9話 暗くなるみんなの顔
かなり短め。
詳しい描写は無し。
ダマサレヤスソウを見つけてからもう2年が経つ。最初の内は引き抜いていたのだが、翌日には別のところに植わっていたりするので引き抜くことは諦めた。
どちらにしろダマサレヤスソウがあることを認識しているので、私は騙されることはないから問題がないはずである。
もちろんお姉様たちにも伝えようとしたのだが、最近は忙しくしているし、機嫌が悪く怒っているので未だに伝えられていない。
それに今日は魔獣討伐に向かっていた騎士団の帰還報告会があるので、着替えを済ませて玉座の間に行かなくてはならない。
侍女にお願いして着替えを手伝ってもらうが、どうにもこの侍女は心ここにあらずな状態である。いや、この侍女に限らずこの王宮内にいる全員がぼーっとしているのだ。
さっさと着替えを済ませて玉座の間に向かう。途中でアイリスの部屋によって一緒に連れていく。ついこの前まで私の膝の上に乗っていたのに、今では一人で剣の稽古をするまでになっている。成長とは早いものだと感じながら玉座の間への扉を開けて中へ入っていく。
目の前にエリスお姉様が不機嫌な顔で玉座に座っているのが見える。その横にはセリスお姉様が同じようにムスッとした顔で立っている。アイリスはそんな彼女たちの顔を見たからなのか、私の後ろに隠れるように立っている。
あの近寄りがたい雰囲気を出しているお姉様たちの横には立たず、部屋の壁に沿って立ちながら、騎士団の到着を待つことにした。
数分後。騎士団長であるハリスを先頭に騎士団の皆が帰ってきた。ほとんどが見覚えのある顔だが、この場にいない団員もいる。無事でいるといいのだが…
ハリスは前に出ると跪き報告をし始めた。
「サンライト王国騎士団団長、ハリス。ただいま深緑の森魔獣討伐より帰還いたしました」
「そう、それで森では何が暴れていたのかしら」
エリスお姉様がそっけなく質問していく。
「巨大なイノシシ型の魔獣でございました。体長は12メートル程、魔法も使用し団員3名が死亡しました」
「なっ!3人も亡くなったの!一体どうやって…」
「一人はイノシシが空間魔法で移動した先におり圧死。二人は闇の魔法と思われる攻撃をくらい錯乱、その後亡くなりました。」
アイリスが私の服をぎゅっと掴む。私ですら顔をそむけたくなるような話だ、やはり7歳のアイリスには辛い話なはずである。
「分かったわ。亡くなった彼らのために葬儀を行わないとだね」
「エリス様、加えてなのですがもう一人、水の補給係が湖にて亡くなり…」
「な!もう一人も亡くなったの!これじゃあ南の村に…」
「エリス!落ち着いて。今はその話をしては駄目ですわよ」
頭を抱え込むエリスお姉様に対して落ち着くよう促すセリスお姉様。しかし、南の村で何かあったのだろうか。
「それで… 一体誰に殺されたのよ」
「それが、突如として湖に現れた青い髪の少女が襲ってきたとのことで…」
「少女が…?何のために?」
「そこまでは分かっておりません。補給団は湖に近づいた途端、攻撃されたとの報告をしておりますので…」
青い髪の少女が一人で騎士団を襲う?そんなことがあるのだろうか。外の世界を見たことが無い私には想像もつかない光景である。
程なくして報告会が終わる。だが、皆の顔は決していい顔ではなかった、もちろん私も含めだ。
アイリスも辛かったのか泣きつくように私の腕にしがみついて来るので、一旦玉座の間を後にして自室に戻っていく。
戻る際に侍女たちの様子を確認するが、どうにもおかしい。目に光が宿っていないというか、何も感じていないような動きをしているのである。
「アイリス。何かあったら必ず助けを呼ぶのよ。」
「はい。エイリスお姉さま」
なんとなくだが何かが起こりそうな予感がする。確証はないが、確実に何かがおかしくなっているのは肌で感じられるのだ。