」

 その言葉に、思わず面食らって、口に運ぶ途中のフォークを空中で止めてしまった。

「な、なんで?」

「なんでって、そりゃ、フィリアさんは大切だけど、僕が命を預けられるのは君だけだし、君もそう思ってくれてると思うから」

 面と向かって、こんな事をのたまいやがった。

 自分の頬が、過去最高に熱くなっているのがわかる。多分、誰が見てもわかるほど真っ赤だ。

「く、口説いてんの?」

 震える声で、言葉を紡ぐ。

「いや、違うけど?」

 いや、どう聞いても口説いてるんですけど⁉ そして、オッケーなんですけど⁉

「っていうか、受けたのテスラでしょ?」

「え?」

「え?」

 話を整理すると、どうやらお互いがお互いとも、相棒が受けたと言われたらしい。

 騙されたってわけね。

「へえ?」

 ちょっとムカついちゃったな。

「でもこの都市の人々には関係が無いことだよ。僕は、君が断っても、受けたと思う」

「わかってるわよ。やることはやるわ。その上で、ちょっとした意趣返しぐらいしたいじゃない。騙すってのは、誠意にもとるわ」

 テスラは苦笑い。だからといって文句は言わない。この辺は、私の性格を知っているがゆえだろう。

「で、作戦は考えているのかい?」

「ん~、丘で先制攻撃。後は、なるがままでいいかな」

「じゃ、僕は君を護り続ければいいわけだね」

「そ。いつも通りよ」

 適当な作戦。だが、それで勝ってきたという自負がある。

「ああ、そうだ」

「なに?」

「眼鏡、すごい似合ってる」

「あ、ありがと」

 だから、そういうとこ。そういうとこなんですよ。惚れちゃうし、諦められないのは。

「この後、何か予定あるかい?」

「ないわよ。テスラのために空けといた」

「じゃあ、適当に遊びにでも行こうか。最近、ジーラと仕事以外で出かけてなかったしね」

「だから、彼女、いるんじゃないの?」

 言わなくて良いことなのに、何故か訊ねてしまった。フィオナとしての部分が、少しは自分の中にあるのかも知れない。テスラは、実は浮気性なのか、とか。

「う~ん、なんだろうね。他の女性はともかく、フィオナさんは、ジーラとなら、怒らないと思うんだ。自分でもわからないんだけど、確信できているんだよね」

「ふ~ん?」

 思わず眉根をひそめてしまったが、本人も理由はわかっていないようだ。

「因みに、私がこの間、男と出かけていたのは、デートとかじゃないから。誤解しないように」

「そうなのかい? まあ、わかったよ」

 テスラは、素直に頷いた。疑っている様子はなさそうだ。

「じゃ、出かけましょうか。折角だから、楽しみましょ」

「どこか行きたいところあるかい?」

 ふむ、と考えて、一つ思いついた。

「服屋。私服が全然無くて、ちょっと困ってて」

「わかった。確かに、僕ですら君の私服って、見たことないな」

「だって、持ってないもん」

 因みに、本日テスラは私服だ。簡素なシャツに、綿生地のズボン。気取らない服装だが、清潔感があり似合っている。

「もしかして、一緒に歩くの恥ずかしいとか思われてたり?」

「思ったことないよ。ジーラって感じがするよ、その服」

「ほら、私って、背中の関係で、服が面倒でしょ?」

「あ~、確かにね。そう考えると、マントとか欲しくなるか。でも、私服には、ちょっと目立つかもだね」

「うん、だから困ってるのよ」

 今の自分の服装。真っ黒なローブに、センスがないと言われるマント。室内でもフードを被りっぱなしで、その下にある髪はボサボサだ。

 やばい、想い人と歩いて良い服装じゃない。

「ちょ、ちょっと髪の毛直してくる」

「必要ないよ。さっき言ったとおり、普段通りが一番いいよ」

「随分褒めるじゃない。恥ずかしいんだけど」

「だから丁度良いだろ。顔が隠せてさ」

