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第三王女エイリスの冒険譚  作者: 採掘者AL
西海岸の港町
91/295

91話 嵐の日に来るもの

 冒険者全員が町に散開して嵐の脅威に対抗している。

 降りつける雨は魚の叩きを作るかの如く、吹き付ける風は牛をも持ち上げるかの如く荒れた天気の中、私たちは港の防衛に手を貸していた。


「まったく何なのよこの風!まともに立ってられないわよ!」

「本当ですよ!この量の雨じゃ動きづらいですよ!」


 お互いに別々な理由の文句を垂れ流す少女が二人。杖を片手にこれから来るであろう魔獣を警戒していた。


 暫くして風が一層強くなった時、少し遠くのほうにあのウミヘビが舞っているのが見えた。


「見えました!かなりの数のウミヘビが空を飛んでます!」

「さあ、みんな!死なない程度に奮闘するのよ!」

「おおー!」


 キャロラインさんの掛け声で全員が奮起する。だが、この風では足を一歩前に出すだけでも辛い状況である。


「だれか!私のことを守っていただけませんか!風魔法に集中したいんです!」

「こんな時に守れってか?いいぜ!俺たちが盾になってやらあ!」

「あら、じゃあ私も便乗して守ってもらおうかしら。それなら楽に雨を制御できそうだし」


 私とマリンが魔法に集中して風と雨を制御しようとする。

 この訳の分からない方向に吹き荒ぶ風を鎮めるのはかなり骨の折れる作業だ。


「おお!風が緩くなったぞ!この嬢ちゃんすげえぞ!」


 徐々に風の制御範囲を広くしていくが、だんだんと頭が痛くなってきた。範囲を広めれば広めるほど荒れた風を予測するのが難しくなってくるからだ。

 そんな中、目の前には10匹から20匹ぐらいのウミヘビが港に上陸していた。

 強風と大雨で動きづらそうにしていた冒険者達は私たちの魔法のお陰で軽々とウミヘビを倒していく。時折水魔法がこちらに飛んでくるが、マリンが全て無効化してくれるのでまだ被害は出ていない。


 どごおぉん どごおぉん


 急に建物の壁が破壊される音が響いてくる。魔法に集中しているせいで何が飛んで来たのかは確認できないが、きっと新手だろう。


「ツキサシウオよ!飛び跳ね攻撃に注意して!」


 ざばあああぁん


「な!ビッグスクイッドまで来たわよ!総員死なないようにして!」

「そ、そんなに強いんですか!ぐきゃあ!」」


 突然目の前で盾になってくれていた大きな男達が私に向かって吹き飛ばされて、私も一緒に道に倒れこむ。

 吹き飛ばされた衝撃で魔法への集中が途切れ、強風が周囲に吹き込み始める。雨もついでに降り注ぎ始める…ということは…


「マリン!大丈夫ですか!」

「いったたた。大丈夫よ。でもあれはなんなの?あれってアリなの?」


 空を見上げると宙を舞っているウミヘビとツキサシウオが見えた。ウミヘビに関しては舞いながら水魔法を町に向かって放っている。

 それに対して冒険者は急な強風と雨で動けなくなってる。これでは町がどんどん壊されてしまう。

 私はマリンの方を見て声をかけようとしたが、マリンの方が先に拒否の意思を示した。


「いやよ。合体はしないわよ!こんな時に空を飛ぶなんて自殺行為は私はしたくないわ」

「どうしてわかるんですか!顔を見ずに不意を突いて合体すればよかったかな…」

「んなこと言ってないで、早くあいつらを叩き落すわよ!」


 マリンに叱られながらも私は杖を片手に空へと飛びあがる。今回はマリンの加護無しだが、下からの援護射撃に期待しよう。

 荒れた風に乗るのはかなり大変だが、出来ない程ではない。私は宙を舞うウミヘビに向かって突撃を始める。


 こちらの存在に気が付いた奴らは私に向かって水魔法を放とうとしているが、今回の私は怯むことなく突っ込んでいく。


「さあ喰らいなさい!雷よ(サンダー)穿て(ボルト)!」


 相手の水の波動をすれすれとところで躱しながら開いている口に雷魔法を打ち込んだ。雷の効果はすぐに表れてぐったりと地面のほうに落ちていく。

 地面に落ちていくウミヘビを見届けていると横から長い角をもった細長いツキサシウオが私に向かって飛び込んでくる。


「うおっと!やっぱり動き続けていないとダメね。雷の槍よ(サンダー)痺れさせろ(スピアー)!」


 数匹のツキサシウオを痺れさせて地上に落とす。私がとどめを刺さなくても地上にさえ落とせば他の冒険者が対処してくれるのでそれに頼っているのだ。

 だが…なにかを忘れている気がする。


「アリス!避けて!」


 マリンの声が聞こえたのでさっと体を下に移動させると、頭上を大きな白い触手が通り過ぎる。

 そうだ、ビッグスクイッドのことを忘れて…


「うぶぶぶぶぶ!」


 振り返って瞬間、顔面に黒い何かを浴びせられる。触手攻撃だけだと思っていたから油断してしまった。いけないいけない。


 顔についた黒い何かを拭い去って目を開けると、そこには3体のビッグスクイッドが私を睨んでいたのだった。

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