87話 雷ウナギ狩り
目が覚めると真っ暗な空間が目に入る。というか自分が目を開けているのかいないのか分からないぐらい真っ暗だ。
ゆっくりと体を起こすが、未だに身体が痺れていて激痛が走る。
「いったたたた」
「お、起きたのね!はあ、よかったぁ」
安堵するかのような声と疲れているような息が自分にかかる。多分この暗い中ずっと私のことを見てくれていたのだろう。
「ほんとうにすいません…あのあと私ってどうなってたんです?」
「そうね…まずは心臓の動きが変則的だったのと、そのあと心臓が止まってから呼吸も止まってたってところかしら…」
え?それってほとんど…というか死んでいる状態じゃないか。今こうやって生きているほうが不思議ってことなのか。
それよりも何故か恥ずかしそうに話しているマリンの事の方が私的には気になる。
「それで…その…どうして私は生きているのでしょうか…」
「そ、それは!私が貴女の血を魔法で流していたからよ!そ、それと…」
「それと?」
「それと…」
「と?」
「その…ああ!もう!言うわ!あなたのファーストキスを奪ったからよ!」
…え?
さっと自分の唇に手を当てる。当てたところで何も変わらないのだが、当てたくなるのもなのだ。
「そ、そういう意味じゃないわよ!息していなかったから私の息を送り込むためにしただけよ!じゃないと死ぬかもしれなかったんだし…」
今頃彼女の顔は真っ赤になっているに違いない。見えはしないが一緒に過ごしている身だ、それぐらいわかるようになって来ているのだ。
「それでも…知らない男の人よりも、あなたで良かったって思いますよ」
「もう!何を言ってるのよ!!!」
マリンが半分怒っている状態の中、私は傍に置いてあった杖を掴んで対麻痺ポーションを取り出して飲む。痺れていた身体が正常に動くようなる。やはりポーションはいくつ作っていても足りないものだとつくづく思う。
「さあマリン!あの忌々しい雷ウナギをやっつけに行きますよ!」
「ん!!!もう!今度は作戦があるんでしょうね!」
「もちろんです。マリンが水を天井まで上げた後、私が土魔法で息の根を止めればいいだけの話ですよ」
そう、あいつ等は水の中だと移動速度が早いだけなら水を無くしてあげればいいだけの話なのだ。
それに素早く動けないのなら私の土魔法でガンガン息の根を止めることができる。
私たちはもう恐れることなく水路を突き進む。もう警戒しながら進むことはしなくてよくなったからだ。
「いたわよ!水よ。上がりなさい!」
「ふっふっふ。私を一度殺しかけたことを後悔しなさい!土よ!突き刺せ!」
水を取り上げられた雷ウナギ達は呆気に取られていて反応速度が遅くなっていた。そこに私の怨念が込められたような土魔法が彼らの頭を貫いていく。
快感。
死にかけた思いをした憂さ晴らしには丁度良い。
そんな感情を心に感じながら狩りを続けていく。それにしても、いつから私はこんな感情を持つようになったのだろうか。前はもっと…どうだっただろうか…
次々と倒されていく雷ウナギをこの町で買っておいた箱の中に放り込んでいく。
もはや作業の様に行われていくこの行為に、雷ウナギ達はなすすべなく恐怖で震えながら狩られていったのであった。
またアリスの心に傷が増えた。