 食事を終えて、服屋へと向かった。

 センスがないことは理解しているので、テスラに選んで貰う。簡素なデザインのものが多いのは、テスラの好みなのだろう。

 更衣室に入り、ローブを脱ぐ。

 鏡に写る自分を確認する。

 見目は、良いと思う。だが、それにかまけて努力していないのが良くわかる容姿だ。なんというか、人と会うには、失礼と言った状態だ。

 髪がぼさぼさで、化粧もしていない。

 こりゃ、振られもするわ、と思わないでもない。テスラなら受け入れてくれると、高をくくっていたのかも知れない。

 テスラは、普段通りが良いと言っているが、それはきっと女性としてではなく、女性を意識しない相棒としての話だろう。

 これからは、美容室に行って、化粧もしよう。女性を磨こう。フィリアじゃない時も。

 決意を固め、テスラの用意した服を着る。

 髪や化粧はもうどうしようもない。

 色も暖色系のワンピース。肩と背中は全て露出されるタイプ。

 まあ、こうなっちゃうのは仕方ないのよね。

「どう?」

 カーテンを開き、テスラにお披露目する。

「似合ってるよ」

「ほんと?」

 次の衣装に着替えて、同じやりとりが行われた。確信した。こいつ、全部似合うっていうタイプだ。

 結局、店員も交えて服を選んで貰った。

 そのままローブから着替える。ついでに新しいケープも購入し、背中の露出を隠した。

 店から出る際に、売れ残りのセールコーナーに、実にダサい寝間着を見つけた。胸の所に、相と書かれた青色と棒と書かれた桃色の物だ。

 売れるわけがないと思うと同時、ダサすぎて欲しいと思ってしまった。安いし。

「どう思う?」

 笑いながら問いかけると、テスラも笑っていた。

「いいんじゃないか? これから泊まりの仕事の時は、これ着ようか?」

「お、いいよ。裏切って、持ってこないとか無しだからね」

 そう言って、二人でこのパジャマを購入した。

 うん、こんな馬鹿やるのが楽しい。だからこそ、一緒に居たいんだろう。一緒に居れたら、自然体で、楽しく過ごせるから。

 その後は、適当にぶらつき、夕食として酒場で飲んだ。前日は基本付き合ってくれないテスラだが、仕事は明後日だ、今日ならば酒に付き合ってくれるだろう。

 一応、フィリアが居ない店の方が良いだろうと提案し、適当な酒屋に入った。

 酒場は、組合、王宮、教会と各所属が好んで使う、テリトリー的な特色がある。

 今回は行った酒場は、組合の人間が多い場所だった。

 勿論、教会所属だからと言って、入ってはいけない等という決まりはない。ただ、絡まれる危険が付きまとうというだけだ。

 テスラは、明らかに組合所属でないのがすぐにわかる。王宮か教会ならば迷われるだろうが、清潔感のあるその見た目は、明らかに粗雑な見た目の者が多い組合所属ではない。

 ちなみに、私が酒場を作った理由は、その所属の色がない酒場を作りたかったからだ。そうすれば、所属間を通じたパーティが組める場になると思ったからだ。

 実際、その思惑は成功し、酒場はかなり儲かっている。

 こういった、所属色の強い酒場は、偏屈な者が多かったりする。 

 適当な席に座り、酒を注文する。

 失敗したかな。

 ちらちら、と新入りであるこちらに視線を送る者が多い。

「女性がいないからかな、君を見てるみたいだ」

「いや、教会所属のテスラが居るからでしょ」

 気にしても仕方が無い、と提供された酒のグラスを「乾杯」と言いつつ合わせた。

 私は一気に飲み干し、テスラは少しだけ飲んでグラスを置いた。

「もう一杯良い?」

「潰れたら送っていくから、好きなだけ飲んでいいよ」

 いつも通りのやりとり。紳士だから、なにかされる心配は無い。……悲しい。手を出しても良いんデスヨ?

