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チート図書館を手に入れた転生女子は、家出王女と冒険者になることにしました  作者: Ryoko


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37、嫌疑

 ガーネット先生に連れていかれたのは……研究室?

 何やら怪しい実験器具みたいのが並んでるし、薬棚やベッドもある。

 白衣を着た人たちが何人もいる。

 でも、病院には見えない。

 ここ、どこ!?


「では、こちらにお座りください」


 わたしが周囲の様子にビクビクしていると、ガーネット先生と話していた白衣の女性がわたしに席を勧めてくる。

 席といっても、面談用のソファとかじゃないよ!

 殺風景な丸椅子と、その前に並ぶ怪しい計測機器?


「えと、怖がらなくても大丈夫よぉ。別に痛くないから、ちょっと両手をここに乗せてじっとしてくれるかなぁ?」


 警戒するわたしの様子に何を思ったのか、白衣の女性が優しく話しかけてくる。


(また子供扱いか!?)


 同じような対応を、昔、病院でもされたことがある。


「ここでよろしいですか?」


 わたしは子供扱いされないよう顔を引き締めると、言われた通りに計測機器? の上に両手を置いた。


「あっ、ええ、それで結構です。そのまま手を離さないで下さい」


 わたしの態度に何かを感じ取ったのか、白衣の女性の雰囲気が元に戻る。

 テキパキとした態度で目の前の計測機器? を操作すると、次々にわたしの周りに魔法陣が浮かび上がる。


「手は離さないで!」


 急に目の前に現れた魔法陣に驚いて立ち上がりそうなところを、わたしはじっと堪える。

 こういうことは、びっくりするから事前に説明して欲しい……いや、子供扱いするなってオーラを出してたのはわたしだけど……。

 触れている装置からは微弱な魔力が流れ込んでくるし、目の前では複数の魔法陣が出たり消えたりしている。

 正直、ちょっと怖いし、落ち着かない。

 そうこうしているうちにやっと検査? も終わり、応接室のような部屋に連れて行かれたわたしは、ここでしばらく待つようにと言われた。


 何か不味いことしたかなぁ……?

 もしかして、転生者ってバレた!?

 でも、転生者かどうかって、検査とかでわかるのかなぁ?

 それでわかるなら、わざわざ冒険者講習を通してこっそり転生者の見極めなんてせずに、受講手続きの時に全員検査しちゃえばいいと思うんだけど……?

 そうこうしているうちに応接室のドアが開いて、ガーネット先生が入ってくる。

 席を立とうとするわたしを視線で止めると、ガーネット先生は応接テーブルを挟んでわたしの対面に腰を下ろした。

 ……何やら、表情が怖い。


「さて、リコ()()。あなたには色々と訊きたいことがあるんだけど、まず一つだけ確認させて。

 あなた、レイちゃんとはどういう関係?」


「……えっ? えっ? あの、それってどういう??」


 思わぬ質問にパニックになるわたし。

 あまりにも質問が想定外だったというか……。

 だって、きっと「お前は転生者か?」とか、「お前は何者だ!?」みたいな質問がくると思っていたから……。

 まさか、レイとわたしの関係を訊かれるなんて思ってなかったし!?

 いや、その、改めて訊かれても……ただの仲の良い友達ですとしか答えられないけど……。

 お風呂には一緒に入ってるし、全裸で抱きついたこともあるけど! でも、お風呂だし、友達だし、普通だし!

 確かにレイはすごくカッコいいなとは思ってるけど、別に深い意味はないし……。

 つまり、わたしとレイは親友ってことで……あっ、でも、知り合ってからあまり時間も経ってないし、親友なんて言われたらレイは迷惑かも……。


「ああ、いいわ。聞きたいことは大体確認できたから。

 あなたがレイちゃんの敵でないのなら、それでいいの。

 2人がどれくらい()()()なのかは、個人的な問題だからこちらも訊かないわ」


「いや、別にレイとはただの友達で、別に深い仲ってわけじゃあ……」


「ええ、わかっているわ。リコちゃんとレイちゃんはとっても深い仲の()()()ってことよね」


「えぇと……はい」


 なんか、微妙に揶揄(からか)われている気がする。

 別に揶揄(からか)われるようなことは何もないんだけど……。

 だって、自分から“親友”とか、“仲の良い友達”とか言うのって、なんか照れるというか……。

 昔からコミュ障気味のわたしは、相手に自分の気持ちを伝えるって行為がすごく苦手なのだ。


 そうして、しばらくの間、理由もなく照れたり動揺したりするわたしを楽しそうに眺めていたガーネット先生だけど……。


「じゃあ、改めてリコちゃんの検査結果について、お話を聞かせてもらいましょうか」


 場の空気を変えるように探るような視線を向けると、


「リコちゃん、あなた、何者?」


 今度こそ、わたしが想定していた通りの質問を投げかけてきた。


「その、それってどういう意味ですか?」


 質問の意図がわからないと、訊き返すわたし。

 相手の意図がわからないのに勝手にしゃべって、自ら墓穴を掘るようなことはしないよ。


「……はぁ〜」


 一瞬こちらを見つめて考え込んだガーネット先生は、わかりやすく溜息をつくと、手にしていた紙をわたしに見せてくれた。


 魔力量:0/0

 身体能力値:43/45

 身体状態異常:無し

 魔力状態異常:無し

 呪的状態異常:無し

 健康状態:正常


 え〜と、これって健康診断の結果とかかな?

