スライム・ストライク
幸明は街道を気ままに歩いて行く
空が徐々に明るくなり始める
異世界への興奮や王都脱出の緊張で眠気はまったく感じていなかった
「一時はどうなるかと思ったけど、なんか平和に過ごせそうだなぁ」
ぷるん
スライムが軽く跳ねる
「よし、お前の名前はスラ太郎だ!」
ぷるん!
元気に跳ねる
「これからよろしく頼むな」
ぷるん!
その時だった
「ブオォォォォ!」
野太い咆哮が聞こえた
「キャァァァァァ!」
女性の叫び声が響く
「スラ太郎、行くぞ!」
スラ太郎を手に載せたまま声の方へと走り出す
「アルト、アルト!
嘘でしょ、返事して!」
女性の冒険者が大量に血を流す男性の冒険者に声をかける
「ブオオオォォォォ!」
豚の顔に2メートル弱の肥満体型、体は薄黒い緑
「オークってやつか?」
幸明が呟く
「誰か、助けて…
アルトが…アルトが…」
女性冒険者が言いながらオーク?を見る
「ブヒヒッ」
(俺でもわかる…あいつ、笑ってやがる!)
ぷよん、ぷよん
スラ太郎がゆっくりと上下に揺れた
「お前もムカつくか?
何とかしたいけど…」
ぷるん、くるくる、ぷるん!
スラ太郎が手のひらで動く
「任せろって言ってんのか?」
ぷるん!
強く跳ねる
「わかった…頼むぞスラ太郎!
これが千葉◯ッテの渡辺を超えるスーパーアンダースローだぁ!」
『ここからは実況、天の声が時間経過を非常にスローな状況にしてお送りします
さてまずは重要な第一球、幸明選手がスライムを手にピッチングフォームに入るようです
右手に掴んだスライム、アレは人差し指と親指をかけてカーブの構えか?いや、人差し指に中指も添えているが…カーブ系の変化球でしょうか?
さて、そのままプレート…はないですが足を揃えてからゆっくりと左足あげる
そして…投球フォームに…
な、何と、大きく左足を前に出したかと思うと腰を落とし右腕は地面スレスレから平行に前へ!
まさかまさかのこの大事な局面でやったことのない人生初のアンダースロー!
しかし、リリースポイントもバッチリ、これはサブマリン、ミスターサブマリンだぁ!
その投球は完璧、さぁ、勝負の行方は⁉︎』
「行けぇ、スラ太郎!」
「ぴきゅー!」
スラ太郎が叫ぶ
「えー…お前、喋れたのかよ」
幸明が呟く