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#099 「「「ヤダー!!!」」」

そろそろ原稿期間……( ‘ᾥ’ )(日曜の更新でまたおやすみします

「あー……これですかぁ」

「なんだいこれ? うわぁ」


 フィアとアイが俺の持ち込んだ設計図を見て二人で渋い顔をする。門外漢の俺ですらひと目で安全性に関して疑義を抱くような代物だ。生粋――かどうかはわからないが、エンジニアである二人であれば俺よりもより深くその安全性について疑問を覚えるのは当然だろう。というか、この反応を見るに、フィアはこいつの存在を知っていたようだな。


「旦那様、これを使うんですか? ノーアトゥーンにもこれの設計図は持ち込まれたことがあって、このままじゃ危なくて使えたものじゃないって評価を下されてお蔵入りになったんですけど……」

「いや、俺もこれは危なくて使えないと思ってるんだが、性能そのものはかなり惜しいというかな……近隣の村や集落に数分で戦力や物資を送り込めるのは便利だろう?」

「確かにそれはそうだけど、これ終末誘導は人力だよ……? 落下制御そのものは自動だけど、どこに落下するかは中の人員がマニュアルで操作する感じ。或いは予め誘導ビーコンを設置しておくような感じだね」

「適当に爆発物を詰め込んで飛ばしてピンポイント爆撃みたいな真似はできないというわけか」

「大量に用意して雨あられと叩き込めば命中するのもあるかもね。そんな使い方するにはコストが高すぎると思うけど」


 ロケットドロップポッドに対するうちのエンジニア勢からの評価はけちょんけちょんのフルボッコである。それはそう。素人の俺でもそう思うんだから、当たり前だ。


「これを持ち込んだのはな、なんとか安全性を改良できないかっていう相談なんだ。コストは多少上がっても良いから、今の性能を維持して安全性を実用レベルに上げて欲しい」

「改良ですか……ちょっと精査してみないとなんとも言えないですけど、旦那様がそう仰るならやってみますね」

「え? 本気で? これを?」

「勢力によってはこれを大量運用しているところもあるんですよ。実際、使い勝手……というか、性能そのものは魅力的だとフィアも思います。積載量は据え置きで、安全性とコスト面について考えてみますね、旦那様」

「ああ、無茶振りだと思うが頼む。首尾よく事が運んだら、何かボーナスというかご褒美を出すから頼んだぞ」

「お? ボーナス? ボーナスと聞いたらやらないわけにはいかないね。期待しててよ、ボス」


 アイがそう言ってニヤつく。首尾よく事が運べたらだからな。ちゃんと良いものを作ってくれよ。


 ☆★☆


 そういうわけで、一応純血人類同盟に対しては相互に連携することを前向きに考えるという方向で話をまとめ、うち謹製の武器と弾薬、それにアーマーを買い込んだサム達は翌日には自分達の集落――コーンフィールドへと戻っていった。通信用のコードも交換したので、今後は連絡も取り合えるようになるだろう。

 改良型ロケットドロップポッドに関しては、改良に目処がつき次第協議する、という形になった。実際のところ、どの程度使い物になるものが出来上がってくるかわからんからな。技術提供に関してもうちが労力を割く以上、それなりに見返りを頂かなくてはならない。そもそも、改良型のロケットドロップポッドをあちらの技術力で作ることができない場合、モノ自体もこちらから提供しなければいけなくなるしな。

 一応、現行のロケットドロップポッドは墜落などしなければ再利用はできるようになっている。えっちらおっちらと発射装置まで運び込んで整備し、燃料と推進剤を補充する必要があるらしいが。

 フィアとアイには安全性だけでなく、運用コスト面でもなんとか上手いこと良い感じにしてくれないかと頼んではおいた。どのような形になってくるかは出来上がってこないとわからんが。


「旦那、なにこれ?」


 設計図から構成機で部品を出力し、組み立てたロケットドロップポッドとその発射装置を眺めていると、訓練を終えたらしきスピカとその部下のフォルミカン達がちょうど通りかかった。


「1%の確率で墜落するけど数分で徒歩数日かかる隣村に行けるドロップポッド。お前らならフル装備で二人は余裕で乗れる」

「……まさか、のせてとばさないよね?」

「どうしようかなぁ? 便利ではあるよなぁ?」

「「「ヤダー!!!」」」


 フォルミカン達が一斉に拒絶の意思を表明し、わーわーと騒ぎ始める。ピョンピョン跳んで抗議したりするのはわかるんだが、どうしてブレイクダンスを踊ってるんだよ。それは抗議なのか?


