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#072 「アグさん……?」

 南東の集落の連中を追跡しに行ったスピカ達を見送った俺は、その足でコルディア教会の教会施設へと向かった。


「よう、来たぞ」

「ああ、グレンさん。今ハマル司祭達とどんな作物をどれだけ作付するか相談していたんです」

「ちょうど良いところに来れたみたいだな」


 教会施設の入口近くに設えられたテーブルセットにコルディア教会の聖職者達が勢揃いしていた。いや、ミューゼンがいないから勢揃いではないか。つまりエリーカとハマル司祭、それとシスティアの三名である。


「また人数が増えましたからねぇ」


 ハマル司祭がにこにこと温和な笑みを浮かべながらそう言う。今この農場に住んでいるのはまず俺とエリーカの二人、ライラを含めたタウリシアンが六人、スピカを含めたフォルミカンが十人、目の前のハマルとシスティア、それにフェリーネが五人、アレックス達酒職人組が三人。

 合計で二十八人もの人数だ。これだけの頭数を飢えさせないようにするにはそれなりのプランが必要だし、食料の生産計画も練り直す必要がある。それに、この農場では俺達が食う分だけでなく上との取引に使う高品質の作物も作る必要があるし、酒造りに使うための作物も作る必要がある。

 それだけでなく、この農場を訪れるキャラバン相手に売りつける食料も確保しておきたいし、また突然頭数が増える可能性もあるので、やはり食料の生産量については余裕を持っておきたい。

 実はフェリーネ達の働きが嬉しい誤算だったりするんだよな。正直あまり期待してなかったんだが、今のところ彼らは俺が提供した武器や道具を使って大量の食肉を供給してくれている。


「何にせよ、住人の食料確保が先決だと思いますが」

「その点には同意する。儲けることも大事だが、俺達が満足に食えないようじゃ本末転倒だ」


 システィアの提案に同意する。悠々自適な農場ライフを求めて降りてきたのに、食糧不足で飢餓に喘ぐなんてのは御免だからな。


「農業ドローンや作業用ドローンの能力的にはまだ余裕がある……筈なので、とりあえず私達が食べる分の食料生産を優先させつつ、商品作物の生産も可能な限り伸ばす、という方針で良いですよね?」


 作業用のタブレット端末を片手にエリーカが問いかけてきたので、無言で頷く。エリーカには農場の食料生産や料理について任せている。実質この農場のナンバーツーだな。最近はタブレットを使って農業用ドローンや作業用ドローンに指示を出すのにも慣れてきたようで、暇さえあれば俺が預けたタブレットを使って各種パラメータをチェックしていたりする。


「ああ、それで良いだろう。増産する作物の選定に関してはエリーカに任せる」

「はい。アグさんによく相談してみますね」

「アグさん……?」

「高性能農作業ボットに搭載されている人工知能さんの名前です。アグさんって呼んでるんですよ。とっても物知りさんなんです」


 そう言ってエリーカがふんすと鼻息を荒くし、尊敬の念を滲ませる目でタブレット端末の画面に視線を落とす。まぁ、うん。護衛に付けた軽量戦闘ボットにポチなんて名前をつけるくらいだからな。農業支援AIに名前をつけたところで今更驚くようなことでもないか。


「そうか……まぁ上手くやってくれ。生産量に関してはハマルとシスティアにもちゃんと相談するんだぞ」

「はい、任せてください」


 エリーカと然程年齢が違わないシスティアはともかくとして、ハマルはこの惑星でしっかりと齢を重ねたある意味で歴戦の猛者のようなものだ。この農場のような居住地というか植民地の運営についても造詣が深いということなので、存分に頼らせて貰うのが良いだろう。俺は小規模かつ短期的な前哨基地の運営ならともかく、食料生産まで含めた長期的な居住地の運営に関しては素人だからな。何もかも俺一人でやる必要もないんだから、任せられるところは任せてしまうのが良い。

