89話 杖の新調
まるで暖炉の中にいるようなぐらいに暖かくなったお財布を空間に携え、私たちはお洋服屋さんに来ていた。
あれから数えきれないぐらいの金貨を報酬として受け取り、雷ウナギの蒲焼きをたらふく食べて満足した後なので、お腹が少し大きくなっていないかが心配であるが大丈夫であろう。
早速マリンはお店の中に入って色々と見て回っている。今回は私も彼女に付いていきながら洋服を選ぶとする。
「アリス見て!ここの店の服、軽いわよ!手触りもとてもサラサラだし」
「わあ!これ着たらとっても可愛くなれそうですね!」
ここの土地柄なのかそれとも海が近いからなのか、平原の街の服よりも薄く軽いのが多い傾向にあるようだ。実際、今着ている服だと海風で湿った際に重くて嫌らしくなっていたので、新しいのを数着買ってもいいのかもしれない。
「どうしようかな。やっぱり私は緑色がいいかな」
「あ、これ。このフリフリが付いたこれならいいんじゃない?」
「えー?フリフリですか…?似合うかな…」
上からすぽっと着れるワンピースタイプだが、生地が薄いのと肩から腕にかけて部分に生地がない。そのかわり向こうが透けて見えるようなフリフリしたベールのようなもので服が覆われていて、見た目には涼しげな印象を受ける。似合うかは別にして。
私はマリンに押されるがまま試着室に詰め込まれ、フリフリの服を試着させられる。鏡を見てみるとそこには別人が立っていた…いや私か。
少々恥ずかしいがカーテンを開けてマリンに尋ねてみることにする。
「その…似合ってるかな」
「すごい似合ってるじゃない!これにあなたお得意の風魔法なんか纏ったら、ギルド内の男どもは釘付けになるわよ」
「ちょっと、やめてくださいよ。あんまりそんな目で注目されたくないんですから」
結局、私は淡い緑色と明るい黄色のワンピース二着とベージュ色の羽織物を一着。マリンは薄い水色と深い青色の服をそれぞれ購入した。
因みに下着も買った。特に上のが小さく感じたので一回り大きめのを買った。…決して太った訳ではない。
「そうだ、マリン。ここ寄っていい?」
「武器屋?ああ、新しい剣を買うのね」
新しい服を買ったついでに武器屋にも寄っておく。この前習った双剣と雷魔法を受けた際に少し焼けてしまった杖の代わりが必要なのだ。
「すいませーん。双剣とショートソード、それと木の杖はありますか?」
「剣に杖かい?杖の長さは?」
「これぐらいの短めでお願いします」
「それなら店の奥の棚にあるぞ。剣はそことそこの棚を見てくれ」
「ありがとうございます」
ショートソードは前に選んだことがあるのですぐに決まる。問題なのは双剣の方だ。
リクさんは刃が反っているのは防御向きだとかなんとか言っていたが、攻撃主体にするならば普通のを買うべきなのだろうか。
見て回るが色々なサイズの組み合わせがあることに気が付く。短いのと長い組、同じ大きさの組に両方とも反っている組。
どれも良さそうに見えてしまうのは私に見る目がないからだろうか。
「何迷ってるのよ」
「いや、これから私はどの型で戦うべきなのかなって考えていて…」
「型?なにか関係あるの?」
「今までは私自身を守る型にマリンを守ることに徹していたんだけど、マリンってしっかり守る必要がないし私も動けるようになったから型を変えたほうがいいのかなって」
そう話すとマリンは少し考え込む様子を見せる。やはり一緒に旅をする仲間として連携するためには彼女の意見も取り入れておきたい。
「そうね…どちらかといえばあなたが前衛、私が後衛になるのことが多くなるだろうから、攻撃重視でもいいんじゃないの?前からあなた動き辛そうにしてたし…」
「そうですか。それならこの中ぐらいの大きさの組を買おうかな。これなら攻撃もできるし、癖のない使い方が出来そうかな」
最後に杖だが、棚に珍しい杖が置いてあることに気が付いた。木で出来ているのは一緒だが、柄のところに赤いキラキラしたものが埋め込まれているのだ。
説明文には”より強力な魔法を放てる宝石入り。一点限り。価格:白金貨100枚”と書かれて…
「白金貨100枚?!」
柄にもなく叫んでしまった。いけないいけない。
今の私には…普通の人には手が届かない商品は置いておいて。私は超が付く程の普通な杖を買うことにする。
だが一体誰があんな高級品を買うのだろうか。それにどうしてあんな値段なのだろうか。
謎は深まるが、私は今日の目的を達成したのでよしとする。
この剣と杖を振るう日がとても楽しみだ。