「まぁ冗談だ。とりあえずどんなものか作ってみただけだ。もっと安全性に配慮したものをフィア達に作ってもらっているから、安心しろ」

「ねぇ、旦那。安全かどうかはどうやって証明するの?」

「そりゃお前、飛ばすしかないだろう」

「だれがのるの?」

「お前達かな?」

「「「ヤダー!!!」」」


 再びの大合唱である。冗談だ、冗談。汎用の作業用ボットとかで試すに決まってるだろう。最悪、事故っても修理できる可能性があるボットを乗せて試験するのが良いに決まっている。わざわざフォルミカン達を危険に晒すつもりはない。まぁ、乗せるならフォルミカン達じゃなくフェリーネ達でも良いんだがな。何せ軽いし。何故かロケットドロップポッドを作り始めてから姿が一切見えないんだが。あいつらは危険察知能力が高いなぁ。


「まぁ、現状でも緊急で物資をやり取りするのには使えないことはないよな。ビーコンを使えばある程度誘導はできるようだから」

「1%の確率でロストするんじゃ取引には使えなくない?」

「その時は運がなかったってことで。頑張って回収してもらうしかないな」


 ただ、こいつも軌道からの降下程じゃないけど目立ちそうなんだよな。あんまりバンバン頻繁に飛ばしていると、上の連中とか上の連中の息がかかっている惑星上勢力とかに目をつけられかねないんじゃないかと俺は心配している。


「低速でも良いから航空機が使えれば楽なんだがなぁ」

「そういうのは機械どもに撃墜されちゃうからねぇ」

「たいほうでどーんされちゃうよ」


 シールドのない航空機だとそれがなぁ。超音速で飛べるような航空機でもシールドが無いと自律型駆逐兵器のコイルガンや、奴らの拠点であるハイヴに配備されている光学兵器で撃墜されかないらしい。どうも奴らは航空機に対して過敏に反応するように作られているようなのだとか。

 ロケットドロップポッドの場合はまず高く飛んで、その後自由落下に近い軌道で目標地点へと到達する。その軌道だと航空機というよりスペースデブリの落下と認識されるようで、自律型駆逐兵器の撃墜対象から逃れられるらしい。もしかして事故率1%のうちいくつかは軌道の取り方をミスって、自律型駆逐兵器に航空機として撃墜された件も含まれているのかもしれないな。


「結局、純血人類同盟には対処するの?」

「気は進まないんだが、やられっぱなしってのもな。手段と労力を度外視すれば、潰すのはそんなに難しくはないと思うんだが……後始末やら何やらを考えるとなぁ」

「だんなって、やりたくないとかめんどくさいとかはいってるけど、やれないとはいっかいもいってないよね?」

「手段と労力を度外視すれば、やりようなんざいくらでもある。問題はな、こういうのは俺一人が頑張って奴らを叩き潰したとしても、それじゃ意味がないどころか悪化する可能性が高いってことだ」


 俺が奴らの支配地域に浸透して、指揮官や指導者を斬首して回ることはできないことはないだろう。というか、装備差を考えれば十分に可能だと思う。ああいう連中は指導者層を斬首して回れば勝手に内部分裂を起こして崩壊すると相場が決まっている。問題は、そうなった場合奴らの支配領域に住んでいる住人や兵隊どもがそのまままるっと賊になりかねないということだ。

 今だって充分にこの辺りの地域の安全と治安を脅かしてくれている状態だが、それに輪をかけて酷いことになりかねん。

 ベストなのはこちらの地域に勢力を伸ばそうとすると痛い目を見るというのを十分にわからせて、こちらに干渉しないようになってくれることだ。交易もできるようになれば更に花丸ってところだが、まぁそこまでは望み過ぎというものだろう。そもそも、奴らのイデオロギー的にうちやコルディア教会、タウリシアンやノーアトゥーン、ローデンティアン達とは相容れないんだろうしな。


「旦那って本当に見かけと行動によらず色々と考えてるよね」

「見かけと行動によらずってのは余計なお世話だ」


 失礼なことを言うスピカの頭をぐりぐりと強めに撫でてやる。きゃー、とか言いながら触覚で俺の手をペタペタと触っていて、あまり効いている感じがしない。俺も本気で怒っているわけじゃないから、良いけどな。

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