第六章 3 喉元過ぎれば
三
私、ジーラが目を覚ますと、朝だった。
「丸一日?」
「うん、寝てたよ」
テスラは、苦笑いを浮かべている。
「カミュは?」
「一度来たけど、帰ったよ。また、今日来るそうだよ」
「そう、お腹減った」
「今から作るから、悪いんだけど、待って居てくれ」
こればっかりは仕方が無い。いつ起きるかわからないのだから、作り置きも不安だったのだろう。
「お風呂借りるわよ」
「ご自由に」
寝る前にも軽く汚れを流したが、疲労のため、本当に烏の行水のようなものだった。今回は、湯船にも浸かるつもりだ。
ゆっくりとお風呂を堪能し、テスラの部屋に置きっぱなしの部屋着に着替える。
「飲みたい気分ね」
「申し訳ないけど、今は、部屋にないよ」
残念。テスラは、あまり部屋飲みや晩酌をしないのだ。この部屋で飲むときは、大抵、私が酒を買ってから来るのが通例となっている。
テーブル上には、私の好きな物ばかりが所狭しと並んでいる。
流石に多くないだろうか?
私が顔を上げると、テスラは満面の笑みを浮かべていた。そんな顔されたら、食べるしかないじゃん!
シチューに、ステーキ。更にはパンケーキ、他にも色々だ。本当に、食べ合わせもなにもない、ただ私の好きな物を用意したという感じだ。
私は「いただきます」と手を合わせてから、食事を開始した。
ほっとする、私にとっての家庭の味だ。
「どうかな?」
「この顔見ればわかるでしょ?」
「確かに。無粋な質問だったね」
答えに満足したのか、テスラも食事を開始した。
胃が小さくなっているのではないかと不安になったが、案外食べきってしまった。重湯しか食べていなかった身体が、栄養を欲していたのかも知れない。
「ご馳走様」
「お粗末様でした」
テスラは食器を片付ける。私は、申し訳ない話なのだが、それを見ているだけだ。
以前、皿を数枚割ってしまい、テスラに片付け禁止を命じられてしまったのだ。
手持ち無沙汰に、惚れた男の家事姿を観察していると、玄関からカミュの声がした。
「は~い」
私はカミュを出迎える。カミュに、部屋に上がるようにと促すと、戸惑いを見せたが、手を引いて無理矢理上がらせる。
大丈夫、私の部屋と違って、綺麗だから。
カミュは興味津々に室内を見回している。
「ごめんなさいね、昨日は。来てくれたみたいなのに」
「え、大丈夫、大丈夫。むしろ、ゆっくりしていてくれて、逆に安心したよ」
ほっとした笑みを浮かべるカミュに、私も笑顔を返した。
「ジーラ、新しい酒場の物件、ママが目処つけたんだけど、来てくれる?」
「ええ、いいわよ。テスラ、良いでしょ?」
「ああ、構わないよ」
因みに、私が経営者であることは、酒場を開くときに説明している。
「じゃ、行きましょうか」
私はカミュに案内をお願いし、その物件へと向かった。