 本当にわたしの魔力ってゼロなんだねぇ。

 身体能力値っていうのが幾つくらいが普通かわからないけど、間違いなく低い部類だろう。

 でも、特に病気とかはないみたいだから、まずは一安心ってことかなぁ……なんて考えていると……。


「それで、この結果を踏まえた上で訊きたいのだけど……。

 どうしてリコちゃんは魔法剣の魔法陣なんか知っているのかしら?」


「えっ!?」


 どうやら、昨日の実技訓練の時にわたしが使おうとした、軽量化の魔法陣を見られていたらしい。

 ちなみに、魔法陣自体は大気中の魔素に働きかけて描くものだから、魔力は全く必要ないのだ。

 ただ、自分の魔力を流さないと発動はしないから、わたしにとっては完全なお絵描きスキルだけどね……。


「それから、これはガイが言ってたんだけど、リコちゃんて武術の心得とかあるの?

 鍛えてないのは見ればわかるから、ガイも初めは気が付かなかったみたいなんだけど……。

 ガイ曰く、リコちゃんの動きって、まるで歳取って体力の衰えた武術の達人みたいだそうよ」


 ガーネット先生は初め、わたしのことをレイを狙う暗殺者ではないかと疑ったそうだ。

 なぜレイが暗殺者に狙われなければならないかについてはぼかされたけど、元々良い家の出身だから、そんな可能性もあるかと思ったとのこと。

 これは、ガーネット先生もレイの正体を知ってそうだねぇ……。

 そういえば、ガイ先生とガーネット先生はAランク冒険者で、今回は臨時でわたしたちのクラスを受け持つことになったって言ってたよね。

 もしかして、この国の王女であるレイの護衛目的で、臨時講師になったとか……?

 うん、その可能性は高い気がする。

 それで、たまたまレイと知り合って仲良くしている、身元不明で高い戦闘技術を持っている……かもしれないわたしの調査に踏み切ったと……。

 でも、詳しく調べてみたら、わたしの戦闘力は子供並みだし、レイとの関係を聞かれて照れて慌てふためく様子から白と判定したと、どうもそういうことらしい。

 別に照れてないし!? 急に想定外の質問とかされて慌てただけだし!?


「最初は能力を隠してるのかと思ったんだけど、それにしてはとんでもない解体技術は披露するし、うっかり魔法陣を展開しちゃうのも間抜け過ぎるしね。

 ガイが言うには、体術にしても、隠しているというよりは、何かの事情で使えなくなってる感じだって言うし……。

 それで、もしかして魔術か呪術で能力(ちから)を封じられているのかもって疑ってみたのよ。

 でも、この検査結果を見る限り、それもなさそうなのよね。

 で、改めて聞くけど……リコちゃん、何者なの?」


「えっと、その、わたしは研究者でして、魔法陣も体術も全部本で覚えました!」


「ん〜、嘘はついていないみたいだけど……。

 武術なんて本を読んで覚えられるようなものでもないでしょう?

 確かに魔法陣は本で覚えられるでしょうけど、普通は自分には魔法が使えないと分かっていて、苦労して覚えたりはしないわ。

 魔法陣を一つ覚えるだけでどれほど大変だと思っているの?

 いえ、もちろんリコちゃんは知ってるのよね。

 だったら、私が納得できない理由も想像できると思うのだけど」


「それは……」


 わたしは昨日図書館から帰ってから考えた設定をガーネット先生に話していった。

 わたしの家には魔術や武術について詳しく書かれた本があり、昔から魔法に憧れていたわたしは、いつか魔法を使えるようになりたいと、必死に本の魔法陣を暗記していった。

 武術については、元々体の弱かったわたしに本格的な鍛錬は無理だったけど、少しでも体に負担がかからないようにと、効率の良い身体の使い方を本で学んで、日常生活に取り入れるようにしてきた。

 魔力を増やすためには魔法は使わないほうがいいと聞いたので、今までずっと我慢してきたが、昨日初めて魔法を実際に使おうとして、実は自分には魔力が無いと気がついてひどくショックを受けた。

 と、そんな話を聞かされたガーネット先生は、


「……まぁ、いいわ。多少引っかかるところはあるけど、概ね嘘は言っていないように感じるし、とりあえずは信じましょう。

 明確な危険が無い以上、冒険者の技能や知識、経歴を追求するのはマナー違反ですからね」


 この世界の上級魔術師は、魔素を通して伝わる感覚から、相手の感情を大まかに感じ取ることができる。

 だから、明らかな嘘とか、悪意とか、そういったものは割とすぐにバレてしまうみたい。

 今回、その点も踏まえてわたしは自分の設定を考えた。

 家(図書館)の本で魔法や武術を覚えたのも本当。

 魔法は使わないほうがいいと(授業で)聞いたのも本当。

 昨日(この世界で)初めて魔法を使おうとして、魔力が無くてショックを受けたのも本当。


 そんなわけで、ガーネット先生もわたしの言い訳に納得してくれた様子。


「それにしても、体力が子供並みなのはともかく、魔力が全く無い人なんて初めて見たわ。

 聞いたこともないし……。

 本当に何かの呪いとか病気とかではないのよねぇ?」


「えっと、多分。わたしも昨日まで自分に魔力が無いなんて知らなかったので……」


「そうよねぇ……。ちなみに、リコちゃんはいくつくらい魔法陣を覚えたのかしら?」


「そのぉ……大体30個以上」


「30!!」


「はい、その、わたしの家(図書館)は知識を集めるのが趣味みたいな家で、わたしも興味のあることについては(本が入荷するので)いくらでも覚えられるので……」


「それにしても……とんでもない数ね。わたしでも精々10個程度だっていうのに……。

 それだけの数の魔法陣を覚えられるなんて、とんでもない才能よ。

 これで魔力がゼロなんて、神様も酷いことをするわね」


(まったく、その通りです!)


 そんな感じでわたしへの疑いも晴れ、最後はガーネット先生に励まされつつ、なんとか今日の実習も無事終えることができた。


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