 そうして暫くエリーカ達と食料生産について話した後、今度はライラ達が運営する雑貨店へと足を運んだ。


「あ、グレンさぁん」

「今日は静かだな」

「滞在してるキャラバンがいませんからねぇ。私もここでのんびりですよぉ」

「他の面子は働いているんじゃないか?」

「のんびりって言っても働いてないわけじゃないでーす」


 そう言いながら、ライラはタブレット端末の画面を俺に見せてきた。うわぁ、数字だらけだ。どうやら帳簿か何かのようなんだが、俺にはこれが何なのかさっぱりわからない。


「さっぱりわからんな。取引の帳簿か?」

「ですねぇ。その他にもグレンさんが隠し持っていた物資の目録を作ったりぃ、値付けをしたりぃ、やることがたくさんですよぉ」

「その作業、要るか?」

「使用期限のある物資もあるみたいですしぃ、死蔵して無駄にするのはもったいないですよぉ? 適切に管理するために何がどれだけあるのかちゃんと把握して、値付けもしておかないとぉ。あ、一応何か使ったらちゃんと報告してくださいねぇ?」

「おう……」


 正直面倒くさいが、備蓄物資の把握と管理は大事だからな……それを全部ライラ達に丸投げ出来ると考えれば総合的にはアリか? まぁアリか。


「逆にそっちも地下の物資を持ち出す場合は俺にも報告しろよ。あと、わかってると思うが……」

「勿論ですよぉ。武器弾薬や高度なテクノロジーの類は持ち出し禁止ですねぇ? 持ち出すのは医薬品や食料品だけにしておきますぅ」

「わかってるなら良い」


 上で作られた光学兵器やプラズマ兵器などの高度な武器やその弾薬、そして俺が秘匿している高度なテクノロジーの類はこの農場の貴重な手札だからな。いくら金になるとは言っても全く割に合わん。新たに買おうとするとかなり手間だし。

 ライラへの報告は在庫管理の意味で、俺への報告は持ち出しが適切かどうかの意味で相互に必要というわけだな。まぁ、ライラの様子を見る限り心配は無さそうだが。


「そういえば、今はまだ規模が小さいから良いですけどぉ、将来的にはスピカちゃん達の自警団というか、防衛隊の物資管理は別に分けて管理した方が良いですよねぇ?」

「それだけじゃなく、作業場の資材管理もだな。ただ、分けたとしても結局は全ての資材を管理するシステムが要るとは思うが」

「うーん、それもそうかぁ。どうしましょうかねぇ?」

「人力でやっても良いが、まぁ普通に考えれば管理AIでも使うのがスマートだろうな」

「いかにも上の人っぽい考え方ですねぇ……」

「総合的に見れば人件費のほうが高いし、AIに管理させれば汚職とかの心配もないからな」

「この惑星だと人件費の方が安いと思いますけどぉ。汚職はぁ……まぁ、ありえますよねぇ」


 ライラがしみじみと頷きながら難しい顔をする。俺みたいな八割義体の人間だろうがなんだろうが、ヒトである以上欲望から逃れることはできないからな。理性が欲望に負ける可能性そのものはどうしてもついて回る。そうならないように緻密な仕組みを作り上げたとしても、いずれ何処かに綻びが生じるものだ。その仕組みを運用するのが欲望を持つ人間である限りな。


「とはいえ、今すぐどうこうできる問題じゃない。暫くは人力で頑張ってもらうしかないな。ところで、そろそろノーアトゥーンにキャラバンを出す頃合いじゃないか?」


 ノーアトゥーンというのは俺に嫁いできたフィアの故郷で、西の方にあるドワーフの地下集落だ。エネルギーキャパシターなどの高度なテクノロジー部品を製造する技術を有している稀有な取引先でもある。


「あー、そうですねぇ。何を持っていきましょうかぁ?」

「そろそろ昼飯の時間だろ。ちょうど良いからフィアに相談しよう」

「いいですねぇ。今日はプリマちゃんが担当ですよぉ」


 午後の予定を決めつつ、ライラと二人で雑貨店を後にする。今日の昼飯は何かな? この星に降りてきてから飯が美味くて食事の時間が楽しみなんだよな。

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― 新着の感想 ―
アグさん…… やっぱりagricultureからかしらん ↓脳みそと男性器は生身だったはず だからミューちゃんがサワサワした時に反応してるよ
アグリカルチャーのアグかな
頭数が増えるか あれ?生殖能力は残ってるんだっけ?
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