 更に一杯、一気に飲む。

「くはぁ!」

「良い飲みっぷり。僕より、ジーラの方が漢らしくて格好が良いよね」

「褒められてる気がしないんだけど?」

 ジト目で睨みつけると、「はは」と笑って流された。

 降臨祭が近いこともあって、店内でに降臨祭の話題を話している者が多かった。

 天使は居るが、本当に神様ってのは居るのか? 等罰当たりな話題もあったが、テスラが機嫌を損ねている様子は無かった。私から見ても、テスラはそれ程信心深い方ではないと思うことがある。

 が、そんなテスラでも機嫌を損ねる話題が耳に聞こえてしまった。

「神様は居るだろ。二十年前の、集団誘拐妊娠事件、覚えてねぇのか?」

「ああ、あれだろ。若い女が百人攫われて、みんな神様の子供を妊娠していたって奴」

「そうそう。ただ、みんな産む前に、死んじまったって話だ」

「まあ、神様って言ったって魔神の子供なんだろ。生まれないでくれて良かったじゃねぇか」

 そう言って、男達は笑った。

 私は、テスラの頭を小突く。

「私と酒飲んでるのに、そんな顔しないの」

「……ああ、そうだな」

 不承不承ながら、テスラは頷き、男達から視線を切った。 テスラはこの手の話題、好きじゃないからなぁ。私も、好きではないが、ここまで露骨に機嫌は悪くならない。

 と、店のドアが開く音がし、私がそちらに視線を向けると、男がこちらに気付く。そして、こちらに近づいてきた。 

「おいおい、なんで教会のお上品な方が、こんな店にいるんだよ!」

「とりあえず、その言い方は、店長さんに失礼だと思うよ」

 テスラは、呆れた様子で答えた。

 仰るとおりである。

「返しも上品なことだな」

 そう言うと、こちらのテーブルに近づいてきた。

「俺は、教会や王宮のお上品な連中が気にくわねぇんだ。この店の気安さを損なうからよぉ。さっさと出てってくんねぇかな。それとも力尽くで出した方が良いか?」

 テスラを睨みつける男。だが、テスラは涼しい顔で、その視線を受け止めている。

 涼しい顔に、さらに男は怒りに顔を赤くしている。最早、喧嘩になる直前と言った感じだ。

 私は苦笑いを浮かべ、親指で背中越しに後方を指さし、男に来るようにジェスチャーした。

「で、なにしてんのよ?」

 小声で問いかける。

 組合の顔見知りだったのだ。絡んでくる時点で、かなり不自然だ。

「おまえの恋に協力しろって、組合からの指示だよ。俺達の方が、なんでこんなことしなきゃいけねぇのか知りてぇよ」

 あの馬鹿組合長、人の恋愛事情バラしてんじゃねぇよ! 協力ってそういうことじゃなくない⁉

 そして、一言もの申したい!

「違うでしょ?」

 半眼で男を睨む。

「ここは姉ちゃん、こっちで酌しろよ、ってなって、私が助けられるところじゃないの⁉ なんで、純粋にテスラに絡むのよ!」

 私がテスラを助ける側なの? どうやったら、それできゅんってすんのよ⁉

「いや、ジーラに絡んだら、問答無用で呪うじゃねぇかよ。お前、軽い呪いなら、冗談半分、からかい半分でやるじゃねぇか。あれ、意外とキツいんだぞ。次の日、二回足の小指ぶつける呪いとか」

「とりあえず、テスラに謝って、あっちで飲んでなさいよ」

「へいへい」

 男は、言われたとおりに、テスラに謝罪する。テスラは良い奴なので、すぐにその謝罪を受け入れた。

 そして、その直ぐ後に来た客、三組ほどと同じやりとりを繰り返すことになった。

 とりあえず、あの虎野郎、ぶん殴る。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