97話 トレントと踊りましょ
ラララー ラララー ラーララララララー
王宮でダンスの練習をしていた時の音楽を口ずさみながら、木の根や木の枝での攻撃を踊るように避けて避けて避け続ける。
試しに相手の枝を剣で切ってみたのだが、自由に動かしている根や枝は切ることができ、ついでに顔に見える胴の部分も突き刺せば剣が入っていくことが分かった。
そして、一度でも胴に剣が入れば死ぬらしく、形を保っていられずに地面に倒れてしまうようだ。
ではなぜ胴を集中的に狙わずに走り回っているのかって?
突き刺している間は隙が大きいからに決まっているでしょ?それでなくても絡みつこうとしてくる根っこに何回腕を持っていかれそうになったことか…
私は移動するついでにマリンの元へと駆け寄る。
「大丈夫ですか。見たところ手を焼いているみたいですけど」
「よくそんなに走っていられるわね。それと、見ての通りよ!こいつ等、魔法に耐性があるみたいなのよ。なんなら焼き払ってくれないかしら」
「そんな、焼くだなんて…普通の木に燃え移ったらどうするんですか?」
私は襲ってくる木の枝を双剣で切り落としながら会話を続ける。
「魔法が通じないならマリンは戦わないほうがいいかもしれませんね」
「それじゃあ何もしないで突っ立ってろって言うの?あいつらが地面を叩く度にこの石壁が崩れそうになるのよ?」
「なら、石壁が崩れないように水魔法で防壁を作ったらどうです。この木々は私が対処するので」
「はぁ。いいわよそれで」
私は先ほどから枝を飛ばしてくる鬱陶しい一本の木に駆け寄ってとどめを刺す。その間にもマリンは巨大な水壁を作って、壁に攻撃が当たらないようにしてくれている。
戦っていながら気づいたことだが、どうやらこの木々は私を殺すことを目的としていないようなのだ。先ほどから飛んでくる枝先は尖っていないし、絡みつこうとする根っこは絞め殺す程の力を出していない。
もしかしたら生け捕りにして私から栄養を吸い取る気なのかもしれない。もちろんこのピチピチ美少女の栄養分なんぞ一滴たりともあげようなんて思わない。
もしかしたら私の汗とかも栄養と思われてたり…?考えただけで震えが来る。
さて、すでに数十本もの木を切ったわけだがそれでもまだ動く木が残っている。鬱蒼として暗かった森は日差しが入り込む林ぐらいにはなっているがまだまだ伐採が必要なようだ。
だが、彼らも考えがないわけではない。あまりお互いに離れすぎていると切られるというのを学習したのか、私に気づかれないように擦り寄っている。
私はまたダンス用の音楽を歌いながら双剣を華麗に振り回す。
双剣の練習時は腕が止まることが多かったが、曲に合わせて踊るようにしていればそれが防げるというのが分かった。問題があるとすれば曲に合わせているので、対人の場合は有効じゃないということか。
だけど、自分を守る動きに走りながら攻撃を繰り出す等々、とてもいい練習になっている。
不満点があるとすれば魔法が使えないことか。実際、剣を媒体にして魔法を放ってもよいのだが、それをするとすぐに剣の刃がが使い物にならなくなるので避けているのだ。
例えば剣と一緒に杖を握る、なんてことも考えたがとてつもなく持ち辛い。杖か剣がすっぽ抜けそうになるし、振る力も弱まってしまう。
「ああー!風に乗って素早く動き回りたいー!」
私は文句を動く木々にぶつけ、彼らを切り刻んで行く。
森が林になり、それから草原になる頃には私は疲れ果て地面に仰向けになっていたのだった。




